英語で言いたい日本語の慣用表現

 


 

日本語の慣用表現を英語で活用しよう

外国人と一緒に仕事し、英語で会議を行うことが当たり前の時代になり、現在英語はビジネスパーソンとしてなくてはならないものです。仕事では、自分の言いたいことを簡潔に伝えることができて、どの地域の人にも通用するようなわかりやすい英語でなければなりません。例えば、日本では優れた行いを見習うことを「爪の垢を煎じて飲む」と言います。これを英語に直訳して海外の人に伝えてもほとんど意味が伝わらないでしょう。英語ではどのように表現するのが適切なのかを学ぶことで、伝わりやすい英語になります。

本書では、訳しにくい日本語独特の言い回しをする慣用句を的確にわかりやすく伝えることができるようになるために、慣用表現を380以上集めています。日常会話で便利に効果的に使える慣用表現を覚えておけば、とっさに言いたいことを簡潔にわかりやすく伝えることのできる人になるでしょう。それだけではなく、本書には日本語の慣用句を英語にするときの英訳プロセスも書かれているのでわかりやすい英語にするコツとテクニックも身につけることができます。

柴田 真一 (著), 鶴田 知佳子 (著)
アルク (2020/6/29)、出典:出版社HP

はじめに

・ビジネスコミュニケーションの立場から
外国人と仕事で机を並べるのが日常の光景となり、海外とのテレカンファレンスが当たり前の時代となりました。英語はPCと同様にビジネスパーソンとして必須のツールとなっています。では、仕事に求められる英語のエッセンスは何でしょうか。

まず、過不足なく分かりやすい英語で伝えることです。聞き手は話し手が何を言いたいかに集中します。文法的には多少間違っていたとしても気にしないし、そもそも気付かないことすらあります。きれいな英語にこだわるのではなく、自分の考えや思いを的確に伝えることを心掛けるべきです。

次に、世界標準の分かりやすい英語を使うことです。コロナウイルス危機下のリーダーとして支持を集めた米クオモNY州知事は、とても分かりやすい英語を使ってゆっくりとした口調で語りかけます。非英語圏の英語話者が大半を占める中、このような英語こそがグローバル時代にふさわしいのではないでしょうか。

英語を母語としないわれわれが話す場合も同じです。簡単な言葉を使ったからといってバカにされることはなく、上級レベルの表現を使ったからといってそれだけで尊敬されることもありません。相手から一目置かれるかどうかは、あくまで発言の中身(whattosay)、伝え方次第(howtosayit)なのです。

本書で学んでいただきたいのは、訳しにくい日本語独特の表現を的確に、わかりやすい英語にするコツです。取り上げた表現には、ポジティブなものばかりでなく、ネガティブなものも含まれています。ビジネス現場も所詮は人の集まりですから、ときには皮肉を言ったり相手を批判したりすることもあります。仕事上のやりとりだけでなく、相手に共感し、自分の気持ちを言葉にすることで、相手との信頼関係は深まっていきます。

日本語を英語に訳すプロセスの面白さを知っていただき、外国人との対話に役立てていただけたら嬉しく思います。

柴田真一

・通訳者の視点から
かれこれ四半世紀以上、英語から日本語、日本語から英語へ通訳をする仕事に携わっています。常に英語の表現ではどうするのか、日本語ではどういうのだろうか、などと考えています。すると、その癖がついているのでしょうか、仕事を離れて一人の生活者として街中を見るときに、「英語で話す自分と日本語を話す自分では視線が違う」と感じます。

この感覚は他の通訳者も共有しているもののようです。街中の同じ景色を見てもそれをどう表現するのか、英語と日本語での表現の仕方の違いにいつも思いをはせています。この感覚は、アメリカ人の詩人のアーサー・ビナードさんが、英語で表現するときには「英語メガネをかける」、日本語での創作のときには「日本語メガネをかける」と言っている感覚に通じるものがあると思います。

この本で気付いていただきたいことが三つあります。まず、日本語と英語では、伝えたい意味を何かに例えるときに、例えに使われるものが違うということ。例えば「危険を冒す」は英語ではgooutonalimb(木の枝の先にいく)という言い方で表しますが、日本語でこのまま言っても、意味はなんとなく分かってもすぐに理解してはもらえないでしょう。

二つ目は、日本語の表現で言葉遊びがあるときにどうするのかということ。「亀の甲より年の功」はWisdomcomeswithage.と英語で言えますが、「こう」という音合わせをしているのはそのまま英語で言えるわけではありません。三つ目の点ですが、日本語には英語から借用してさらにそれを省略している表現が多くあります。「スルーする」「コスパ」「ディスる」など、元の英語の一部を使っている表現でも、日本語として使われていく過程で違う意味を持つようになったことを考慮する必要があります。

