日本人のための英語学習法ーシンプルで効果的な70のコツ

 


 

日本人のための英語学習法-シンプルで効果的な力のコツ

本書は、日本人が英語とどのように向き合い、目標を達成するにはどのように学習すべきかをまとめた本です。心構えでは、英語に対する苦手意識を持たなくて良いことを示したり、学習法では、モチベーションを維持するための方法、音読の有効性、シャドーイングのやり方なども解説されています。また、文法の解説もされており、基本的な内容の振り返りなどに役立ちます。

目次

日本人は、英語にまつわる、さまざまな思い込み、妄想、俗説に惑わされています。そして、それらに縛られ、悩み、苦しみながら英語を学んでいます。英語学習といえば、いまや苦行と屈辱の代名詞です。そうした事態をなんとかしたい。そう思って本書を執筆しました。

はじめに
第1章 「自前の英語」を身につけよう 英語に対する「心がまえ」
01 あなたが「身につけたい英語」とは明確な目標をもつ
02 「目標」と学習法 学習を始める前に考えるべきこと
03 英語をどう捉えたらいいのか学ぶこと自体を目的にしない
04 どんな英語を身につけたらよいのか(1) 「自前の英語」を身につけよう
05 どんな英語を身につけたらよいのか(2) 関心のある分野に絞って学ぶ
06 どこから手をつけたらいいのか 「知識」がある内容から始める
07 究極のコミュニケーション英語とは 「自分にしか語れないもの」を語れ
08 英語の習得は簡単? 英語と日本語との「言語的距離」
09 「英語習得」にかかる時間 基本の習得には3,000時間必要
10 英語学習とどう向き合ったらいいのか 「トレーニング」することで身につく
11 学習の質を向上させるには 「質」と「量」の関係は相互依存
12 どうすれば学習を続けられるのかモチベーションを維持しよう

第2章 できる人がやっていること―「音読」と「読み書き」
13 「英語で考えろ」と言うけれど音読について1
14 英語が身につく学習法 「音読」について2
15 音読トレーニング法 音読について3
16 「シャドウイング」とは 音のデータベースを増やす
17 どんな辞書を使ったらよいか 「英和」「和英」「英英」を選ぶポイント
18 モチベーションが低下したら 「エッセイ」や「通俗小説」を読んでみよう
19 「多読」の習慣をつけるには 「多読の3原則」を守ろう
20 お勧めの本は? “勘どころ”は多く読まないと身につかない
21 どうやって英文をつくるのか 「英借文」をやってみよう
22 英文で日記を書いてみる 4行日記を書こう

第3章 コミュニケーション英語のために――「話す」と「聞く」のトレーニング
23 「日本人英語」でかまわない? 「つうじる英語」であればかまわない
24 難敵は「内気さ」 恥をかくことが上達への近道
25 「沈黙は金なり」? 日本人の美徳はまったく理解されない
26 単語が出てこない! 日本語をそのまま置き換えてもダメ
27 わたしたちに語れること 日本について説明してみよう
28 伝わる「発音」 聞いてわかれば、カナ発音でもOK
29 日本人に共通する発音の間違い 苦手な音をまずは把握しよう
30 英語の音は変化する? 韻律に着目してトレーニングを
31 シャワーのように英語を浴びる? 時間のムダです
32 「リスニング力」を伸ばすには 「精聴」と「音読」をくりかえす
33 「洋画」は英語学習に役立つか いろいろと問題のある教材

第4章話すために必要なこと――「語彙」と「文法」を身につけよう
34 基本の3,000語すら覚えられない! コア・ミーニングをつかむのが大切
35 目にした単語はすべて覚える? 自分に必要な単語をしっかり習得しよう
36 どうやって語彙を増やすか4つのコツで「使いたい単語」を覚える
37 単語の効率的な覚え方 おおまかに「語源」を知る
38 「接頭辞」と「接尾辞」 基本だけ押さえておこう
39 「文法」は必要か 避けてとおることはできない
40 何のための文法か 「文法のための文法」ではダメ
41 文法は徹底的にやったほうがいい? 英語は使いながら覚える
42 先生も頭を抱える文法問題 瑣末なことを問うても意味がない
43 どんな文法書がいいのか自分のレヴェルに合ったものを使おう

