TOEIC(R)L&Rテスト Part 7を全部読んでスコアを稼ぐ本

スラッシュリーディングがカギ!

TOEICのリーディング100問全てを解き終えるのにはとても速いスピードが求められます。ほとんどの受験者はPart7で時間を大量に消費してしまうと思います。それは、繰り返し文章を読んでいたり訳しながら読んでいたりするからではないでしょうか。本書は一度読んで理解できる力を養うことのできるテキストです。

岩重 理香 (著)
出版社: アルク (2020/4/16)、出典:出版社HP

はじめに

Part7は、なぜ時間切れになるのか?
「Part7が時間内に終えられない!」
「最後は、マークシートを『塗り絵』(※1)するだけなのでスコアが上がらない…」
「やっぱり速読法を身に付ける必要があるのかな?」

これらは、ほとんどのTOEIC受験者の悩みではないでしょうか。私が企業や大学で指導する際にも、多くの受講生から同じ悩みを訴えられます。
Part7は54問もあるTOEIC最大のパートです。しかも、設問、選択肢、さらにはちゃんと読むことができれば文書にも正解のヒントが書かれているので、本来スコアを稼げるパートです。つまり、ここで時間が足りなくて「塗り絵」をするというのは、得点源を手も付けないで捨てているのと同じことです。
なぜ、Part7を時間内に終えられないのでしょうか?Part5、6を207終えてPart7に55分(※2)残していても、時間が足りない人もいるでしょう。
その主な原因は、以下の3つと考えられます。

①1文の中で後ろから訳し上げるように戻り読みしている。
②複数の文からなる文書内で、前の方に書いてあった内容を忘れてしまい、確認しようとして繰り返し読んでいる。
③完全な日本語に訳そうとしている。

①の「戻り読み」をする人は、関係代名詞などがあるとその後ろを先に読んで、その後に、修飾されている語句(先行詞)をつなげるため、1つの文の上で目線が行ったり来たりしてしまいます。
※1「塗り絵」とは、Part7に取り組んでいる途中で時間切れになり、未解答のまま残った問題のマークシートを適当に塗りつぶすことです。
※2リーディングセクションの解法の一つとして、Part5.6を20分で終わらせ、Part7に55分当てて1問1分ペースで解くという時間配分が、よく推奨されています。

②の「繰り返し読み」をする人は、個々の英文は読めていても、それらを関連付けた文書全体の流れを把握できていません。その結果、途中で内容を忘れてしまい、文書の冒頭や忘れた箇所に戻ってしまいます。
③の「訳し読み」をする人は、英文を整った日本語訳にできないと気が済まず、さらに、知らない単語があるとそこで引っ掛かるため、納得いくまで訳に時間を使ってしまいます。

では、こうした読み方を避けるためにはどうすればいいのでしょうか?実はその答えはシンプル!

英文を頭から「一直線に読む」

「一直線に読む」とは?
「一直線に読む(本書では「一直線読み」と命名しました)」とは、英語のネイティブスピーカー同様、英語の語順通りに情報を吸収していく読み方です。それは、文単位だけでなく、複数の文から成る文書も最初の文から最後の文まで順番に読むことを意味します。もちろん、英文を読み終わったと同時に、その内容も頭の中に整理されていて、読み直す必要がなくなることまでを含みます。
こうして、戻らず、繰り返さず、訳さず、1回で文書の内容を把握して設問を解くことができれば効率的にPart7を解けるので、時間不足になることもなく、取り組める問題数が増え、スコアアップにつながります。

なお、上で「訳さず」と言ったのは「完全な日本語訳は必要ない」という意味です。
「一直線に読む?それができれば苦労はしないよ」と思った方もいるでしょう。それを可能にするのが本書です。

