サバイバル英文法 「読み解く力」を呼び覚ます

 


 

文法での暗記を減らす!

新書で読める形ですので、一から百までの文法書ではありませんが、重要なのに知られてない、知っていおいたほうが今後の学習に必ず役立つ、そんな1冊になっております。興味があるところ、ここ知りたいというピンポイントで使えるのも特徴です。

関 正生 (著)
出版社: NHK出版 (2015/10/9)、出典:出版社HP

プロローグ

「現在形には確定した未来を示す用法があり、現在進行形には近い未来を表す用法がある」「分詞構文には時・理由・条 件・譲歩・付帯状況の5つの訳し方がある」「getという基本動詞には『得る』という意味の他に、『あげる』という真逆の意味があるので注意しよう」……。
こういった内容はどれも英文法の必須事項として取りあげられることばかりなので、どこかで聞き覚えがあるかもしれません。
それにしても、今あらためて英文法のこうした説明を見直してみると、ずいぶんと細かい内容に思えるのではないでしょうか。加えて、それがよく使われる重要なことなのか、はたまたとりあえず無視しても困らない些細なことなのか、これではわかりません。わからないまま、こういうことを頭に詰め込む作 業に終始したという経験、心当たりはないでしょうか。

英語はもっとラクに学べる

書店の語学書コーナーを見渡すと、膨大な数の社会人向け「やり直し英語」本や英文法の基本を学ぶ本が並んでいます。でもそれらの多くは、我々が学生時代に習ったような難解な文法用語を駆使した無味乾燥な説明を、単に易しい言葉で言い換えただけのもののような気がします。
勉強できる時間が限られている大人が、勉強だけに専念できた学生時代でも大変だった方法を、あえて今、もう一度やり直す必要はありません。
なぜなら英語はもっと、ラクに学べるからです。「ラク」と言っても、無理やり文法用語を使わず説明したり、無意味に易しい言葉で説明したりするのでもなければ、初歩的で決まりきった会話のやり取りを目指すわけでもありません。
この本で強調したい「ラク」とは、それぞれの文法の核心を先に知る、つまり各文法を「芯でとらえる」ことで、無駄な暗記はギリギリまで減らせるということです。

知識を機能させるには

確かに英語の勉強に「暗記」は必要でしょう。単語の意味を覚えないことには何も始まりません。しかし、無味乾燥なルールをただ丸暗記するのは2つの意味でよくありません。それは純粋に非効率的であるということ、そしてもう1つは、それによって文法の本質を見失い、その文法が発するメッセージを理解できなくなってしまうということです。

これをサッカーで例えてみましょう。
「オフサイドってなんなの?」というサッカーの初心者に、熱心なサッカーファンほど「相手チームのディフェンスの最終ラインを越えたところで仲間のフォワードがパスを受けてはいけないんだよ」、といった説明をしがちです。しかし初心者の側からすれば、そう言われてもわからないですよね。こういう細かい説明は、聞き手を置き去りにしてしまいます。では、サッカーに詳しくない人にオフサイドをどう説明すればいいか。
それは、そんなルールがなぜ存在するのか、その核心にあたるものは何かを考えればいいのではないでしょうか。プレーヤーが1人だけ敵ゴールのそばにいて待ち伏せすると、ロングパス1本であっさり得点が入ってしまいます。それを禁じるためにオフサイドというルールがあるのでしょう。一言でまとめると、オフサイドとは「(ゴール前での)待ち伏せ禁止」ということです。

「待ち伏せ禁止」……サッカー観戦を楽しむにはそれで十分です。ここからスタートすれば、敵味方の駆け引きや戦術に気づく機会が増え、より深く観戦を楽しむきっかけにもなるでしょう。

わざわざサッカーで例えたのは、英文法にも通ずるものがあるからです。「theは『その』と訳す。最初に出てきた名詞にはaをつけるが、2回目からはtheをつける」といったことをいきなり覚えても、それがいったい何なのか、わかりませんよね。詳しくは本編で解説しますが、ここで「theとは“共通認識”であり、その場に居合わせた人全員が『せーの!』で一斉に指をさせるものにtheを使う」という冠詞theの核心を先に知っていれば、2回目にはtheを使うとか、earthやsunにはtheが付くのにstarには必ずしもtheがつくとは限らないとか、細かいことを覚える手間が一気に省けます。

それだけではありません。実際に英語に触れたときに、「この文法はこうやって使われているんだな」「この文法が使われているから、こういうことを言いたいんだな」「こう読めばいいんだな」と気づく機会も格段に増えていきます。つまり、文法を芯でとらえると、そのルールがそのまま機能し、具体的に役に立つのです。
それは次に交わすかもしれない英会話の中でかもしれないし、近いうちにする海外旅行の中、あるいはいつかトライしたいと思っている洋書の中でかもしれません。さまざまな場面で機能します。それこそが、「核心を知ること」の真骨頂です。

英語の“森”に、身軽に分け入る

僕は大学生のときから、20年ほど予備校で全国の大学受験生に英語を教え、現在はリクルートの運営するオンライン予備校『受験サプリ』で、全国数十万人の受験生に向けてパソコン・スマホを通した動画授業を行っています。