第5章文法の極意――「勘どころ」へのアプローチ
44 「語順」どおりに意味をとるには やはり「文法」が大事
45 「冠詞」の考え方 ちょっと違えば、意味が変わる
46 「数」に対する意識の違い 日本語とまったく違う
47 「可算名詞」と「不可算名詞」 使い分けるために知っておくべきこと
48 「わたしたちは……」をどう言う? 「人はだれでも」の“you”
49 「未来のことを語る表現」とは “Will”と“be going to”を使い分ける
50 使いこなしたい「進行形」 受ける印象がガラリと変わる
51 “would”と“could”の正体 丁寧な表現をマスターする
52 難敵「前置詞」に挑む コア・イメージをつかむ
53 否定疑問文で聞かれた場合 “Yes”か“NO”か
54 「行く」と「来る」の認識のずれ 日本人が勘違いしやすい“go”と“come”
55 「関係詞」の正体 日本語にはないもの
56 “excited”か“exciting”か 感情をあらわす分詞形容詞

第6章 社交する英語——「英語のマナー」と「日本文化」
57 排他性のある表現 何気なく使わないように
58 「紹介」をする? 「名前」もかならず添える
59 「オウム返し」が得意な日本人 英語では冷たい印象に?
60 会話の障害物になる「相づち」 英語ではほどほどに
61 「感謝」の度合い 状況によって表現を変えよう
62 英米人はいつもストレートに言う? 英語にも婉曲表現はある
63 日本人が誤解している「どうぞ」 「どうぞ」=“Please.”ではない
64 「難しい」の意味するところ、断わるときは、はっきりと
65 英語にも「敬語」はあるの? 日本語とのマナーの違い
66 いつも“Can I …?”でいい? 丁寧さのレヴェルに合わせて表現を変える
67 丁寧さの度合いが違う「依頼表現」 相手との関係を考えて使い分ける
68 「知ってる?」をどうあらわす? “know”を日本語の感覚で使わない
69 「カタカナ語」はつうじるか 英語とはぜんぜん違う
70 贈りものが好きな日本人贈答意識の違い

あとがき
参考文献
章扉イラスト=増子勇作(増子デザイン室)

里中 哲彦 (著)
出版社: 筑摩書房 (2019/11/6)、出典:出版社HP

はじめに

英語学習に王道はない

本書は、英語を学びなおし、「自前の英語」をつくっていきたいと真剣に思っている人のためのもので す。これまでいろいろな方法で英語にチャレンジしたけれど、何度も挫折してしまったという人にこそ、 読んでいただきたいと思っています。

日本人は、英語にまつわる、さまざまな思い込み、妄想、俗説に惑わされています。そして、それらに 縛られ、悩み、苦しみながら英語を学んでいます。英語学習といえば、いまや苦行と屈辱の代名詞です。

そうした事態をなんとかしたい。そう思って本書を執筆しました。世の中に蔓延する英語への誤解を払拭すると同時に、英語とどう向き合ったらいいのか、その心がまえについても論じてみたいと思っています。

かねてより筆者は、日本人の英語学習史に興味をもち、先人たちの英語学習からヒントを拾い集め、「究極の学習法」なるものを探ってきました。 しかし、残念ながら、英語学習には万人に通用する王道はない、という結論に達したのです。

英語学習は、複合的であり、段階的であり、個別的なものであって、よく目にする「ラクして身につく 学習法」や「奇跡のメソッド」は英会話教材の宣伝文句以外には存在しないとの確信をもつに至ったのです。

わたしたちは往々にして、自分にとって役に立つものが他人にも役立つものだと思い込む傾向がありま すが、多くの学習者と接するうち、一人ひとり習い方の適性も異なるのだということにも気づかされました。

また、「読む」「書く」という技能の上達を目標に掲げても、「話す」「聞く」ことを実践しなければ、英語特有の「統語法」「連語関係」「比喩」「押韻」に気づかず、よく読むこともできないのだということもわかりました。

とはいえ、「音読」や「多読」など、多くの人に効果が見られる学習法は確固として存在します。本書 では、そうした、ありふれているが効果的な学習法を紹介することにより、あなたの目的にかなった英語 をつくりあげるための手助けをしたいと考えています。