速読は不要?
「速く読めるようになれば、時間内に終えられるのでは?」と考えた方もいるでしょう。確かに、時間内に解答を済ませることができる読書スピードは、当然ながら必要です。しかし、断言します。Part7を時間内に終わらせるのに、速読と言われるほどのスピードは必要ありません。
読むスピードは一般に、1分間に読める単語数で測ります。単位はwpm(words per minute)です。TOEICの対策本の多くは、55分でPart7を終わらせるのに目標とする速度を150~170wpmとしているようです。

平均的なネイティブスピーカーは250~300wpm前後で読みますが、いわゆる速読はさらに速くて300wpm以上の速さを指します。
しかし、一直線に読めれば、これほどのスピードは必要ないのです。なぜでしょうか。
Part7の文書と設問、選択肢を合わせた全語数はおよそ5000語です。これを例えば、120wpmの速さで一直線に読むと、およそ42分。Part7に55分使えるとすると、選択肢を選んでマークシートに記入する時間が1問につき10数秒確保できます。つまり、一直線に読めるようになれば、120wpmで十分と言えます。

「一直線読み」を実現するトレーニング
本書では、一直線に読む力を養うために、さまざまなトレーニングを行います。
①改行リーディング
英語の語順に沿って、意味の固まりごとに改行した文を読み、ネイティブスピーカーが情報を吸収していく流れを確認します。これにより、語順通りに内容を拾っていく読み方の基礎が身に付きます。

②スラッシュリーディング
改行する代わりに意味の固まりごとにスラッシュで区切った文を読むトレーニングです。最初はすでにスラッシュの入った文を読むところから始めて、慣れてきたら自分でスラッシュを入れる位置を決めながら読んでいきます。最終的にはスラッシュを入れなくても、英語の語順に沿って意味の固まりごとに理解して読んでいけるようになることを目指します。

③脳内会話
英語の語順通りに内容を拾っていく際に、次に来る情報を予想しながら読むトレーニングです。頭の中で「いつあるのかな?」→「来月だよ」、「どこでかな?」→「サンライズホテルだって」のように自問自答しながら情報を収集します。これにより、内容が語順通りに理解できるようになるだけでなく、自問して積極的に情報を引き出すので、記憶にも残りやすくなります。

④音声を使ったトレーニング
このトレーニングには以下の3つがあります。
・同時通訳体験
意味の固まりごとに入ったポーズの間に、同時通訳のようにその固まりの部分の訳を口に出し、次々と内容を整理していくイメージをつかみます。
・聞き読み
読み上げられる音声に沿って、文の意味を思い浮かべながら一直線読みしていくイメージをつかみます。
・脳内音読
3段階のスピードで収録された音声に合わせて文書を目で追い、Part7を解き終えるために必要な読解スピードの指針120wpmの感覚を身に付けます。

⑤ビジュアル化
まず、定番フレーズをシンプルなアイコンにビジュアル化することで、一度に処理できるフレーズを長くしていきます。次に、パラグラフごとの内容を1つの笛単な絵にまとめてビジュアル化します。これにより「訳し読み」から脱却します。こうしたビジュアル化は内容の記憶にも役立ちます。ただし、この手法は絵心の有無などによっては、かえって負担になる場合がありますので、全ての人が絶対に身に付けるべき手法ということではありません。

⑥虫食い文読み
「読み方」だけで読解力を強化することはできません。同時に語彙力の強化が不可欠です。しかし、本書は長文の「読み方」に焦点を絞っています。そこで、語彙力の不足を補い、知らない単語や読みにくい文に遭遇しても一直線に読むためのトレーニングとして、「虫食い文読み」に取り組みます。一部の語句が欠けた虫食い文や、文の抜けた段落を読んで、内容を把握する練習です。

本書では、短い文→長い文、短い文書→長い文書、やさしい文書→TOEICの本番レベルの文書、と徐々にトレーニングのレベルを上げていくので、誰でも無理なく取り組めるように設計されています。
そして仕上げには、本番のハーフサイズの模試でトレーニングの成果を測りましょう。
この本のトレーニングを終えるころには、皆さんは「一直線に読む」力を身に付けて、Part7を55分で完走し、Part7はスコアを稼ぐパートだと自信をもって言えるようになっていることでしょう。
そんな自分をイメージして、さあ、早速始めましょう!