これはどう言えば伝わるのか、と考えるのは楽しい作業ですし、ひいては元の日本語の意味を考え直し、言葉がどう変化してきたのかを考えるきっかけにもなります。辞書とは一味違った、文化背景を知ることのできる読み物としても本書を楽しんでいただければ幸いです。

鶴田知佳子

柴田 真一 (著), 鶴田 知佳子 (著)
アルク (2020/6/29)、出典:出版社HP

目次

はじめに
本書の特徴
構成と使い方
音声ダウンロードのご案内
コラム

あ)
ああ言えばこう言う
阿吽の呼吸
青息吐息
揚げ足を取る
足並みをそろえる
足元をすくわれる
足を向けて寝られない
頭打ち
頭ごなしに
当たらずといえども遠からず
あっさり
危ない橋を渡る
あめとむち
雨降って地固まる
歩み寄る
荒療治
あわよくば案ずるより産むがやすし

いい感じ
いいこと尽くめいいとこ取り
胃が痛い
いじる
以心伝心
イタい
イチ押し
一抹の不安
一蓮托生
一触即発
一体感を持つ
一匹狼
一歩間違えば
一本取る
イマイチ
癒やし(系)
いわく付き
慇懃無礼

浮く
受け流す
うざい
後ろ髪を引かれる
打たれ強い
打って出る
馬の耳に念仏
海千山千
紆余曲折
うれしい悲鳴
うんちくを傾ける
雲泥の差がある

悦に入る
絵に描いた餅
縁起でもない
援護射擊
炎上

おいしい
王手をかける
大一番
大コケ
大風呂敷を広げる
お蔵入り
おこぼれにあずかる
押しも押されもせぬ
お互い様
お調子者
落とし所
同じ釜の飯を食う
鬼に金棒
オブラートに包む
オフレコ
汚名返上
思うつぼ
お役御免
オワコン
恩知らず
温度差
恩を売る

か)
顔色をうかがう
顔が利く
顔が広い
顔に泥を塗る
顔パス
顔を立てる
かけがえのない
牙城を崩す
かすりもしない
ガタガタ
肩透かしを食らう
肩に力が入る
肩の力を抜く
ガチガチに
勝って兜の緒を締めよ
かぶる
果報は寝て待て
鎌をかける
神对应
亀の甲より年の功
体が資本
空振り
空回り
仮押さえ
ガンガン
カンカン
危機一髪
机上の空論
疑心暗鬼

期待外れ
狐につままれる
希望の光
肝に銘じる
九死に一生を得る
牛耳る
旧態依然
急直下
キュンキュンする
玉石混交
キラキラ(女子)
ギリギリ
琴線に触れる

グイグイ
空気を読む
くぎを刺す
苦戦を強いられる
口裏を合わせる
グッとくる
くどい
首を縦に振る
くよくよ
黒歴史

芸は身を助ける
ケチをつける
結果オーライ
結果を出す
ゲッソリ
結論先にありき
煙に巻く
喧々某々
けんもほろろ

濃い
業を煮やす
孤軍奮圖
虎穴に入らずんば虎子を得ず
心が折れる
虎視眈々
五十歩百歩
コスパ
コツコツと
固定観念を捨てる
後手に回る
言葉が独り歩きする
言葉尻を捉える
言葉を濁す
コロコロ(変わる)

さ)
采配を振る
先取りする
サクサク
サクッと
刺さる
さすが
ざっと
さばを読む
サラッと
サンドバッグ
三度目の正直

時間の問題
時期尚早
仕切り直す
仕切る
(座標)軸がぶれない
しこりが残る
事態を収束させる
下手に出る
じっくり
十中八九
しびれを切らす
四面楚歌
釈迦に説法
シャキッと
杓子定規
十人十色
重箱の隅をつつく。
出世頭
朱に交われば赤くなる
修羅場
勝算がある
枝葉末節(にこだわる)
正面突破
地雷を踏む
白羽の矢が立つ
白黒をつける
心臓に毛が生えている
新天地

スゴスゴと
捨てる神あれば拾う神あり
すべる
住めば都
すり合わせる
スリム化する
スルーする
ズルズルと

誠心誠意
せかせか
関の山
絶体絶命
背中を見せる
選球眼
先見の明
千載一遇
千差万別
先手必勝
前途洋女

そば屋の出前
遜色はない
付度する

た)
大合唱
大義名分
台所事情
高飛車
高をくくる
ダサい
他山の石
ダダ洩れ
盾に取る
棚からぼたもち
タメ口をきく
ダメ出し
たらい回し
ダラダラ
断捨離
断腸の思い

