実例による英文診断書・医療書類の書き方

まさに実用的

正しい英文診断書・医療書類の書き方がシンプルかつ丁寧に説明されています。いろいろなシチュエーションを想定した豊富な例文が載っています。かなり充実した内容となっています。

篠塚 規 (著)
出版社: メジカルビュー社; 改訂第2版 (2011/9/26)、出典:出版社HP

 

序文

『実例に基づく英文診断書・医療書類の書き方』は、幸い多くの先生方に活用していただきました。初版は、日本人が旅行,留学,海外赴任などで海外に出かけ病院にかかることを主眼として書かれました。この10年は日本社会の国際化も益々進み、日本国内において,外国人の患者さんを扱うケースが増加しています。

私の勤務する120床の東京近郊の外科系病院においても,この1年に,訪日中に下血で来院した中国人女性の大腸癌の手術,やはり夏季セミナーで来日中の米国の医科大学教授の緊急入院,激しい腹痛で大学病院より転院してきたイタリア人カメラマンの脊椎手術などがありました。

これらの患者さんの入院中の病歴管理や支払い関係での書類作成,そして帰国後のフォローをしてくれる医師への紹介状など英文診断書をはじめ,英文医療書類作成のニーズは、確実に増加しています。

また,2010年にはスイス登山鉄道の脱線事故やラスベガスでのバス横転事故など、多数の日本人が同時に重症事故で入院するケースも発生し,その医療搬送に関して、主にE-メールで現地の医師とやり取りすることがありました。

今回,これらのニーズにマッチした内容にするために改訂版を発行することになりました。このように多様化した医療文書においても,その基本は,”accuracy”, “brevity”, “clarity”を基本として, international Englishで文書を書くという初版での原則はまったく同じです。

本書がもっとも力点を置いている“旅行用英文診断書”の必要性は,海外での言葉の壁の克服に加えて,次の理由からも益々高まっています。

1. 一人暮らしの人口の増加(若い人も老人も)
2. 救急では、口もきけない状態で受診することが多い
3. 国内でも必要である上記のコメントは、私の尊敬する国際的にも著名な心臓外科医から数年前の会議で御指摘いただいたものです。

また,日々臨床に忙しい先生方のために,その手間と時間を大幅に短縮できる“自己記入式安全カルテ”(日本旅行医学会監修)が,1成人用 2 学生用 3小児用と3種類発行されています。その記入の補助にも,本書の原則が適応されます。本書が,多くの患者さんの安全・安心に役立つことを切に願います。

2011年8月
篠塚規

篠塚 規 (著)
出版社: メジカルビュー社; 改訂第2版 (2011/9/26)、出典:出版社HP

第1版 序文

本書は,海外旅行、海外出張,駐在,そして留学などで海外に出かける人のための英文診断書・医療書類の作成法について解説したものです。今や海外旅行や海外勤務は特別のことではなく、持病をもつ高齢の海外旅行者や生活習慣病の危険因子をもつ海外勤務者が増えています。それに伴い,旅先で具合が悪くなったときのために持参したり渡航先で継続治療を受けるために持参する英文診断書の需要が増えてきていますが,英文での診断書の書き方自体は意外に知られていないようです。英文での診断書の書き方には独自のルールと書式があり、その書式に則っていないと正式の診断書とは認めてもらえません。そのルールと書式を、実例を交えながらご紹介しようというのが本書の狙いです。

そのルールや書式は、原則を理解していれば決して難しいものでないのですが、そのためには日本と海外との医療環境の違いを知っていただかなくてはなりません。日本では医師の「応召義務」という特殊な医療制度のため、誰もが病院に行きさえすれば、診断・治療をしてもらえると思っています。しかし,一歩海外に出れば、医療においても契約社会,つまり“ルール”文化であり,一定のルールを守らなければ治療はおろか診断をも拒否される社会です。

例えば、米国では子供がサマーキャンプに参加する際は、本文でも紹介しているような親の承諾書も兼ねた、いわば国内旅行用の診断書を持たせます。これは、米国では18歳以下の子供の治療については、親の承諾がなければ医師・病院は治療を拒否できる権利を持っているからです。

ヨーロッパでも、医師-患者関係は“契約”に基づく診療・治療であり、その原則はInformed Consentです。このInformed Consentは、日本においては医師・病院側が患者に十分説明すること、つまり“患者の権利”のみがすべてであるかのような風潮が広まっています。しかし、海外では同時に、患者が自分の医療情報を包み隠さず、医師・病院に伝えるという義務もうたわれています。つまり、自分の医療情報を提供できなければ海外では治療を拒否されることもあるということです。そしてこのような状況から,医療情報を確実に伝えるための旅行用診断書というシステムが発展してきました。

旅行用に持参する医療情報には大きく分けて3種類―1短期旅行用,2長期滞在者用,3治療を目的として行く場合―があります。

短期旅行用は、かぜや腹痛で病院にかかる場合から脳卒中や交通事故の場合までを含めて,緊急用として使われます。そのため旅行用の場合は特に”accuracy””brevity”“clarity”が求められています。その書式にはrigid ruleはありませんが,basic ruleと標準書式が存在しています。例えば「International Englishで書かれていること。American EnglishでもBritish Englishでもなく,ましてやJapanese Englishは論外です。また2略語は原則として使用しません。例えばMSは脳神経学ではmultiple sclerosis(多発性硬化症)の略語として使われますが,循環器学ではmitral stenosis(僧帽弁狭窄症)を意味します。その他にも、「ステッドマン医学略語辞典』では32種類の略し方が掲載されています。さらには5箇条書きで書き,A4用紙1枚に収めること等,緊急時に素早く的確に情報を伝えるための約束事ができあがっています。また長期滞在用や治療用の診断書にも,それぞれ特有のbasic ruleが存在しています。