里中 哲彦 (著)
出版社: 筑摩書房 (2019/11/6)、出典:出版社HP

なぜ英語ができないのか

さて、わたしたちはどうして日本語ができるのでしょうか。日本人だからでしょうか。それとも、日本 で生まれ育ったからでしょうか。

いずれも違います。日本語をみっちり学習したからです。わたしたちは日本語のトレーニングを積んだ からこそ、日本語ができるようになったのです。

わたしたち日本人にとっては、日本語が話せることがあたりまえになってしまっているため、あたかも まったく学習せずに日本語を習得したかのような錯覚に陥ってしまいがちですが、そうではありません。

じっさい、聞くこと、話すことからはじまって、読み書きに至るまで、じつに多くの時間をわたしたち は日本語のトレーニングに費やしてきました。

たとえば、小学生のころにやった、あの面倒で退屈な漢字練習を思いだしてください。間違いなく、わ たしたちは、長時間、いや長期間に及んで日本語と向き合ってきたのです。こうした事実を忘れてはいけません。

英語学習もこれと同じです。だから、英語ができない理由など、じつに簡単に説明がつきます。 わたしたち日本人が英語が不得手なのは、英語という言語を身につけるための十全なトレーニングをやってこなかったからです。

では、なぜそうしたトレーニングに真剣に取り組まなかったのでしょうか。それは、英語を学ぶ「必要 性」や「切実な動機」を感じなかったからです。だから、身を入れて学ばなかったのです。本書では、日 本人と英語の関係を考察し、「英語とのあるべきつき合い方」を探っていくつもりです。

「日本人英語」でかまわない?

「英語が使えるようにならなければならない」と言ったとき、日本人の多くは英語を日本語と同じよう に使いこなしている状態をイメージしていますが、どれほど努力しようと、ネイティヴのようなリズムと 発音で英語を話すことはできません。 「望むと望まざるとにかかわらず、わたしたちがしゃべれば、「ああ、これはニッポン人だな」と相手に わかるような英語に落ち着くのです。そもそも日本で生まれ育った人が母語(日本語)以上の外国語能力 を身につけることはできないのです。 言語をトータルに獲得する能力は、生涯のある期間のみに機能するもので(「臨界期仮説」)、この期 間(一説には12~13歳の思春期ごろまでと言われますが、3~4歳、いや1歳までの時点だとする研究者も います)を過ぎると、その“魔法”は急激に衰えてしまい、それ以降、どんなに努力をしても母語話者のようにはなれないと言われています(Eric H. Lenneberg, Biological Foundations of Language参照)。

しかし、リーディング、ライティング、スピーキング、リスニングの専門家たちは、思いおもいの理想 像を描いて高度な能力の獲得を要求するため、結果として、学習者にネイティヴのようにはなれない屈辱 感を味わわせています。 はっきり言って、それら4技能における高い英語力が求められる日本人は全体の1割にも満たないでしょう。

その1割とは、各国との外交折 衝にあたる政府役人、仕事において高いレヴェルの交渉技術が求められるビジネスパースン、通訳者や翻訳家などのエキスパートたちです。残りの9割は、そのレヴェルを目指す必要はないし、そうなるようにと尻をたたく専門家のいうことに 耳を貸すこともないのです。

「日本人英語」でかまわないと腹をくくって、伝えたいことの内容に集中すればよいのです。さらに言うなら、「日本人英語」はけっこうつうじるのです。 手もとに、日本人大学生による英語が母語話者にどのくらいつうじるかを調べた研究者の実験報告があります。日本人学生がしゃべった言葉を文字として記録したものをアメリカ人に見せて、どのくらい理解できた のかを調べたのです。すると、79.2パーセントもの理解率を示したのです。また、カタカナ英語で読んだ 単語や文をアメリカ人に聞かせて、それを書き取ってもらう実験をおこなったところ、単語だけを読んだ 場合の理解率は41.6パーセントでしたが、文中に出てきた単語の場合の理解率は66.8パーセントへと大きく上昇したのです(末延岑生『ニホン英語は世界で通じる』)。

里中 哲彦 (著)
出版社: 筑摩書房 (2019/11/6)、出典:出版社HP