ちゃぶ台をひっくり返す
中途半端
ちりも積もれば山となる

つかみどころがない
ツーショット
ツッコミを入れる
爪の垢を煎じて飲む

手足になって働く
ディスる
適材適所
手抜き
手のひらを返す
手放しで喜ぶ。
手前みそ
手を打つ
天然(ボケ)

独壇場
毒を食らわば皿まで
突破口となる
ど真ん中
ドヤ顔
取りあえず
取り付く島もない
度量が大きい
度忘れ
どんでん返し
どんどん
ドン引き(する)

な)
なあなあ
泣きつく
梨のつぶて
七不思議
浪花節
成り行きを見守る

二度あることは三度ある
二刀流
二度手間
二の舞(を演じる)
二番煎じ
二匹目のどじょう(を狙う)
二枚舌

猫をかぶる
根回し
寝耳に水

能面のような
喉から手が出る
喉元過ぎれば熱さを忘れる
のべつ幕無し
のれんに腕押し

は)
場当たり的
倍返し
はじける
はしごを外される
バズる肌感覚
破竹の勢い
波長が合う
ハッパを掛ける
八方美人
早い者勝ち
腹が据わっている
腹の探り合いハラハラ
腹をくくる
針のむしろ
バリバリの
万人向け
半端ない

ビシバシ
秘蔵っ子
人聞きが悪い
一筋縄ではいかない
独り勝ち
日の当たらない
火の粉がかかる
火花を散らす
冷や汗
180度変わる
百発百中
平謝り
便乗する
貧乏くじを引く

ファインプレー
フォローする
不可抗力
二つ返事
二股を掛ける
踏み台にする
踏みとどまる
プラマイゼロ
踏んだり蹴ったり

閉塞感が漂う
へこむ

墓穴を掘る
保険を掛ける
ボタンの掛け違い
ぼーっとする
骨をうずめる
褒められて伸びる(タイプ)
ボロボロ
本末転倒

ま)
マウンティング
巻き返しを図る
眉唾
満場一致

見切り発車
水掛け論
三つ巴
脈あり

胸熱
胸を張る
村八分

目が点になる
目からうろこ
目線を合わせる
目をつぶる

持ってる
盛る
問題のすり替え

や)
矢面に立つ
やきもきする
焼け石に水
ヤバい
やる気満々

有終の美を飾る
優柔不断

横やりを入れる
よしなに
寄る年波には勝てな
弱音を吐く
弱みにつけ込む

ら)
リア充
リベンジ

冷却期間を置く
レガシー
レッドカード
連チャン

老婆心

わ)
分かりやすい(人)
わが道を行く
和気あいあい
脇を固める
渡りに船
割に合わない
われ関せず

柴田 真一 (著), 鶴田 知佳子 (著)
アルク (2020/6/29)、出典:出版社HP

本書の特徴

本書は、四字熟語、故事成語、ことわざ、オノマトペなど、日常生活で習慣的に使われる言い回しを「慣用表現」として取り上げ、それに対応する英語の訳や表現を紹介しています。「お互い様」「大義名分」「ディスる」…など、ビジネス頻出の言い回しから若者言葉まで多彩な表現をカバー。「日本語ではこうだけど英語では何と言うのだろう?」という疑問に答えています。五十音順に掲載しているので、知りたい表現を辞書のようにさっと引くこともできますし、興味のあるところから、読み物を読むように楽しみながら知識を身に付けることもできます。

・語彙力と表現力がアップする
本書で取り上げた表現は全部で382。全てに「意味」と「例文」が付いているので、実際の場面での慣用表現の正しい使い方が分かります。対応する英訳として、英語表現やイディオム、ことわざなどを多数紹介。日本語、英語ともに、語彙力が豊かになり、表現の幅が広がります。

・英語で伝えるコツが分かる
一流の英語話者は、訳しにくい日本語をどのように英語にしているのか?その答えが分かるのが「訳考」※ という、英語で伝える際の思考回路(英訳プロセス)です。柴田先生と鶴田先生が、「なぜそう言えば伝わるのか」を解説しながら、分かりやすい英語にするコツとテクニックを伝授しています。
※本書で使用している造語です。

・知識と教養が身に付く
英語と異なる文化の中で育まれてきた言葉を英語で表現しようとする際には、文化のギャップ(違い)を理解することが大切です。先生方の豊富な知識と海外での体験談が、この文化ギャップを埋めるのに大いに役立ちます。日英の言語的・文化的な発想の違いが分かり、異文化理解に役立つ知識と教養が身に付きます。

柴田 真一 (著), 鶴田 知佳子 (著)
アルク (2020/6/29)、出典:出版社HP