あぶない英語 (幻冬舎新書)

 


 

誤解、炎上を起こしてしまうかも?

学校では教えてくれないが日常会話で使われている言葉はたくさんあります。そのような言葉の中には、使う場所や場面を間違えると人間関係が壊れてしまったり、命の危険に晒されたりする言葉が存在しています。あぶない英語を理解しておくことで、英語での会話のストレスが軽減できるでしょう。

はじめに

「教養が大事だ」という言葉を、よく聞くようになりました。それは、誰もがSNSによって情報発信できるようになったことと、大いに関係があるでしょう。設定によって誤字 脱字が自動修正されたり、注意喚起の下線が出てくるので、校正はなんとかなります。しかし、肝心の校閲は誰もしてくれません。したがって、本人の教養がそのまま表に出てしまいます。

教養の定義は非常に難しいのですが、歴史、倫理、社会、ビジネスなどの幅広い知識を持ち、それらを適切に運用できる能力、そして自分の発する言葉の重みを自覚したうえで、どのような反響があるかを予測し、振る舞える能力、といえるかもしれません。

たとえば、歴史的事実であっても、自身の置かれている状況や立場によって、言及することが適切か否か、さらに発言の反響を引き受けられるか否かを判断して、投稿しなければならないということです。もちろん、高度な語学力を持ち合わせていても、またAIを使って正確に翻訳できたとしても、教養が欠落していたら、その発言は問題になる可能性があります。軽い気持ちで不用意な発言をしたものが、後に大きな問題に発展した例は枚挙にいとまがありません。誰もが気軽にSNSで情報発信できる時代だからこそ、教養を身につける必要があるのです。

私は大学で英語を教え、大学一般教養教科書の執筆もしています。その傍ら、会社を経営しています。海外に商談に行く機会も少なくありません。
現状、ビジネスにおいて英語はほぼ必須といってよいでしょう。貿易書類はほぼ英語ですし、契約までのやりとりもほぼ英語です。少なくとも私のかかわっている海外諸国にお いては、非英語圏であっても英語でやりとりをしています。しかし、英語ができるからといって商談がまとまるわけではありません。意外にも人は合理的な判断をしないため、好き嫌いであるとか、誰かの紹介であることを重視することが少なくありません。英語力そのものではなく、教養を含めたコミュニケーション能力によるところが大きいといえます。

平たくいえば人に好かれること、信頼されることが大切なのですが、なかなか思うようにはいかないものです。そこで、私は教養を身につけ、できる限り相手に嫌われないよう 想像力を働かせ、英会話することを心がけています。また、危険地域に行くこともあるので、危機管理は徹底しています。私は大学で英語を教えており、全国の大学で使用される教科書も執筆していると述べましたが、大学英語教育のフレームワークのなかでは、教養 や危機管理につながる英語を学ぶ機会はありません。

たとえば、fuck のように感情が強く込められた言葉や汚い言葉を知っておけば、危機管理に役立ちますが、大学の英語教育で fuck を取り上げることはないのです。一般的に fuck は放送禁止用語であるため、最も汚い言葉のように思われていますが、それ以上に汚い言葉もあります。たったひと言で、社会的信用が失墜し、人生を棒に振る言葉もあるのです(その一方で、使う状況やどの立場で発言するかによって、結果が異なる場合もあ ります)。こうした実社会を渡るための英語力(教養)は、誰も教えてくれません。

本書は、さまざまなシチュエーションで品格のある、ない、ときには中立の英語表現を挙げ、解説しています。同じ意味を伝えるにしても、状況によって使う英単語が変わるこ と、表現が変化すること、その背景にあるこれまで知らなかった英語圏の文化を学ぶこと ができるでしょう。また、現代社会の常識が変わりつつある(差別や偏見を避けるため、 政治的観点から適切な言葉を使おうとする動き= political correctness のこと) なかで、 どのような言葉が差別的であると認識され、修正が加えられているか、英語ではどんな表現がパワハラ、セクハラになるのか、ビジネスの現場で使ってはいけない表現はどのようなものか、学べるようにしました。

「Fuck 以上に発言の内容がひどい」と物議をかもした言葉については、実際にツイッターなどのSNSで炎上した例を取り上げ、解説を加えました。炎上して当然だと思うもの から、こんなことでなぜ炎上するのかと首を傾げてしまうものまで幅広く選んでいます。 日本人の文化的背景からするとたいしたことがないように思えても、欧米社会では許容さ れないことも多々あります。「そんなつもりじゃなかった」では済まされない、というこ とです。日本の社会もこれから、ますます言葉の重みが増していくことでしょう。転ばぬ 先の杖として、本書が英語の教養を学ぶ一助となれば幸いです。

