アジアNo.1英語教師の超勉強法 – 体験談も参考になる手元に置きたい一冊!

前半は島津氏のこれまでの人生、後半で英語勉強法

著者は島津幸樹氏は、イギリスのオックスフォード大学院とロンドン大学院にW合格後、世界で最も革新的な教育を実践する英語教師に贈られる「ピアソン英語教育ティーチャーアワード」を最年少かつアジア人で初めて受賞しました。本書では、前半は著者の人生を振り返りながら、英語について衝撃を受けた体験をもとに編み出したトレーニングについて述べられています。後半では、リスニング・リーディングなどの分野における「初めの一歩」の学習法が紹介されています。

嶋津 幸樹 (著)
ディーエイチシー (2020/6/24)、出典:出版社HP

 

屈辱のオーストラリア短期留学

著者は、日本の英語教育に飽き飽きしていました。「現実味のないホームパーティーでの会話や道案内などを丸暗記して何になるんだ」と。そこで、著者は高校二年生の時、オーストラリアでの短期留学をすることにしました。しかしそこで味わったのは、ホストファミリーからの屈辱的な扱いでした。ホストファミリーは日本人のことを誤解しており、著者に対して人間とは思えない扱いをしました。しかし、著者の必死の訴えによって誤解が解け、著者は「どんな状況に置かれても自分の思いを堂々と伝えれば、道は切り拓かれる」と確信を持ちました。この体験から、異なる言語でコミュニケーションを取ることの重要性を発信しようと思い立ち、英語塾の開校につながっていくのでした。

寺子屋式英語塾「密塾」開校!

著者は「英語で自己表現する重要性」を広めようと、生徒として後輩を集め「密塾(ひそかじゅく)」を開校しました。密塾は学校や普通の学習塾とは違い、対話しながら楽しく教え合い、学び合うというアットホームな雰囲気での授業が取り入れられていました。

そのような授業の中で、特に英単語の学習に力を入れていました。

「『telephone』と『television』の頭に共通してつく『tele』って、一体何なんだろう……?」
僕は、担任の堀内先生にこの疑問を投げかけました。先生は僕を職員室に連れていくと、本棚にあるジーニアス英語辞典を取り出し、「telephone」のページを開いて見せてくれました。発音記号の下に「原義」というセクションがあり、先生はそこを指差して説明してくれます。「英語は、ラテン語とギリシャ語でできている。そして『tele』には接頭語で『遠い』という意味があるんだ」(46,47ページ)

著者が持ったこのような視点から英単語についての学習を行い、当時いた23人の生徒が同時に受けた英検に全員合格するという快挙を成し遂げました。通っていた年代は違うため、受験した級はそれぞれですが、全員が目標を達成した素晴らしい結果と言えます。その後も密塾は成長を遂げ、今では生徒数は700人を超え、甲府に2校と相模原に1校を構えるほどになりました。

挫折だらけのイギリス留学

「教え子たちのロールモデルとならなければならない。まずは『世界の名門大学』を目指そう。」そう意気込んで著者は「オックスフォード大学英語教員研修」に参加。そのままオックスフォード大学院を目指し、様々な苦難を乗り越えて合格を果たしました。ですが、現地で待ち受けていたのはさらに厳しい現実でした。著者は悩み、現地の教授に相談した上でオックスフォード大学院入学を取りやめ、日本に一時帰国するのでした。

遺伝子に刻み込まれるほど熱い経験

著者は、日本に一時帰国後、国際英語教員資格CELTAを所得するため、シェフィールド大学での6ヶ月間の講義や寮生活を経験し、日本に帰国しました。その後、著者は日本で新しいプロジェクトに加わり、のちに「ピアソン英語教育ティーチャーアワード」を受賞し、世界最大の英語教育学会に招待されるようになりました。

僕はこうやって英語を学んできた

この章では、著者がIELTSやTOEICで高得点をとったり、イギリスで生活したりする上での英語の学習方法が細かく紹介されています。今回はそのうちの一つを紹介します。

「独り言スピーキング」
これは、起きてから寝るまでの行動を全て英語に置き換えて独り言で話すというものです。これにより、英語の音と体の動作を一致させて、効率よく脳に言語を染み込ませることができるといいます。毎日継続することで、学習に対するモチベーションの維持にもつながります。

前半には著者の目まぐるしい実体験、後半ではその経験から編み出した学習法が述べられています。学習法については実際に大きな成果が出ており、かつ、簡単にできるものなので、これから英語を学習しようとしている方から留学を考えている方など、幅広い方におすすめの本になっています。

嶋津 幸樹 (著)
ディーエイチシー (2020/6/24)、出典:出版社HP

 

