イギリス英語発音教本

正統派のイギリス発音を学ぼう!

近年、世界中の人々と関われる環境ができており、世界でも通用する英語が重視されるようになりました。しかし、英語といっても国によって発音やスペルに違いがあります。本書は、イギリス英語で日常的に使用される単語の発音を、重点的にトレーニングを行い、イギリス出身のネイティブのような発音を目指します。

なぜ日本人がネイティブと同じ発音で英語を話すことができないかというと、口の大きさや使い方に原因があります。本書では、口の形や発音記号、力の入れ具合を具合的に記した内容です。母音や二重母音の適切な音の出し方を学ぶことで、ネイティブに近い発音を手に入れることができます。一般的な語学書とは異なり、発音をメインに扱っているので、発音を理論的にマスターしたい人にオススメです。最後まで学ぶことで発音の法則、音の出し方が変わり、発音が変われば伝わり方も変わるはずです。

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まえがき

本書『イギリス英語発音教本』を手に取っていただきありがとうございます。 本書はイギリス英語(以下BE)の発音を、本気で学びたい人のための本です。 特に、日本にいながらBE 発音をしっかり身につけたいと思っている、初学者・ 中級者のための本です。

実は、本書の刊行よりも前に、僕は同じ研究社から、『イギリス英語でしゃ べりたい! UK発音パーフェクトガイド』を出しました。2009年のことです。 当時、BE の人気は徐々に高まっていました。でも、日本人向けの BE の発音教本には、いいものがありませんでした。母音と子音のありきたりな説明しかない、安直なものしかなかったのです。僕は、音声学者として、ほかではまねできない BE 発音教本の決定版を出そうと考えました。それが『イギリス英語でしゃべりたい!』でした。

その後、英語界はコミュニケーション重視の傾向が強まりました。英語の発音の本も、あれこれ増えてきました。でも、BE の発音教本は、僕が知る限り 現れていません。その一方で、『イギリス英語でしゃべりたい!』は、研究社 のヒット作となり、現在まで長く売れ続けています。同書はまさに、ほかでは まねできない BE 発音の決定版となったのです(ちなみに、2014年には続編の『もっとイギリス英語でしゃべりたい! UK イントネーション・パーフェクト ガイド』を出しました。リズムとイントネーションに特化した発音教本です。 今現在、BE のイントネーションをこれだけ詳しく、しかもわかりやすく学べる本はほかにないと思います)。

そんな中で、同じ研究社から、本書『イギリス英語発音教本』を出すことに なったのです。同じ出版社から、同じBE の発音教本です。しかも、今回は研究社らしい直球勝負のタイトルが与えられます。特に初学者に向けた、『イギ リス英語でしゃべりたい!』以上の決定版を作れということです。難しいリクエストです。でも、僕のクリエーター魂を刺激するリクエストでもありました。

実は、『イギリス英語でしゃべりたい!』を書いた後、2013 年に僕は大学教授をやめて、Heart-to-Heart Communications (http://www.hth-c.net/)という会社を作りました。より発音指導に特化した仕事をしたかったからです。その結果、ここ数年は、成人に発音指導をする機会が増えました。BE の発音指導をする機会も多く得ることができました。

意外に思われるかもしれませんが、大学にいたら、そうもいかなかったので す。なにしろ、学内の仕事に追われる日々でしたし、英語を教えるにしても、教養英語とか、せいぜい一般的な音声学の指導程度です。マニアックに BE を語る機会など、実はほとんどなかったのです。

だからこそ、本書は、ここ数年の、実際に日本の社会人に発音を指導してきた経験を反映した内容となっています。その人たちは、高いお金を払って、本気でBE発音を学びに来た人たちです。在英経験も豊富で、英語力の高い人も 少なくありません。そんな人たちとのやりとりの中で得たものが、本書の随所に生かされています。もちろん、『イギリス英語でしゃべりたい!』も、発音 指導の経験を生かしたものでした。でも本書は、より進化したノウハウを盛り込んでいるのです。

たとえば、基本練習を『イギリス英語でしゃべりたい!』よりはるかに充実させました。実は、成人の発音指導を通じて、ここが日本人の弱点だと強く感じたからです。口の動きを大きくする練習や、母音四角形の読み方などがその典型です。また、脱力母音や二重母音の読み方、[l]や[r]の扱いなども、はるかに詳しくしています。
例文については、発音のためだけの、実用性のないものは避けました。 代わりに、できるだけ現地で実際に使われているもの、使えるものを選びました。発音練習すれば、同時にBEでの会話力も養成できるということです。

