読む前より確実に語彙が増える!
イラストが多く親しみやすい。「これ、言いたかった!」というフレーズばかりです。簡単な表現の集まりですが、初歩から中級者までをカバーする書籍は貴重な存在です。
これを使って、情報を伝達しようという目的であれば、十分に機能します。
はじめに
昨今、日本全国どこの病院でも外国人の患者さんが来院されていることと思います。 その時、「外国人の患者さんの対応はできれば避けたい」「誰か代わりにやってもらえないだろうか」と、ほとんどの皆さんが感じておられるのではないでしょうか。
とはいえ、それでも避けることができない時は、知っている単語を並べて身振り手振りで説明することになります。日本語ならすぐに終わる説明も時間がかかり、非常にストレスのたまる仕事になってくると思います。 しかし、それは外国人の患者さんにとっても同じことです。言葉のほとんど通じない国に来て、病気になってしまった、どうしたらよいのか、病気だけでも大変ですが言葉も非常にストレスのたまる問題です。
この本は、そのような病院内での状況を救うために作成されました。病院内では初診の外来受付からはじまり、各場所への案内、病状の聴取、採血の説明、X線撮影の説明、薬剤の説明、会計の説明など、場面に応じて多くの職種が患者さんとかかわり、説明を行っています。 私たちは平成 26 年度より多職種による共同のプロジェクトを立ち上げ、自部署で日々行われている上記のようなシーン、そこで話されている内容を抽出したうえで、それらを英語へ変換し、同じ内容を英語で伝えることができる環境を整えました。
参加職種は、看護師、薬剤師、臨床検査技師、診療放射線技師、理学療法士、歯科衛生士、窓口事務職員であり、英語文の監修はサイマル・アカデミー法人事業部に依頼し内容を精査しました。 そして、このマニュアルを使用して英会話講習を実施し、ロールプレイを重ねることで、日々の業務を英語でも実践できる環境を整えました。
結果、このプロジェクトを通して、参加者が自信を持って外国人の患者さんに接することができるようになり、また、患者さんにとってもわかりやすくスムーズな応対ができるようになってきました。 まだまだ発展途上ではありますが、東大病院でのこの取り組みを皆さんと共有することで、日本全国の医療現場での英語応対を救いたいと考え、このたびの出版に至りました。
いつも日本語で同じ説明をしているのに英語ではできない、こんな時にどう言えばよいのか、日々のそういった悩みに答えられる本にすべく、プロジェクトメンバーをはじめ、院内の職員が知恵を出し合い作成された本書が、皆さんと外国人の患者さんとの接点で生じる様々な悩みを解決できれば、これほどうれしいことはありません。 それでは私たちとともに準備していきましょう。
英語マニュアル出版 プロジェクトチームリーダー 岡 陽介(事務)
contents
はじめに
この本の構成
この本の利用法
第1章 地震・火災時にも使える緊急対応時の必須フレーズ
1.倒れている・状態の悪い患者さんに声を掛ける
2.災害時に患者さんを誘導する
第2章 伝わることが実感できる全職種対応・厳選フレーズ
1.患者さんと話す
2.患者さんに伝える・確認する
3.患者さんに依頼する
第3章 すぐ使いたいフレーズが満載 職種別シーンマニュアル
Ⅰ受付事務
1.総合案内窓口
初診案内・道案内
2.外来電話予約
3.外来窓口 ○東大病院の診療科名称
4.入院窓口
①入院手続き案内
②入院時
③退院時
5.検診窓口
①来所時・受付時・ロッカー案内
②終了時 ○東大病院の主な施設・設備名称
Ⅱ 看護師
1.外来
①問診
②遅延案内
③注射処置
④呼吸訓練·
2.入院
①入院時案内・リストバンド装着案内・入院時
情報聴取 ○病室、病棟の設備・備品名称
②入院中の会話 ○一般的な症状一覧
③退院時案内 ○時間・単位・回数の表現
3.手術
①術前訪問
②入室・退室 ○手術室の設備・備品名称
III 薬剤師
1.お薬窓口
○現場での服薬指導に役立つ表現
2.持参薬確認
○外国人旅行者に処方頻度の高い薬剤一覧
IV 臨床検査技師
採血・心電図・呼吸機能検査・腹部エコー
Ⅴ 診療放射線技師
胸部撮影・骨撮影・ CT撮影・MRI撮影(腹部)
Ⅵ リハビリテーション療法士
PT・OT・ST
○病院内職種一覧
Ⅶ 歯科衛生士
抜歯後の口腔ケア・周術期オーラルマネジメント
○歯の名称
第4章 話せなくても理解しあえる 指さしイラスト
1 コミュニケーション項目一覧
2 人体部位の名称一覧
3 症状一覧
4 痛み一覧
5 アレルギー項目一覧