岩田雅彦 (著)
出版社: 幻冬舎 (2020/3/26)、出典:出版社HP

目次

はじめに
第1章 品格のない英会話を学ぼう
学校では教えてくれない品格のない英語
自らが使うことはなくても知っておいて損はない
ピーと鳴る放送禁止用語はこの単語
同じ肛門を意味する単語でもだいぶ感じが違う
品格のあるうんこ、ないうんこ
漏れそうなとき
品格のある尿、ない尿
ラップや映画には品格のない、汚い英語が飛び交っている
なぜ品格のない英語を学ぶべきなのか
品格のない英会話は親しい間柄でうまく使うと距離が縮まる

第2章 Fuckの上手な使い方
Fuck you! を深く学ぶ。
相手がバカ野郎であることを示すには
“Fuck 動物”は意味にとらわれずバカにされているとわかればよい
他の単語と結合してさらにガラの悪い言葉になるfuck
Fuckを使ったさまざまな「バカ野郎!」表現
ガラの悪い人は間投詞のfuckを事あるごとに叫ぶ
Fuckを使う場合の声のトーン
ちょっと変わったfuckの使い方
ちょっとふざけたfuckの使い方
実践編1 挨拶で使う「fuck」
実践編2 うれしいときに使う「fuck」
実践編3 なにげなく使う「fuck」
実践編4 愛を告白するときに使う「fuck」
実践編5 場を和ませるときに使う「fuck」
中指を立てる仕草の考察

第3章 パワハラな英会話
うっかり話すと大問題になってしまうフレーズがある
ハラスメントを理解する
ポリティカル・コレクトネスを理解する
現代社会においては白黒はっきりさせないほうがいい?
〈人種による差別〉
アメリカで人種は人生を左右する重大な要素
日米の履歴書の違いからハラスメントを理解する
至る所でnon-sexist languageを使えといわれる
〈性別による差別〉
「若く見える」ことを成熟していないととらえる人々
〈年齢による差別〉
年齢差別を避けるにはどう伝えればいいのか 日本人が知らない差別になる英会話
〈宗教による差別〉
〈外見による差別〉
〈障がいに関する差別〉
〈経済状況などによる差別〉
〈職業による性差別〉
〈犯罪歴に関する差別〉
「週末は働けますか」と質問してはいけない
「変わった名前ですね」と話を進めてはいけない
プライベートに踏み込まず、ストレートに用件だけ伝えよう
これからますますパワハラ防止は厳格化されていく

第4章 セクハラな英会話
どんどん広がるセクハラの概念
日本の和解金、賠償金もアメリカ、イギリス並みになる
近くで聞いている人が不愉快になる英会話
セクハラにならないよう気に入った人を飲みに誘う
いっそのこと「余計なことはしないほうがいい」という考え方
セクハラと誤解されやすい英会話
世界はすでに軽口を許さなくなっている
なぜ自分がセクハラで訴えられるのかさっぱり理解できない
明らかなセクハラから含みを持たせたセクハラまで
ほめるとセクハラになる
絶対的権力者の見返りハラスメント

第5章 〈実例解説〉炎上した英語表現
アメリカで炎上する言葉は、ある意味fuckより汚い
ネット社会を生きるうえでのリテラシー
1 ドナルド・トランプ大統領の炎上発言
2 デビッド・ボンダーマン(ウーバー)の炎上発言
3 大手アパレルメーカーH&Mの炎上広告
4 ロザンヌ・バー(芸能人)の炎上発言
5 ヴィクトリアズ・シークレット(ファッションブランド)の炎上マーケティング
6 イーロン・マスク(テスラ)の炎上発言
7 ビヨンセ(歌手)にまつわる炎上発言
8 人工知能Tayの炎上発言
9 マーク・ザッカーバーグ(フェイスブック)の炎上発言
10 ギルバート・ゴットフリード(お笑い芸人)の炎上発言
11 50セント(ラッパー)の炎上発言
12 ジャスティン・ビーバー(歌手)の炎上発言
13 テイラー・スウィフト(歌手)の炎上発言
14 ジャスティン・サッコ(一般人)の炎上発言
おわりに
参考資料

岩田雅彦 (著)
出版社: 幻冬舎 (2020/3/26)、出典:出版社HP