合わせて、BE 特有の表現を多く盛り込みました。日本ではアメリノ英語(AE) が主流です。イギリスでのごく身近な表現、口語表現などは、あまり知られていません。そのため、現地でごくふつうに使われている会話表現を理解できず に、困ってしまうことが非常に多くあります。だからこそ、BE特有の表現をできるだけ取り込みました。
また、地名も多く入れました。実は地名も、日本人がイギリスに行って困る ことです。なにしろ、イギリスの地名は、読み方がよくわからないものが多い のです。場所を尋ねるにしても、肝心の地名が通じない。そんなことがよく起きてしまうからこそ、地名を多く盛り込みました。

なお、本書では意図的に、同じ例を何度か使うようにしてあります。「あれ、 この例文、前にも見たぞ」というものがあるはずです。実は、繰り返しは英語(外 国語)学習の肝です。とりわけ発音指導の現場では、繰り返しは皆さんが思う 以上に重要なことなのです。だからこそ、あえて1つの例文が何度も出てくる という構成にしました。これは、『イギリス英語でしゃべりたい!』ではしなかっ たことです。

その一方で、本書は、英国の標準発音のみに絞ってあります。『イギリス英語でしゃべりたい!』では、アメリカ英語(AE)の発音との比較や、英国 の様々な訛りについて、あれこれ触れるようにしました(だからこそ、イギリス在住の人に好評でした)。でも、本書は BE の初心者、日本で BE を学ぶ人 のために特化しています。英国の標準発音についてのみに絞りました。AEへの言及も、最小限にとどめてあります(それゆえ、『イギリス英語でしゃべり たい!』の特徴でもあった、比較のための AE の音声も、今回は入れませんでした)。

いずれにしても、本書は、学術書を手がける研究社だからこそできた、懇切丁寧な内容の BE 発音教本になったはずです。BE 発音を日本で本格的に学びた い初級・中級者には、決定版ともいえる発音書となったと思います。ぜひ、この本を活用して、世界に通用する、わかりやすくてきれいな BE 発音を身につ けてください。

2017年春 小川直樹

小川 直樹 (著)
出版社: 研究社 (2017/5/20)、出典:出版社HP

目次

まえがき
イントロダクション
母音・子音一覧表
音声のダウンロード方法

第1部 母音を学ぶ
第1章口の動きの基本
Section1口の動きを大きくする準備運動
Section 2 [u:] Section 3 [:)
Section 4 [a:)
Section5基本3母音の練習
Section6母音四角形を学ぶ
Section7 外側0~0の音
Section8内側1~0の音
Section9 脱力の「アイウ」
Section 10 究極の脱力音 [a]

第2章 外側の母音を学ぶ
Section 1 (el ([el])
Section2 二重母音の出し方
Section 3 [E] Section 4 [ɛ:] ([ɛə])
Section 5 [æ] ([a])
Section 6 [a] ([ai])
Section 7 [a] ([av])
Section 8 [p] Section 9 [ɔ:] Section 10 (5] ([31])

第3章 内側の母音を学ぶ
Section 1 [1] Section 2 [u] ([iə])
Section 3 ] Section 4 Aldo Dil U!
Section 5 [v] Section 6 [u] ([və])
Section 7 [ɔ:] と発音される [Uə)
Section 8 [ə] O M
Section 9 [ə] Okt
Section 10 [ə:)
Section 11 [r] Ostalo
Section 12 səv) (# EA!?
Section 13 (əu]

第4章 三重母音
Section 1 (alə)
Section 2 [avə)

第2部 子音編
第1章 無声音と有声音
Section1 無声音と有声音
Section2 無声音と有声音の違い
Section3 母音の長さが変わる理由

第2章 破裂音
Section 1 [p] Section 2 [b] Section 3 [t] Section 4 [d] Section 5 [k] Section 6[g]

第3章摩擦音
Section 1 [f] Section 2 [V] Section 3 (0)
Section4 [0] Section 5 U] Section6 [31
Section 7 [s] Section 8 [s]に[] やりが続く場合
Section 9 [z] Section 10 [h]

第4章 破擦音
Section 1 [ts] Section2 [U] が多く現れるBE
Section 3 [dz] Section4BE では [dg] も多い
Section5 破擦音と摩擦音の違い
Section 6 [tr] Section 7 [dr]

第5章 流音(LLUとR[r])
Section1の特訓その11
Section2)の特訓その2
Section3語末の [
Section4語中の [] の特訓
Section5 子音
Section 6 [n] Section7ないはずの [0]が現れる!?
Section8ラ行子音は L? R?
Section 9 76+ [n] Section 10 [l] と[r]が混在する場合

第6章 鼻音
Section 1 [m] Section 2 [n] Section3 「二」は [n]ではない!?
Section 4 (tn), [dn] Section 5 [n]

第7章 半母音
Section 1
Section2 [w] の基本
Section 3 BEO) [w] Section 4 7++ [w]