6 入院生活のルール一覧
7 持ち込み禁止品一覧(手術前)
8 手術時体位一覧
9 持ち込み禁止品・確認項目一覧(MRI撮影)
10 薬剤の剤形と使用方法一覧
11 リハビリで用いる自主トレーニング例
この本の構成
この本は、次の全4章で構成されています。
第1章 | 地震・火災時にも使える 緊急対応時の必須フレーズ
災害が発生した際、すべての患者さんを正しく誘導することが求められます。ここでのフレーズを習得することで、有事の際に乱せず落ちついて対応できるようにしました。
第2章 | 伝わることが実感できる 全職種対応・厳選フレーズ
いくらマニュアルを丸暗記しても、状況が少し違ってしまうと対応できない、ということはよく起こります。ここでは病院内で使用する頻度の高いフレーズを列挙し、そのフレーズ内の単語を入れ替えることでコミュニケーションがとれるようにしました。
第3章 | すぐ使いたいフレーズが満載 職種別シーンマニュアル
いつも同じように説明していることでも、英語になると困ってしまう、ということはよく起こります。ここでは職種ごとに頻度の高いシーンを、実際の東大病院の内容・説明手順に基づき掲載することで、皆さんの日々の業務に活用できるようにしました。
第4章 | 話せなくても理解しあえる 指さしイラスト
外国人の患者さんとうまくコミュニケーションがとれない時、イラストを利用することでスムーズに対応できることがあります。ここでは言葉が話せなくても患者さん・職員が互いにイラストを指さしすることでコミュニケーションをとれるようにしました。
この本の利用法
この本は読者の皆さんがご自身の職場で「すぐ実践できる」ことを目指しています。
とはいえ、皆さんの英語レベルは様々です。それぞれの英語レベルで業務を完遂できるよう、次のような利用法をおすすめします。
英語に自信がない、ほとんど話すことができない…という方
⇒まずは、第2章「全職種対応・厳選フレーズ」を重点的に練習してください。 この第2章を理解し暗記して、さらに第4章のイラスト集を利用することで、かなりのコミュニケーションが可能となります。
①基本的なあいさつのフレーズ
⇒第一声は非常に大切です。ここで笑顔であいさつができると、その後の会話をスムーズに進めることができます。
②単純なフレーズ
⇒道案内の際の”Over there.”(あちらです)、動作を依頼する際の “Like this.”“Do this.”(同じようにやってください)というようなフレーズが言えるだけでも、様々な業務を進めることができます。
③困った時のフレーズ
⇒患者さんが何を言っているか理解できない時に何と言えばよいか理解しておくことは非常に重要であり、わからないまま安易に回答することは、特に医療の現場では絶対に避けなければなりません。困った時に代わりに対応してもらえるスタッフを事前に見つけておくこともポイントです。
英語にはある程度自信がある、そこそこのコミュニケーションはすでにできる、という方
⇒第3章「職種別シーンマニュアル」でご自身の職種部分をどんどん実践してください。一部の職種では各シーン冒頭にあるヒアリングテストを用いて、ご自身の聞き取り能力を知ることができます。
⇒他職種のシーンを実践することで、ご自身の職種にはない様々なま 現を知り、表現の幅を広げることができます。
職場で使える英語を勉強しようと考えて、いわゆる日常英会話集を使うのは、日々時間に追われながら業務をこなす私たちには非常に非効率です。本書は、他の類書とは異なり、当院で働く各職種の担当者が現時点で実際に使用している会話内容をベースに作成していますので、本書を活用して、フレーズを覚え、実際に業務の中で繰り返し使用することで、自信をつけながら使える英語の幅を少しずつ広げていくような学習方法を取ることが理想的です。
この本の音声について
本書に付属しているディスクの音声は、file.01 から file.43 までが、【練習用のゆっくり バージョン】、そして file.44 から file・86 までは、ネイティブスピードに近い、【聞き流し・ 耳慣らし用のスピードUPバージョン】です。
まずは file01 から43までの、聞きたい箇所の音声を丁寧に聞いて、時には一文ずつ音声を止めながら、実際に声に出す練習を繰り返してください。 そして、file.44 から86まではスピードUPバージョンです。
普段、ネイティブはこれぐらいの速さで英語を話しています。これぐらいの速さの英語に耳が慣れてくると、外国人の患者さんの話す英語が、グッと聞き取りやすく感じられるでしょう。