本書ではこれらのルールを,著者がこれまでに手がけてきた実例に基づいてさまざまなケースについてご紹介し,実際に診断書を作成するにあたっての原則を解説するように心がけました。英文での診断書や医療書類の作成を依頼された際に、本書がいささかなりとも読者の皆さんのお役に立てば,著者としてこれにまさる喜びはありません。

2002年4月
篠塚規

篠塚 規 (著)
出版社: メジカルビュー社; 改訂第2版 (2011/9/26)、出典:出版社HP

Contents

第1章 総論
1 なぜ英文診断書が必要か
増加する海外旅行人口
応召義務とInformed Consent
言葉のハンデを補う英文診断書
2 英文診断書の分類
短期旅行用の英文診断書
緊急時を想定して書く
緊急時に役に立つ情報
一目で内容を把握できる書き方
Frontline Information Background Information
長期旅行用の英文診断書
治療を目的とする英文診断書
3 英文診断書を作成する際の原則
International Englishで書く
International Englishとは
主治医の連絡先を明記する
判型はA4判 法的に有効な書式で書く(手書きは不可!)
病名は国際的に通用する表記で書く
Current Medical Diagnosis and Treatmentを参考に
日本独自の病名・分類に注意
保険病名は書かない
薬剤は成分名で記載する

第2章 短期旅行用英文診断書
1 記載の原則 必要な情報を厳選し,A4用紙1枚にまとめる
記載する医療情報の選択基準
略語やあいまいな表現は避ける
診断名・既往歴は重要度の順に書く
アレルギー情報は必須
薬剤は診断名に対応させて書く
患者本人が作成した場合は?
2 既往歴の書き方
重要度順に書く
アレルギー・喘息の情報は必須
アレルギー情報がないと治療を拒否されることも
3 薬剤欄の書き方.
診断名と対応させて書く
Essential MedicationとSupplemental Medicationを分ける
成分名で記載する
成分名の検索には「医療薬日本医薬品集」を使用
投与量・使用目的も記載する
4 症状・治療経過の書き方
診断名と対応させてコメント欄に記載する
高血圧
高脂血症・糖尿病
心筋梗塞
脳梗塞

5 画像などの添付書類
画像診断技術の進歩を反映して、必要に応じて添付する
脳卒中
ペースメーカー
透析
心電図
COLUMN:「手帳」の落とし穴
6 アラートカード
情報をさらに厳選して,常時携帯するためのカード
アラートカードは原則としてオーダーメイド
7 薬剤,医療器具を携行するための証明書
注射器所持の標準ルール
薬剤所持の標準ルール
8 体内医療用金属製品の証明書
空港ゲートでの金属探知機検査を免除してもらうために必要
提示する相手が空港係員という点を考慮する

第3章 長期旅行用英文診断書
1 長期旅行用英文診断書の書き方
長期旅行用診断書のサンプルはCase Records
画像が多い場合はCDに収める

第4章 治療目的での英文診断書
1 治療目的で渡航する場合の診断書
透析治療
在宅酸素療法
リハビリ/転地療法,不妊治療を目的とする患者さんの場合

第5章 健康診断書・その他の医療書類
1 治療中の疾患がない場合の診断書
「治療中の疾患がない」ことも大事な情報
交通事故を想定した輸血を避ける指示の書き方
Advance Directiveの示し方
COLUMN:輸血を拒否する患者さんへの対応
2 健康診断書(問診表)と予防接種記録
就学時の健康診断書(問診表)
就学時の予防接種証明書
小児用の健康診断書
予防接種の証明書
未成年者が短期留学する際に必要な治療承諾書
COLUMN:国によって異なる視力の表記
3 航空機内で医療サービスを受けるための書類(MEDIF)
航空機搭乗のガイドライン
条件を満たせばMEDIFを提出して搭乗可能
4 出生証明書・死亡証明書
5 海外の医療保険会社に提出する医療費明細書
6海外の医療機関へ情報提供を求めるための書類
7 自己記入式安全カルテ
成人用安全カルテ
学生用安全カルテ
小児用安全カルテ
持病がない人には特に有用
8 諸外国のシステムの実例
ペンダント,ブレスレット方式
手帳方式
USBメモリー,メモリーカード方式
9 終論 英文診断書作成後のサポート
記載内容の照会への対応

参考文献
英文診断書作成に役立つインターネット・サイト
著者紹介

本書のダウンロードサービスについて

本書に掲載した英文診断書や医療書類のテンプレート(雛形)を,小社ホームページからダウンロードすることができます。テンプレートはWord2004形式(拡張子は.doc)で作成されています。
下記のホームページ(本書の紹介ページ)にアクセス後,「ダウンロードサービス」の文字をクリックしてお進みください。
なお,ダウンロードページにアクセスするにはユーザー名とパスワードが必要です
本書の紹介ページ(メジカルビュー社)http://www.medicalview.co.jp/catalog/ISBN4-7583-0429-7.html
ユーザー名:mvshindansho
パスワード:75830429

篠塚 規 (著)
出版社: メジカルビュー社; 改訂第2版 (2011/9/26)、出典:出版社HP