同時通訳者が教える 脳に定着する“超効率”英語学習法

 


 

英語パフォーマンス最大限を引き出す!

英語を書いたり読んだりはできるのに、聞いたり話したりすることが苦手という人は多いのではないでしょうか。本書は、同時通訳者である著者が書いた、重要な情報を素早く短時間で聞き取り、的確にアウトプットするための英語学習法です。学校の英語学習では教えてくれない無理せず行う英語学習方法を紹介しています。

序章

同時通訳者が実践している「超効率的」な英語学習法

ネイティブであっても「完璧な英語」が使えない理由
同時通訳者は、英語を完璧に使いこなしている――。
私たちは周囲の人から、そのように思われていると感じることが少なくありません。だからこそ、日本語と英語が飛び交う場所において、必要としてもらえるのでしょう。
しかし、実際には違います。
同時通訳者の英語は、完璧ではありません。
そもそも完璧な英語など、誰にも話せるはずがないのです。

私は中学時代から英語が大好きで、大学は上智大学の外国語学部英語学科に進学しました。卒業後も広告代理店の博報堂で、主に外資系クライアントのマーケティングを担当するなど、英語漬けの毎日を過ごしていました。

ところが、英語に触れる機会が増えれば増えるほど、「自分の英語力は不足している」と感じるようになりました。そこでオーストラリアのクイーンズランド大学大学院に留学して、MAJIT (日英同時通訳翻訳修士課程)を修了したのです。

帰国後はイギリスの大手製薬会社、グラクソ・スミスクライン社の社内通訳を経て、フリーランスの同時通訳者へと転身しました。
製薬会社で社内通訳をしていた経験を買われ、今では主に医薬・製薬関係の学会やシンポジウムなどで、同時通訳を行っています。また、経済や金融も私の専門分野の一つです。一方ではグラミー賞やトニー賞の放送通訳など、エンターテインメント系の同時通訳にも関わっています。
ほかにも官房長官の定例記者会見や公的機関での通訳も多くお引き受けしています。2010年、潘基文氏が国連事務総長として初めて長崎を訪問した際は、同行して同時通訳を務めました。

周囲の人たちにしてみれば、私は充分に「英語ができる人」なのでしょう。しかし、私は自分の英語力に、いまだに満足できていません。
英語をネイティブで話す人たちが、日常会話で頻繁に使う英単語は、だいたい2000語と言われています。
この数字を聞いて「それくらいなら受験のときに覚えた」と思われるかもしれませんが、これはあくまでも、日常会話でよく使われる英単語の数です。
言葉には、たまにしか使われないものの、「大人なら知らないと恥ずかしい」「コミュニケーションをとるうえで、スムーズに進まなくなる」といったものが少なくありません。これは英語も日本語も同じです。

そうした言葉まで合わせると、英語ネイティブの成人が使える英単語は、2万~3万5000語になると言われています。
英検一級で求められる語彙力が1万~1万5000語ですから、その倍近い英単語を、ほとんどの英語ネイティブは話せるわけです。
しかも、この数字は全体のごく一部。たとえば、英英辞典の定番『Oxford Advanced Learner’s Dictionary, 8th edition』には、18万4500を超える言葉が収録されています。

英英辞典に収録されている言葉には、今では滅多に使われない「古語」も含まれています。欧米のビジネスパーソンや知識人は、いきなり古典を引用することも珍しくないので、同時通訳者は古語もある程度抑えていないといけません。
同時通訳者が出席する国際会議やミーティングは、その分野の専門家だけが使う単語も次々と出てきます。いわゆるTechnical termやJargonと言われる「専門用語」です。これまた覚えておかなければ仕事になりません。
これらをすべて記憶して、完璧に使いこなすのは、とても不可能なことがわかりますよね。ネイティブにだってできないことです。

同時通訳者は英語の達人ではなく、英語を学ぶ達人
だからといって、同時通訳者が「わからないから通訳できません」では済まされません。前後の文脈から、飛び交うすべての英語を日本語に、日本語を英語に的確に変換することが、私たちに与えられた役割なのです。
たとえば、医学関係の会議では、病名や人間の器官の名称が飛び交います。
専門性の高い人が集まるほど、「略称」が当たり前に使われます。たとえば、循環器系の会議に出ると、次のような略称が当たり前のように使用されます。