目次

はじめに

人は誰でも「学びの主人公」である
僕が英語学習に目覚めた「きっかけ」
「学びの主人公」に変身するきっかけをつくる
気弱な少女が「学びの主人公」に変わった瞬間

第1章 屈辱のオーストラリア短期留学
高校2年夏。「日本脱出」を思い描く
なぜ日本人は、英語が「話せない」?
「助動詞」でつまずく
「理不尽」から逃げるために
目的地は迷いなく「オーストラリア」
僕に「幻想」をもたらした2人の留学生
準備万端! 意気揚々と旅立つ
「理不尽」は自分の力で打開できる
ホストファミリーの「悪意」
現地の日本人大学生に救われる
新たな「決意」

第2章 寺子屋式英語塾「密塾」開校!
まず教えたのは「英語検定の受かり方」
「英検」を武器に生徒を勧誘
「英単語攻略」に力を入れる
「英単語」を覚えられない生徒に、何をどう教えるか
「ラテン語」と「ギリシャ語」で英単語を芋づる式に覚える
全国模試で「偏差値。」達成!
「密塾」に起きた、小さな奇跡
塾生3人が英語検定に全員合格!
英語の授業は「落書きの時間」だった男が一変
街中に認知されていく「密塾」
「密塾第2校」開校へ
「それは嶋津くんの哲学だね」
「密塾第3校」開校。苦労の末の成功が新たな「葛藤」を呼ぶ
希望に満ちあふれていた「第3校」の開校
生徒がまったく集まらない
思い出した「密塾」の強み
もう一度「世界」へ

第3章 挫折だらけのイギリス留学
後輩たちの「ロールモデル」として自分を高める
「オックスフォード大学英語教員研修」に参加
「地域密着」から、「日本全体」に影響を与える教育へ
「日本の英語教育」に足りないものが、オックスフォードにはすべてある
オックスフォード大学院への険しい道のり
「IELTS 7.5」が絶対条件
「綱渡りの日々」で必要条件をそろえる
「不合格」の通知に、思わせぶりな文言が
降って湧いた「大チャンス」
面接でコテンパンにやられる
絶望の末に訪れた大逆転!
意気揚々と渡英。しかし
「密塾」の精神を引き継ぐ
イギリスで感じた「圧倒的な現実」
「上品」なイギリス文化に劣等感を覚える
完全に自信を失う
「進路変更」という選択肢
「同期」に教えられた、考えもしなかった一手
オックスフォード大学院をあきらめる

第4章
遺伝子に刻み込まれるほど熱い経験
「世界に通用する英語教員」を目指す
国際英語教員資格
CELTA 中国人との議論
僕の教え方は「最低」の評価
CELTA で学んだ、生徒の理解度を問うのに最適の技法
運命の出会い。「タクトピア」設立
「日本の英語教育に対する問題意識」で意気投合
「3つの課題」を解決する
タクトピアの核「新生・イングリッシュキャンプ」
超多忙な日々の中「革新的なプロジェクト」を練り上げる
海外大学生を起用した「イングリッシュキャンプ」を開発
「原体験」を通して世界を見る目が変わる
「アジアナンバーワン英語教師」は通過点にすぎない
「初心」を思い出させてくれた成田空港
タクトピアは「グローカルリーダー」への発射台
「0年間」の取り組みが世界に認められる

第5章 僕はこうやって英語を学んできた
「人間は習慣に流されやすい」と知る
「短期目標」と「中長期目標」を設定する
習慣化には「8日」かかる
「振り返り」でメタ認知能力を高める
習得が速い人は「メタ認知能力」が高い
たった5分で集中力を「倍増」させる方法
瞑想で生産性が高まる
「みんなと違っていい」と考える
オックスフォードの教授研修で教わったこと
「i+1」で大量のインプット
「第一言語習得」と「第二言語習得」の違い
「i+1」と「自分の語彙レベル」を意識する
「宣言的知識」と「手続き的知識」をバランスよく得る
2つの「知識」
「英単語を知る」とはどういうことか
「知る」を知れば、習得も速くなる
「コーパス言語学」を活用する
言葉の「使われ方」を分析
言葉の「相性」を科学的に解明
英単語を「語源」と「ストーリー」で覚える
「カタカナ英語」から語彙を広げる
世界の名門大学の授業動画を「無料」で視聴
動画をフル活用する
良質な教材はインターネット上にいくらでもある
半強制的にリーディングの課題を課す
毎日「英字新聞」を読む
「速読→精読→多読」
最強の自己紹介を作ると世界中に友だちができる
勝負は最初の1分
「世界基準」の発音
「どの国にも属さない英語」が生まれた
でもなぜ「ネイティブ発音」が必要なのか

