この英語、訳せない!headは頭?顔?首?

 


 

本書は、日本語と英語の言語の違いから生まれる、訳しにくい、もしくは訳せない英語表現をまとめた本です。英語のワードの性質ごとにチャプターが分けられています。チャプターは、複数の意味を持つ英単語、文化の違いから訳しにくいことば、言語構造が異なるために生じる訳しにくさ、で括られており、表現ごとに、日本語にする難しさや筆者がこれまで苦労した経験を綴っています。

まえがき

みなさんもご存じのとおり、英単語と日本語の単語は、A=Bのように意味が1対1で対応するとはかぎりません。それどころか、ぴったり決まることはむしろ珍しく、1対多もあれば、多対1、多対多であることもよくあり、さらに言えば、1対0、つまりその英語表現に相当する日本語が存在しないと言わざるをえないケースにもときどき出くわします。異なった歴史を持つ異なったふたつの言語なのですから、それは当然のことです。

翻訳の仕事をしていると、よい訳語が頭に浮かばなくて先へ進めなくなることが1日に何度もありますが、その何割かは上のような困った単語や表現にぶつかってしまった場合です。そして、あれこれ考えたり調べたりを繰り返しているうちに、頭のなかに(あるいはパソコンのなかに)自分なりのデータベースができている翻訳者も多いでしょう。

この本では、わたしが日ごろの仕事で少しずつ身につけてきた「訳せない英語の訳し方」をできるかぎり紹介します。それぞれの項目 を書き進めるにあたっては、ネイティブスピーカー10人余りや翻訳クラスの受講生多数の意見を参考にし、具体例として、自分自身も含めた多くの翻訳者の訳文もいっしょに載せました。訳しにくさの根底にあるものとして、「いくつもの意味を持つ」「文化のちがい」「言語構造のちがい」という3つの要因を考え、それに基づいて章を分けましたが、現実には2つ、あるいは3つすべてにまたがるものも少なくありません。そんなこともあり、この本のどこから読んでもらってもいいと思っています。

多少とも外国語や海外の文化に興味を持っている人なら、だれでも楽しんでもらえるように書いたつもりです。むずかしい英語表現が出てきたときは、気軽に読み飛ばしてもかまいませんが、辞書を引いたり画像を調べたりしながら読んでもらうと、より多くのものが身につくでしょう。

厄介ではあるけれど、楽しくて奥深い「翻訳できない英語」の世界へようこそ。

越前敏弥

越前敏弥 (著)
出版社: ジャパンタイムズ出版 (2019/12/1)、出典:出版社HP

目次

CONTENTS
まえがき
Chapter 1 いくつもの意味をもつことば
1 brother, sister 姉か妹か、それが問題だ
2 young, old 若いのに old man?
3 khaki 幅の広い「カーキ色」
4 dark, fair 美男の条件、darkとは?
5 mop hair ジャスティンもトランプもモップヘア?
6 sorry いつも悩ましいsorry問題
7 enjoy 「楽しむ」ではピンとこない
8 possibility 複数形になったら要注意
9 integrity 訳語がビシッと決まらない
10 head 頭? 顔? 首?
11 mind 感情より知性に近い
12 enterprise もとにあるのは冒険心
13 irony 二面性こそが本質
14 politics, policy politicsは「政治」じゃない?
15 discipline 「みずからを律する」が基本概念
16 train, car, carriage, bus 乗り物あれこれ
17 water 「熱い水」って?
18 oak 「カシの木」が減った理由
19 「プリン」の仲間たち
20 「お茶」じゃない tea
21 tart は「おまんじゅう」?
22 英米で異なる corn の正体
23 まぎらわしい魚の名前
24 curtsyは女王のやさしさ
25 挨拶ひとつがむずかしい
26政治的に正しすぎると
27 12歳は teenagerではない?!
コラム counterpart は変幻自在・

Chapter 2 言語構造のちがいによる訳しにくさ
1 英語の何倍もある一人称
2 訳文へにじみ出る複数形
3 beforeはときに「あと」になる?
4 翻訳者泣かせの thousands
5 学、学、学、 ………
6 「~的」だらけはご勘弁
7.orの奥深さ
8 どっちが先?
9 縦横無尽
10 日本人の苦手な否定疑問文
11 目立ちすぎる符号たち
12 イタリック体が使われる理由
13頭韻を見ると血が騒ぐ?!
14 脚韻を見ても血が騒ぐ?!
15 簡潔に訳したいけど
16 だれだって言いまちがえる
17 誤解されがちなことわざ
18 稀代の名訳者
19 奔放なる「離れ業」
コラム すでに「セレンディピティ」が定着?

あとがき

装丁・レイアウト:chichols(チコルズ)
カバー・本文イラスト:ソリマチアキラ
編集協力:佐藤淳子 DTP組版:朝日メディアインターナショナル

p.041,061,083:123RF
p.117:1927年刊 『アリス物語』 : 国立国会図書館デジタルコレクション
p.123:共同通信社

越前敏弥 (著)
出版社: ジャパンタイムズ出版 (2019/12/1)、出典:出版社HP