・CIA=Common Iliac Artery(総腸骨動脈)
・EIA=External Iliac Artery(外腸骨動脈)
・lIA=Internal lliac Artery (内腸骨動脈)
・IMA=Internal Mammary Artery (内胸動脈)
・LITA=Left Internal Thoracic Artery(左内胸動脈)
・RITA=Right Internal Thoracic Artery(右内胸動脈)
・CCA=Common Carotid Artery(総頸動脈)
・LCCA=Left Common Carotid Artery (左総頸動脈)
・LRA=Left Renal Artery(左腎動脈)
・RRA=Right Renal Artery (右腎動脈)
・LSA=Left Subclavian Artery(左鎖骨下動脈)
・GEA=Gastroepiploic Artery(胃大網動脈)
・CFA=Common Femoral Artery(総大腿動脈)
・SMA=Superior Mesenteric Artery (上腸間膜動脈)

出席者は医療のプロフェッショナルばかりですから、通訳の際はそのまま略称を口にするだけでも大丈夫です。しかし、意味もわからずに略称を口にしていたら、会議の内容についていけないばかりか、不適切な通訳になりかねません。

そこで同時通訳者は本来の英語と、日本語の意味を十分に頭にたたき込んでおかなければならないのです。
同時通訳者が必要とされる現場で私たちが役割をこなせるのは、本番前の数日間、場合によっては数時間の準備時間で、トピックに関連する言葉や概念を理解し、記憶することができるからです。

同時通訳者の英語力は完璧ではありません。しかし、必要な情報を短時間でインプットして、的確にアウトプットするスキルは身につけています。だからこそ、あらゆる場面で、滞りなく役目を果たせるのです。

同時通訳者は英語の達人というより、英語勉強法の達人なのです。
私たち同時通訳者の勉強法は、学校英語の勉強とは根本的に異なります。
英語を的確に聞き取り、相手のメッセージを理解することに特化しています。それだけにネイティブとのコミュニケーションでは、必ず役に立つスキルです。
受験英語は「合格したら終わり」ですが、同時通訳者の英語学習にはゴールがありません。次々に新しい仕事の依頼が来て、そのたびに新しいインプットを求められます。

同時通訳者として仕事を続けるには、効率的に覚えられるだけでは不充分。「無理せず覚えられる。ストレスなく学ぶことを継続できる」ことが重要です。
それらの一端を皆さんに伝えて、「活きた英語」を身につけてもらいたい。このような思いで私はこの本を書きました。特にビジネスシーンで英語に触れる機会がある人には、役立てられる情報が多いのではないでしょうか。
同時通訳者は英語を勉強するとき、常に次の仕事を意識しています。明確な目標を持っているわけです。だからこそ、短期間でも上達することができます。
あなたも目的意識を持って英語学習に取り組めば、きっと上達のスピードが上がるはずです。

英語を何のために学ぶのか?
上達させて、何をしたいのか?

最初にこれらを考えて、明確にしてください。この疑問に即答できる人は、英語力の向上が期待できます。
私が同時通訳者として日頃、心がけている“英語勉強法”の中から、読者の皆さんがすぐに参考となる内容を整理してお伝えすることで、今までよりも効率良く、英語が身につく学習法を体得していただけたら、著者としてこれ以上うれしいことはありません。

小根山麗子

小根山 麗子 (著)
出版社: プレジデント社 (2019/9/12)、出典:出版社HP

CONTENTS

序章 同時通訳者が実践している「超効率的」な英語学習法
●ネイティブであっても「完璧な英語」が使えない理由
●同時通訳者は英語の達人ではなく、英語を学ぶ達人

第1章 同時通訳者は「英語を的確に覚えるコツ」を知っている!
●新しい仕事のたびに送られてくる、電話帳並に分厚い資料
●短期間で情報を読み解くために「キーワード」を見つける
●全てを一度に覚えようとしない。取捨選択の勇気が必要
●語彙力を確実に高めるために、抑えておきたい3つのポイント
●「言葉の広がり」を意識することで、多くの情報が入ってくる
●英語学習は「五感」をフル活用。聞いて、書いて、口に出す
●英和辞典に頼るよりも「英英辞典」でニュアンスをつかむ
●勉強は「すきま時間」だけでOK。複数回に分けて繰り返し覚えるのがコツ
●最も効果が期待できるのは、手製の「単語帳」

