感覚の英文法とは?
中学や高校で教えられてきた英語では、英文法の文系や規則、用法は丸暗記することが求められてきました。しかし、ネイティブの人たちは前置詞などの英文法を感覚で使用しています。本書は、感覚で文法を使用することができるように文法の基本イメージをわかりやすく説明しています。
はじめに
本書のもととなる同名のNHKブックスを上梓してすでに17年が経つ。そこでの主張は「英語は生きている」ということだ。英語という言葉をこれまでのように機械的な文法規則で切り刻んでみても、生きた英語を理解し自由に使うことはできないということだ。
今回の新書化にあたり、本書を読み返してまず感じたのは、「今はとても書けない」ということだ。「英文法をこわす」という本書タイトルは、今の私にとっては過度に扇情的なタイトルであるし、言葉遣いも辛辣に過ぎる箇所がいくつもある。
当時の私は、だが、そうした過剰が新しい英語教育を拓くには必要だと感じていた。長年変わることがなかった閉塞と決別するためには起爆剤が必要だと感じていたのだった。それが私とこの本がもっていた熱だ。若気の至りともいう。
本を読み進めると、粗削りで未熟な箇所も多々あるが、この本には私の原点がある、と強く感じる。細かな分析はさておき、自分が何をやりたかったのか、どうやりたかったのかがすべて詳らかにされているように感じる。
本書が新書となって余命を永らえたことは、嬉しくもあり、気恥ずかしくもある。そのことも含め、ぜひお楽しみいただければと思う。
目次
はじめに
序章感覚の英文法とは何か
1.新しい文法へ
2.機械信仰と感覚
3.thatのイメージ
4.感覚の文法がもつ優位性
5.本書の構成
第1章 文型を再構築する
感覚は英語を覆う。
1.感覚はどこにでもある
2.SOに潜む感覚
3.基本動詞TAKE
4.助動詞MUST/HAVE TO
5.前置詞OVER、FOR、TO
6.TO不定詞:ポインター(pointer)としてのto
7.-ING
8.5文型のイメージ
9.第1章まとめ
第2章 時制を再構築する
感覚の通わぬ世界とは
1.イメージのない英語表現
2.学校文法での「時」
3.過去形のイメージ
4.現在形のもつイメージ
5.未来をあらわす表現
6.「時」の自由
7.第2章まとめ
第3章 規則・用法を再構築する
ニュアンスの最深部へ
1.日本語訳・規則・用法分類の虚構
2.日本語訳の虚構(1):視覚動詞
3.日本語訳の虚構(2):使役構文のイメージ
4.日本語訳の虚構(3):前置詞の世界
5.前置詞のニュアンスを巡る旅
6.規則・用法の虚構(1)
7.規則・用法の虚構(2):時制の一致
8.規則・用法の虚構(3):現在完了の4分類
9.第3章まとめ
第4章 イメージを再構築する
質的転換を図る
1.theの基本イメージ
2.イメージのもたらす質の転換
3.深度:イメージの要件(1)
4.差異:イメージの要件(2)
5.第4章まとめ
終章 イメージの見せる世界
1.表現を舐める
2.文の形を舐める
3.終章まとめ
おわりに
編集協力 猪熊良子
DTP佐藤裕久