「カタカナ英語」を克服
カタカナの「ワン」「ツー」「スリー」はもう卒業
「独り言」スピーキング
口に出してつぶやく
0スピーキングトピック徹底訓練
「鳥について話せ」と言われて沈黙した過去
「類義語」を使い分ける
微妙なニュアンスの違い
アカデミックライティングの極意
アカデミックライティングは「構造」から固める
「パラフレーズ」で言い換え
「ひとつの表現」を使いすぎないように
人に「教える」
「教えることで学ぶ」は理に適っている
学びの主人公になる
「恩返しの精神」で「教えの連鎖」「学びの連鎖」が起こる
「教えることで学ぶ」に隠された意味のあるやりとり
グローカルリーダー
教育鼎談
教育界の風雲児×元ビリギャル×アジアNo.1英語教師
(税所篤快) (小林さやか) (嶋津幸樹)
これまでの教育とこれからの教育
試験評価は 2250年前からある
100年前に始まった英語試験
AI時代の言語教育
学びを崩壊させる諸悪の根源
学びの最適解
学びの主人公を育てる
未来の教育予想図

嶋津 幸樹 (著)
ディーエイチシー (2020/6/24)、出典:出版社HP

 はじめに

人は誰でも「学びの主人公」である
僕の部屋の壁には、1枚の水彩画が掛けられています。 描かれているのは「バベルの塔」。旧約聖書『創世記』の中に登場する大きな塔です。
『創世記』には、「人間はかつて、あるひとつの土地に住み、同じ言葉を話していた」と記されています。

そんな世の中で暮らしていた人間はあるとき、神にも届くような高い塔を建てよ うと、「バベルの塔」を造り始めます。しかしこれを「人間による、神への挑戦」 と受け取った神は激怒。人間がこれから簡単に意思疎通できなくなるよう、言語を 多種多様に分け、さらに人間の住む土地を世界中に分散させたのでした。

神を激怒させ、人間のコミュニケーションが複雑になる原因となってしまった建 造物なわけですから、「バベルの塔」は若干、ネガティブなイメージもまとっています。
ただ、「言語や住む土地がバラバラに分かれたおかげで人間は、自分とは違う文 化で育ち、自分とは違う価値観を持った人と、母国語とは違う言語で意思疎通する 楽しみを得た」と考えれば、「バベルの塔」にまつわるエピソードもさほど悪いも のではないでしょう。
異文化交流や多様性との出会い、母国語とは違う言語での意思疎通は、多くの人 に、人生観が変わるほどの大きな転機をもたらします。 もちろん僕も、例外ではありません。

「僕が英語学習に目覚めた「きっかけ」
僕は 2017年、世界で最も革新的な教育を実践する英語教師に贈られる「ピ アソン英語教育ティーチャーアワード」を、最年少で、そしてアジア人として初めて受賞しました。
そのおかげで、今でこそ「アジアナンバーワン英語教師」と呼んでいただいたりしますが、中学1年生のときにABCから英語を習い始め、英語の成績が良かった わけでもなく、そもそも英語を勉強する意欲がありませんでした。

教科書に載っているのは、現実味のない道案内や、実生活からはイメージしづらいホームパーティーでの会話ばかり。 「いったいこんな会話を必死に書き写し、丸暗記して何になるのか……」。そう考 えると、頑張って勉強しようという気持ちにはまったくなれなかったのです。
しかし中学2年の夏、カナダに住んでいる親戚の家に1週間ほど滞在したこと で、僕の英語観は大きく変わります。
親戚の家の近所に、リュウタロウくんという、僕と同い年の男の子が住んでいま した。
日本人同士。男同士。そして、同い年。リュウタロウくんが日本語を話せたこと もあり、僕たちはすぐに意気投合し、滞在中、毎日遊ぶようになりました。

ある日、僕たちは、当時流行っていたカードゲームで使うカードを買うためにコ ンビニエンスストアへ行きました。
ともにカードの入った袋を手に取ると、リュウタロウくんは僕の一歩前を進み、 流ちょうな英語で店員さんと会話を交わしながら、会計を済ませます。 初めてリュウタロウくんが英語を話している姿を見て、僕は衝撃を受けました。 どこからどう見ても日本人の風貌であり、実際に日本人である彼が、外国人と英語でコミュニケーションをとっている――。
リュウタロウくんはカナダ生まれであり、英語はネイティブ。どちらかといえば 英語を話すことのほうが「普通」なのですが、それまで僕の前では日本語しか話していなかった彼の口から、カッコいい発音の英語が出てくることに、素朴な驚きを覚えました。

「すごい、カッコいい」
「僕も英語を話せるようになりたい」
「そのためには、もっと英語を勉強しなきゃ」
僕に英語を勉強するきっかけを与えてくれたのは、英語の教科書ではなく、リュ ウタロウくんだったのです。
この出来事をきっかけに、僕にとっての英語は、「誰かに与えられた勉強」から 「自ら学びたい言葉」へと変わっていきます。