第2章 英語学習では「アウトプットしやすいインプット」を意識
●海外ニュースの「流し聞き」に効果はあるのか?
●人間の集中力の目安は「15分」。英語学習も短時間勝負で
●15分の倍数周期の「体内時計(ウルトラディアンリズム)」
●積極的な「アウトプット」で、英語力が飛躍的にアップする
●「アウトプットしやすいインプット」を学習テーマに選ぶ!
●教科書では身につかない「活きた英語」のシンプルな言い回し
●知っているようで知らない「commitment」の本当の意味
●「英語に自信あり!」という姿勢が説得力を生み出す
●不安を感じてしまいそうなときほど、大きな声でハッキリと
●英語におけるダイバーシティ

第3章 「日本語脳」と「英語脳」のいちばんの違いとは?
●日本語訳より大事な「英語のニュアンス」
●英語独特の言い回しを「それが英語流」と受け入れる
●合理的な英語脳と情報量5割増の英語
●言わなければわからない英語と、言わなくてもわかる日本語
●何があっても結論は先。理由や説明はあと
●「I’m happy to take any questions you may have」どんな質問にも喜んでお答えします
●日本語は「動詞(述語)」がなくても許されるが、英語では動詞がないと会話が成り立たない
●「no」は拒絶の言葉ではない! 意思を伝える大切な言葉
●「木を見ず、森を見よ」。ネイティブは「details (詳細)」よりも先に「big picture (全体像)」を求めている
●便利な日本語 「いる」「ある」「やる」「する」は、不便な英語!

第4章 「通訳学校」で行われる実践的なトレーニング
●同時通訳スキルは「専門的なトレーニング」で身につける
●「逐次通訳」「同時通訳」「翻訳」に求められる役割とスキル
●テキスト素材は「スラッシュリーディング」で区切りを理解
●「シャドーイング」で耳と集中力を鍛えつつ、発音を改善
●脳は疲れると、聞いたことをそのまま再現しようとする
●聞いた英語を忠実に書き取っていく「ディクテーション」
●スラッシュリーディング上級編 :とにかく文頭から順に訳していく
●前後の文脈を無視した「フラッシュカード」の使用をオススメしない理由
●英語力のみならず、高い日本語力も求められるのが同時通訳者

第5章 日常的に「活きた英語」に触れられる環境づくり
●「活きた英語」に触れていれば、聞き取りまではすぐできる?
●プライベートな趣味を英語学習と結びつける3つのステップ
●Fake Newsに気をつけて。SNSを鵜呑みにしない
● Story-telling (ストーリーテリング)に効果的なVisual Contents(視覚情報)
●邦画の英語字幕から学ぶ
●意外と役に立つ「ドキュメンタリー番組」
●分からない単語は読み飛ばしてOK
●「Do you enjoy?」は正解か不正解か? 日本国内で出会う怪しい英文
●電車で流れる「英語アナウンス」は、リスニングにピッタリ

第6章 英字新聞やインターネットを使った「仕事に関わる英語」の見つけ方
●「日本で発行されている英字新聞」は、本場のものより馴染みやすい
●専門分野が明確な人は、「仕事についての記事」を探してみる
●つらいときは「土日だけ」「月金だけ」と限定して読んでみる
●同業他社の「IR資料」に、英語版がないかを探してみる
●いつでも「単語帳」を持ち歩く
●単語帳は手作りが基本。他人の作った単語帳では記憶に残らない!
●オバマ前大統領のスピーチは、英語の勉強に向いているのか?
●文章を短く区切ることで、あなたの英語は聞き取りやすくなる

第7章 毎日の仕事を通じて、英語力をアップさせよう!
●仕事で「英文メール」が届いたらするべきこと
●連絡の「窓口」になってくれる人を、英語で何と言いますか?
●初対面の外国人に、「自己紹介」と「名刺交換」ができますか?
●ネイティブのプレゼンを撮影させてもらい、勉強の素材にする
●自分のプレゼンテーションを録画してみる
●英語流スピーチ原稿の作り方
●格調高い英語に近づけるには「同じ英単語をくり返さない」
●「Good is not enough. We need it to be Excellent !」
●英語学習にはゴールがない。使い続け、学び続ける姿勢が大切

小根山 麗子 (著)
出版社: プレジデント社 (2019/9/12)、出典:出版社HP