岩重理香

岩重 理香 (著)
出版社: アルク (2020/4/16)、出典:出版社HP

CONTENTS

はじめに
Part7とは?
本書の構成と使い方
無料ダウンロード音声について
序章 学習を始める前に
第1章 改行リーディング
第2章 スラッシュリーディング
第3章 音声を使ったトレーニング
第4章 定番表現のビジュアル化
第5章 まとまった文書のビジュアル化
第6章 知らない単語に出合ったら
第7章 長文読解エクササイズ
第8章TOEIC形式でエクササイズ
終章 学習の終わりに
序章・終章の英文と訳例
同時通訳者に聞く、一直線読みのコツ
ハーフサイズ模試
ハーフサイズ模試の訳例・解答・解説

Part7とは?
本書で扱うTOEICL&RテストのPart7の出題形式について説明します。
問題形式と出題数
文書の数:23個
設問の数:54問
目標時間配分:約55分

出題される問題形式と設問の数は以下のとおりです。
シングルパッセージ(SP):1つの文書に対して設問が2~4問。
10セット29問。
ダブルパッセージ(DP):関連する2つの文書に対して5つの設問。
2セット10問。
トリプルパッセージ(TP):関連する3つの文書に対して5つの設問。
3セット15問。
上記の順番で出題されます。DPやTPは文書同士の関係性が解答のカギになります。先に読んだ文書の内容を頭に置きながら、重複する情報が出てきたら注意して読みましょう。

岩重 理香 (著)
出版社: アルク (2020/4/16)、出典:出版社HP

文書の種類

このパートには以下のような文書が出題されます。それぞれの特徴を押さえておくと読みやすくなります。
①メール、手紙、社内回覧ヘッダーには送信者名ほか重要な情報が含まれているので必ず目を通しましょう。ビジネスメールや手紙では「目的→詳細→対処あるいは依頼」といった定番の流れがあります。

②告知、広告
何に関してどんな情報を伝えようとしているのかを意識して読みましょう。

③記事、レビュー
タイトルと最初のパラグラフで概要がつかめると、残りの部分をスムーズに読み進められます。

④求人広告
「職種→仕事の内容→応募資格→応募方法」のように、情報が知りたい順に並んでいます。応募資格では「必須(required)」と「望ましい(preferred)」など、条件の違いに気を付けましょう。

⑤スケジュール、旅程、会議事項
文書の文字数は少なめです。DPやTPでは、ほかの文書に予定の変更が述べられるなど、文書間の関係性が重要になってきます。

⑥テキストメッセージ、オンラインチャット
2人以上の間でのスマートフォンのメッセージやオンラインチャットでのやり取りです。緊急の問題への対応や打ち合わせ、カスタマーサービスでのやり取りが多く扱われます。

⑦取扱説明書、保証書自分がその製品を持っている、あるいはその製品に興味があるつもりで読むと、情報が記憶に残りやすくなります。

⑧ウェブページ
正解のヒントは、メイン画面上の本文だけでなく別のページにリンクするタブにもあります。レイアウト全体を見ましょう。

⑨フォーム(送り状、請求書、申込書など)
各フォーム(書式)には、それぞれ特有の型があります。その型を知っておくと、スムーズに読めます。
どの文書も途中を読み飛ばしてしまうと、思い込みで選択肢を選んだり、読み直しに時間を費やしたりしかねません。本書で薦める一直線読みで、情報を漏らさず、一度で読めるようになりましょう。

本書の構成と使い方

本書は下の図に示したように4つのパートから構成されています。各パートに登場するトレーニングは、英文の長さが徐々に長くなるなど、少しずつレベルが上がっていく構成になっています。各パートの役割をしっかりと理解してから、学習を進めましょう。