第3部、単語のつながり
第1章句の読み方
Section1句は後ろが強い
Section2地名の読み方
Section3地名の強勢の付け方
Section 4 Street
Section5複合名詞の読み方
Section6略語の強勢
Section7 強勢位置は変化する

第2章 文の読み方
Section1 つなげて読む
Section2子音は続くと落ちる?
Section3 聞き取れないほど弱まる機能語
Section4文の中の弱形
Section5強弱2段階のリズム
Section6 現実のリズムは3段階
Section7音程差は大きく
Section8イントネーションの基本は句末原則

Section9句末原則の秘密
Section 10 BE の特徴を示すイントネーション

あとがき

小川 直樹 (著)
出版社: 研究社 (2017/5/20)、出典:出版社HP

Introductionイントロダクション

英語の発音をいくら勉強しても、思うように上達しないそんな経験はあ りませんか?
実は、英語の発音を学ぶ上で、私たち日本人には決定的な弱点があるのです。 それは、日本人の口の動きは小さい、ということ。
日本語は英語に比べ、母音の種類も子音の種類も少ないのです。ですから日 本語を話す際には、あまり口(唇、舌)を大きく動かす必要はありません。
一方、英語の母音や子音には、日本語よりはるかに多くの種類があります。 それらをきちんと区別して発音しようと思ったら、日本語を話すときよりも、 口を大きく動かさなければいけません。

たとえば、洋画や海外のテレビ番組の俳優の口元を見てみてください。大き く動いていることがよくわかります。一方、日本語のニュース番組などでアナ ウンサーが話している様子を見てみてください。たとえアナウンサーでも、それほど大きく口が動いていないことが見てとれるでしょう。
皆さんは、英語の中でも、とりわけイギリス英語 (以下 BE)を身につけた いと思っていらっしゃるでしょう。その BEらしさを生み出すのは、何にもまして発音です。
本書で言う BE とは、英国の標準的な英語、RP(Received Pronunciation「容認発音」)を指します。では、ネイティブ、ことに英国人が RP とそれ以外の英語をどこで判断しているか、ご存じですか? それは第一に発音です。もち ろん、語彙や文法など、発音以外の要素も判断材料であることは言うまでもありませんが、まず発音なのです。

英国では、標準的な英語RPは、エリート層の話す英語とされています。ですから、この RP を使う人は、だいたい教育程度が高いと判断されます。
では、もし皆さんが英国で、RPで英語を話したら、どうなると思いますか。もちろん、見た目はアジア人、日本人です。そうであっても、RPを一言発した瞬間から、扱いが変わります。

英国社会において発音は、人を判断する上で、見た目以上の大事な材料なのです。だからこそ、BE を身につけたい、BE の発音を身につけたいと願う皆さ んには、この本を通じて、できるだけ正確に、BE の音を習得していただきたいと思います。 まずは、日本語にはない、大きな口の動きに慣れるところから始めます。

英国英語は1つじゃない!?

ところで、BE の発音練習を始める前に、皆さんに知っておいていただきたいことがあります。それは、英国の英語の多様性ということです。
皆さんが思う以上に、英国の英語には、いろいろな方言(語彙・文法面)や 訛り(発音面)があります。
英国の訛りは、大きく分けると6種類です。北アイルランド、スコットラン ド、ウェールズ、イングランドの北部、中部、南部です。
Arthur Hughes < Peter Trudgill IT L3 English Accents and Dialects ELS 有名な方言学の本を参考にして、この6地域を分けると、下の図のようになり ます(この図は、拙著『イギリス英語でしゃべりたい! UK発音パーフェクト ガイド』(研究社)に挙げたものを載せました)。

さらに語彙や文法まで含めると、数限りなく小さく分類できます。でも、み 書は、発音の本ですから、そこには立ち入りません。ちなみに、英国や日本のような古い国では、狭い地域でも独自の方言が発展しています。昔は、人口の 移動がほとんどなかったので、地域独自の表現が発達しやすかったためです。 本書が英国の英語として扱うのは RPです。この RP とは、社会の中でも、 エリート層の話す英語です。家柄が中流以上、学歴も高めの人々の英語です。 政治家や大学教授、ニュースキャスターなどには、RP を話す人が多くいます。

マスコミには、こういった RP 話者が頻繁に現れます。そのため、私たちは、 RP=英国の英語=英国人全員の英語、などと思い込んでしまいます。でも、 この等式はまったく成り立たないのです!