同時に「英語の核心をつかんだ勉強法は受験勉強だけでなく、TOEICテストなどの資格試験や日常会話、ビジネス英語にも使える」という考えのもと、大学や企業での講演、そして本書のように英語に関する書籍や英字新聞・英語雑誌の記事執筆を続けています。

決して特殊な環境にいたわけでなく、特別な訓練を受けたこともありません。日本で生まれ育ち、中学1年から英語を始め、普通に高校・大学受験を経験しました。28歳まで海外旅行すらしたことがなかったので、英語の教え手としては珍しいほうかもしれません。いまだに短期留学すらしたことはありません。

しかも、子供のころからコツコツ努力することが苦手で、地道な努力を必要とする英文法の暗記が嫌でたまりませんでした。最初はラクしたいがために「何か法則があるはず」と考え出し、調べ出して、この仕事を始めてからは、仮説を立てて実際の英文で検証を行うという試行錯誤を繰り返してきた成果が本書の内容です。

解説する項目はいずれも、無駄な暗記を徹底して排するという方針のもと、極限まで研ぎ澄ませています。それをもってすれば、覚えることが減るのみならず、丸暗記型の学習ではフォローしきれない多くの状況に対応できるようになるはずです。

その意味で、本書は言ってみれば英文法のサバイバルキットの役目を果たします。英語の世界を“森”にたとえるなら、これから紹介する文法事項は、その森の中を身軽に分け入っていくための道具立て、と言えるでしょう。

本書の構成

最後に、本書の構成をお伝えします。
繰り返しになりますが、本書は膨大な英文法の知識を網羅するものではありません。正しく知っておけば便利であるにもかかわらず、誤解が多い内容に話を絞り、その核心部分を示したものです。そしてそれが具体的にどう役立つかにも触れました。

第1講「直感的に意味がわかる」では、冠詞 the から始まり、名詞や時制など、基本的ながら多くの人が勘違いしがちな項目の核心をお示しすることで、まずは本書の示す英語の世界の入り口に立っていただきます。

第2講「知らない単語の意味がわかる」では、誰もが一度は習う、でもどこでどう役に立つかは教えてもらえない文型や語法から、英語は形が意味を支配するということ、簡単に言えば「知らない単語は形から考えれば意味を導ける」ということを紹介します。

第3講「形からニュアンスがつかめる」では、仮定法や助動詞など、話し手の気持ちを反映する文法について解説します。その文法が使われる理由やしくみを知ることで、英語の使い手が伝えたいニュアンス、そこに込められている気持ちを実感できるようになるというわけです。

第4講「スムーズに読みこなす」では、あの悪名高い「クジラの構文」を一瞬で読み下す技術から始まり、分詞構文や関係代名詞など、英文を読みこなしていくうえで欠かせない重要な単元を解説します。

英文法は決して難しくない、そして学び方によってはかなり使えるということが実感できれば、ただのアルファベットのカタマリにすぎなかった英語が、血の通った人間のメッセージであることに気づくでしょう。そしてその先には、新しい英語の世界が見えてくるはずです。この本を手に取ってくださった皆さんに、「英文法って役に立つんだ」と、思わずつぶやいていただける日がくれば幸いです。

関 正生 (著)
出版社: NHK出版 (2015/10/9)、出典:出版社HP

目次

プロローグ
第1講 直感的に意味がわかる
冠詞 the
「せーの!」でみんなが指させる?
冠詞 a・an
ルーツがわかれば意味もわかる
名詞の可算・不可算
「判断基準」だけ知っておく
現在形
文法用語を一掃しよう
進行形
暗記が激減! 5秒ルール
完了形(現在完了形・過去完了形・未来完了形)
1つのイメージで9用法が氷解

第2講 知らない単語の意味がわかる
文型
文型から動詞の意味がわかる! ①
文型
文型から動詞の意味がわかる! ②
語法 その1
一網打尽! tell 型18パターン
語法 その2
超シンプル、that 節をとる動詞の語法
語法 その3
suggest 型の突破口

第3講 形からニュアンスがつかめる
仮定法
手がかりは助動詞の過去形
サバイバル英文法 「読み解く力」を呼び覚ます(NH…
助動詞 will
“I’ll be back.” の本当のニュアンス
助動詞 can
なぜ “Could be.” は「かもね」なのか
Vuin may・must
可能性、はっきり言ってどのくらい?
助動詞 shall ・should ヒントは『聖書』の中にある
受動態
使われるのにはワケがある①
受動態
使われるのにはワケがある②
感情動詞
会話を彩る動詞のしくみ

第4講 スムーズに読みこなす
比較級
秒速でわかる! クジラの構文
be to 構文
5つの訳語をひとまとめに
so ~ that 構文
ネイティブ感覚で読む技法
分詞構文
考え方は、とことん「適当」
関係詞
返り読みしないテクニック
強制倒置
倒置を見抜く頭をつくる
任意倒置
シャッフルにはパターンがある
エピローグ

関 正生 (著)
出版社: NHK出版 (2015/10/9)、出典:出版社HP