1.全体構成

①導入パート
本書の核となるスラッシュリーディングと、スラッシュリーディングの感覚を身に付けるための3つのトレーニングを紹介。学習前の読解スピードも測定します。

②アドバイスパート
一直線読みをしながら英文の内容を記憶にとどめるための方法や、英文の読解中に知らない単語や表現に出合ったときの対処法を紹介します。

③実践パート
長文やTOEIC形式の英文を読みながら、一直線読みを身に付けます。

④最終確認パート
学習後の読解スピードを測定し、学習前と比較して成果を確認します。さらに、本番のTOEICPart7のハーフ試(本番の半分の問題数)に挑戦して総仕上げをします。

2.各パートの構成

①導入パート
序章:学習を始める前に(読解スピードの測定)
本書で学習する前の英文読解スピードを測定します。まずここで自分の現状を把握してください。

第1章:改行リーディング
意味の固まりごとに改行した英文を読み、返り読みをせずに語順通りに情報を吸収していく練習をします。いわば一直線読みのための準備運動です。次に出てくる情報を予測しながら読む「脳内会話」も試してみましょう。
第2章:スラッシュリーディング
改行の代わりに、意味の固まりごとにスラッシュの入った英文を読むことで、語順通りに英文を読むための基礎固めをします。これ以降の本書の基本トレーニングとなりますので、しっかり取り組んでください。
第3章:音声を使ったトレーニング
「同時通訳体験」「聞き読み」「脳内音読」という3つのトレーニングで、英文の意味を取りながら、目安の120wpmで読み進める感覚を身に付けます。繰り返し読みを防ぐために、音声を聞きながら行うのがポイントです。

②アドバイスパート
第4章:定番表現のビジュアル化
TOEICに頻出の定番表現をビジュアル化することで、情報の処理速度を速めます。
第5章:まとまった文書のビジュアル化
個々の英文を訳して記憶するのではなく、パラグラフごとに内容をビジュアル化することで、「訳し読み」を卒業し、内容の記憶力も高めます。
第6章:知らない単語に出会ったら
長文を読んでいる最中に知らない単語や意味の取りにくい表現に出くわすと、そこだけ情報が欠落してしまいます。そうした部分を黒く塗りつぶして虫食い状態にし、意味の分かる部分だけを読んでる体の内容を推測するトレーニングです。

③実践パート
第7章:長文読解エクササイズ
TOEICによく出るタイプの文書を読みながら、より実践的に、これまでのトレーニングの成果を試します。短い文書から始めて、徐々に長いものに挑戦します。
第8章:TOEIC形式の長文読解でエクササイズ
TOEIC形式の設問が付いた文書を読んで、Part7を時間内に読むための予行演習をします。

④最終確認パート
終章:学習の終わりに(読解スピードの再測定)
最後に英文読解スピードを再度測定して、学習成果を確認します。
ハーフサイズ模試:本番のPart7の半分の問題数の模試で学習の総仕上げをします。

3.無料ダウンロード音声の使い方

第3章、第7章、第8章、ハーフ模試に掲載された英文の本文部分を120wpm前後のスピードで読んだ音声が、無料でダウンロードできます。Part7を時間内に解き終えるための目安となる読解スピードを体感し、そのスピードに合わせて英文の意味を理解しながら一直線読みする練習に活してください。音声が収録されている英文には音声マークが付いています。
音声の入手方法はp.14の「【無料】ダウンロード音声について」を参照しください。

4.赤シートの使い方

意味の固まりの目安として各英文に入っているスラッシュと、英文の訳例は、赤色にしてあります。付属の赤シートをかぶせるとこれらが見えなくなるので、自分で意味の取りやすい、読み進めやすい位置で区切りながら、役を見ずに一直線読みをすることができるようになってます。
スラッシュリーディングがうまくできるようになるまでは、赤シートなしで、スラッシュの位置や訳例を参照しながら学習し、うまくできるようになったら、赤シートをかぶせて、英文のみの読解に挑戦しましょう。

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