■「学びの主人公」に変身するきっかけをつくる
自らが「学びの主人公」になったとき、その人の人生は拓かれる。僕はこう考え ています。何事も、主体的に取り組めば自分のものとなり成長する。これは勉強に 限らず、すべての物事に通じる真理です。
とりわけ英語は、何を言うにも主語を最初に持ってくる、「自己主張」の強い言 語。自分の好きなことを追求する姿勢がダイレクトにプラスに出る学問です。 「リュウタロウくんのように英語を話したい」と思った瞬間、僕は「学びの主人公」となり、英語に関するありとあらゆることに興味を持つようになりました。

これは決して、僕だけに起こった「特別な経験」ではありません。誰しもが、 ちょっとしたきっかけで「学びの主人公」に変身する可能性を秘めています。そし て、そのきっかけをたくさん与えることが、僕たち英語教育者に課せられた使命だ と考えています。
僕たちタクトピアが全国各地で開催している、イングリッシュキャンプ。中学生 から高校生まで、30人ほどの参加者を募り、3日間のキャンプの中でプロジェクト を創り上げます。 ある年の夏、中学1年生の女の子が、このイングリッシュキャンプに参加しました。

名前はナュさん。ちょっと気弱なところがある、おとなしい子です。そもそも キャンプ初日、集合場所へ向かう途中で道に迷ってしまい、涙を流しながらなんとか集合場所へとたどり着いたのでした。
合流してからも、下を向いたままでひとことも話しません。ようやく何かを話し たかと思えば、声が小さくて聞き取れない。正直、「この子、どうしようかな……。 3日間、耐えられるのかな……」と心配になったものです。

キャンプが始まっても案の定、ナユさんは自分から海外大学生たちと交流を図ろうとしません。周りの子たちがなんとかナュさんとコミュニケーションを取ろう と、優しく粘り強く話しかけて、ようやくナユさんは自分の考えを話す。そんな感じで3日間のキャンプが終わろうとしていました。僕はそれでも「3日間、泣かず に頑張って、えらかったな」と感じていました。
最終日もいよいよ終盤に差し掛かったころのことです。ナユさんがトコトコと僕 に歩み寄ってきました。 この3日間で、ナユさんのほうから誰かにアプローチするのは初めてのことです。
何かが起きそうな予感がしました。

■気弱な少女が「学びの主人公」に変わった瞬間
ナユさんは僕に、こう聞きました。
「先生。『好きな色は何?』って、英語でどう言うんですか?」
僕ははじめ、この質問の意図がわからなかったのですが、聞かれたことに素直 に、「『What color do you like?』だよ」と答えました。
するとナユさんは、この3日間で自分に温かく話しかけてくれた海外大学生たち に、「What color do you like?」と聞いて回り始めたのです。相手が好きな色を答 えると、ナユさんはその色の折り紙を無言で渡します。みんな、ナユさんからの贈り物に感激。涙を流しながら彼女をハグする一大ムーブメントが巻き起こったので した。
ナユさんが起こした、「自分に優しくしてくれた相手に好きな色を聞き、その色 の折り紙を渡す」という行動。これは確かに、3日間のプロジェクトで取り組んだ課題とはまったく違うものです。

しかしナュさん自身が「何かお礼をしたい」と考え、「相手の好きな色を聞き、 その色の折り紙を渡そう」と思いつき、僕に「英語で『好きな色は何?』ってどう 聞けばいいの?」と教えを請い、実践したという一連のプロセスは、「学びの主人 公」になる瞬間を捉えたものです。彼女が折り紙を配るために発した「What color do you like?」は、教科書に載っている意味不明な道案内とは違う、「本物のコミュ ニケーション」の形です。
ナユさんはこの後、自分の通う学校に戻ってから大成長を遂げることになります。「折り紙を渡してお礼がしたい」と思い立った瞬間、ナユさんは「学びの主人 公」への変貌を遂げたのでした。

■本書の構成
本書には、読者の皆さんが、僕やナユさんのように「学びの主人公」へと変わる きっかけをたくさん詰め込みました。
前半では、僕の人生を振り返りながら、「英語」「教育」「異文化」についてとく に衝撃を受けた体験や、その中で挫折と苦労を繰り返しながら編み出したトレーニングをご紹介します。

そして後半では、「英語をもっと勉強したいと思ったけど、何から始めればいい の?」という疑問に答えるべく、リスニング、リーディング、スピーキング、ライ ティングなどの分野における「はじめの一歩」の勉強法をご紹介します。
本書によってあなたも「学びの主人公」となり、新しい英語学習へ、そして新しい人生へと踏み出すための一助となれば、著者としてこれに勝る喜びはありません。
鳴津幸樹