というのも、RP 話者の数は、先ほど挙げたEnglish Accents and Dialects に よれば、イングランド(英国全体ではなく)の人口の3%程度とのこと。たと えば、ロンドンで道を尋ねても、わかるように答えてくれるのは、なんと30 人中1人ぐらいかもしれない、ということです。ときどき、「英国の英語はり かりやすい」ということを言う人がいますが、これは、英国にいたらあくのか らないことがほとんどなのです。

では、そんなに話者の少ない RPを学ぶことに、意義があるのでしょう。 もちろん、あります。なぜなら RPは、話者は少ないものの、英国のどこでも、 そして、世界のどこでも通用する英語だからです。RPで話せば、自分の ジは、確実に相手に受け取ってもらえるのです(相手の言っていることはりや方言、言葉遣い、話し方などのためわからないかもしれませんが。

母音·子音一覧表

1.母音图(母音四角形)

2.母音一覧表 外側の(口を大きく動かす)母音
1[i:]唇を思いきり横にひっぱって出す「イー」
2 [e] 口の開きの小さい「エ」
3[e]口を横に四角く大きく開いた「エ」
4[ae]を横に大きく開いた「ェア」
5 [a] 口の前のほうで出す「ア」
6 [a(:)] 口を最大限開いて、喉の奥から「ア(-)」
7[a]口を最大限開く「ア」から、少しだけ唇を丸めた「オア」
8[x]唇を大きめに丸めた「オー」
9[o]唇の丸めを小さくした「オ」
10 [u] 唇に力を入れて突き出す「ウー」

内側の(脱力する)母音
11[i]口から力を抜いて発音する、「エ」に近い「イ」
12[]口を半開きにして力を抜いて発音する、短い「アッ」
13[u] 唇から力を抜いて軽く丸めた、「オ」に近い「ウ」
14[e]顔全体から力を抜いて出す、短くあいまいな声
3.子音一覧表
破裂音
[p] 唇を閉じてから息をゆっくり強く吐き出す。気息が響く
[b] 唇を閉じてから声を一気に出す
[t]舌先を上歯茎に押し付けて、息をゆっくり強く吐き出す。気に
[d] 舌先を上歯茎に押し付けて、声を一気に出す
[k]舌の付け根で息を止めて、ゆっくり強く吐き出す。気息が響く
[g] 舌の付け根で息を止めて、声を一気に出す
摩擦音
[f]上前歯の先で下唇の内側にそっと当て、息を吐き続ける
[V] 上前歯の先で下唇の内側に軽く触れ、声をゆっくり吐き続ける
[0] 上前歯の先端に舌先を軽く触れて、息を吐き続ける
[0] 上前歯の先端に舌先を軽く触れて、声をゆっくり吐き続ける
[s]舌を中央に寄せ、勢いよく息を吐き続けて出す「ス」
[z]舌を中央に寄せ、ゆっくり長く声を出し続ける「ズ」
[U]唇を丸めて、強く長く息を吐き続けて出す「シ」
[3]唇を丸めて、力を抜いてゆっくり長く声を出し続ける「ジ」
[h] 喉の奥を狭めて息を擦らせて出す、声のない「ハー」
破擦音
[tf] 舌先を上歯茎のさらに上側に当て、息を止めてから、強く長く息を吐く。
[d3] 舌先を上歯茎のさらに上側に当て、息を止めてから、強く長く声を出す
[tr] 舌を反らして [tf] を発音する
[dr] 舌を反らして [dk] を発音する
流音
[i]舌先を上前歯の付け根に押し付け、息を舌の両側から出す
[r] 舌先を少し反らして、唇を丸めて声を出す
鼻音
[m]唇を閉じて鼻から声を出す
[n] 舌を上歯茎にしっかり当てて鼻から声を出す
[n] 舌の付け根で息を止めて鼻から声を出す
半母音
[j]母音の前に、細く長い「ユ」を付ける
[w] 唇を丸めて突き出し、声を出す

音声のダウンロード方法

本書の英語音声は、研究社のホームページ(http://www.kenkyusha.co.jp/) から、無料でダウンロードいただけます(MP3 データ)。以下の手順でダウン ロードしてください。
1) 研究社ホームページのトップページで「音声ダウンロード」をクリックして「音声データダウンロード書籍一覧」のページに移動してください。
2)移動したページの「イギリス英語発音教本」の紹介欄に「ダウンロード」 ボタンがあります。クリックしていただくと、ファイルのダウンロードか 始まります。
3)ダウンロード完了後、解凍してお使いください。本書の TRACK番号のアイコンの表示にしたがって、該当するフォルダ・番号の MP3 音声をお使いください。

ダウンロードアイコンの見方
ダウンロード音声のフォルダ一覧
フォルダ1 第1部音を学ぶ
フォルダ2 第2部 子音編
フォルダ3 第3部単語のつながり
フォルダ4タイトル、ナレーター情報

小川 直樹 (著)
出版社: 研究社 (2017/5/20)、出典:出版社HP