外資系金融の現場を見る!
外資系の金融機関で働いている人は英語を使う場面が非常に多いです。また、その中で使われる英語は専門的な英語が多いため、日常会話レベルの英語ができていても全く会話についていけないということがあります。本書は、外資系金融で使われる英語表現だけでなく金融経済の基礎知識も学ぶことができるので、外資系金融に勤めている方、転職を考えている方に非常におすすめです。
はじめに
「マイナス金利」という言葉が報道を賑わせています。「でも,金融や投 資って不可解でよくわからない・・・」と思っている方も多いのではないでしょうか。
私は、ゴールドマン・サックス,その他日米の投資銀行で働いてきました。現在はその経験を元に米国MBAで英語を教えています。
金融はもとより,「外資系金融なんてもっと不可解!」とアレルギー反応を示される方もいらっしゃるでしょう。本書では、外資系金融でよく使われる英語キーワードを挙げながら、「金融」や「経済」について体系的に理解 できるように心がけました。
読者は主に以下のような方々を想定しています。
外資系金融機関もしくはコンサルティングでの就職を希望する学生の方, もしくは転職したいと希望する現在就業中の方 ・IT業界で金融機関のシステムを担当している、もしくは今後担当する方。日本の(公的・民間)金融機関で,英語ができる少数精鋭人材になること を目標にしている方経営企画,海外IR,財務に携わる方もしくは目指す方
海外で起業している方、もしくは計画している方 CFA(米国証券アナリスト)受験生もしくは海外MBAを希望される方
日々の生活で目にするさまざまな社会問題,たとえば失業率,産業の国際化,財政赤字等は、すべて我々の「経済」活動から生み出されたものです。 同時にその経済活動は「金融」の後方支援によりさらに発展を遂げ,我々の 生活を向上させてきました。
一方で,生活向上のために有効に使うべき「金融」がマネーゲームの道具として、直近で言うサブプライムショックやヨーロッパ債務危機等を引き起こし,人々の格差を生んでしまうことにもなりました。
ただ, 「金融」は正しい方向にコントロールすることができれば人々の「経済」を豊かにすることができるのです。
相互補完の関係にある「金融」と「経済」が今後どのように共存していくか,現在再定義が求められています。そのためにも2つの関係を体系的に毎 解することはとても重要なことです。
それに応じて、「金融」や「経済」をグローバルで捉えることも重要になってきます。というのは、各産業ビジネス自体が日本国内だけに限ったもんのではなく,グローバルで展開することが当然になってきたからです。そこで求められるのが世界の共通語「英語」です。
「金融・経済に関する知識」×「英語」で、ビジネスパーソンとしてはワンランク上を目指せるはずです。
本書は,「実務ではどのように使われるのか?」がわかるように英語表現 事例を多数掲載しています。「金融」や「経済」に業務で関わる濃淡がある かもしれませんが,これら分野の英語を学ぶことは大変有意義なはずです。
読み物として楽しんでいただくとともに,デスクの上に置いて、巻末の索 引から調べる単語帳としてお使いいただければ嬉しいです。
最後に,本書の刊行にあたり、助言をくれた金融機関時代の仲間たち,密な英語校正をしてくれたニューヨーク・ロンドンの長年の友人たち,株式会社中央経済社の皆様とご担当の高橋氏にこの場を借りて厚く御礼上げます。
2016年夏
齋藤 浩史
目次
INDEX
はじめに
外資系金融パーソンに学ぶ英語力を向上させるヒント
PART1 投資銀行や投資家が関わる金融の世界
Pre – Lesson1_プライマリー市場とセカンダリー市場の全体像をつかもう!
Lesson プライマリーを取り巻くキーワード
1-1 Primary Market(発行市場
1-2 Offering Process (募集と売出し)
1-3 Disclosure(情報開示
1-4 Investors(投資家)
1-5 Equity Capital Market(株式資本市場)
1-6 Debt Capital Market(債券資本市場
1-7 Credit Rating(格付け)
1-8 Securitization
アナリストレポートの冒頭文を読んでみよう
Column 忘れられがちな発行市場
ローン・債券契約で使われる用語
日米で比較する重要な開示内容
ライブドアによる敵対的買収
海外発行体が出す楽しい債券名
サブプライムショックの責任はどこに?
Lesson2 セカンダリーを取り巻くキーワード
2-1 Secondary Market(流通市場)
2-2 Trading・Dealing(トレーディング・ディーリング
2-3 Securities Lending Market(証券貸借市場)
2-4 Money Market(短期金融市場
2-5 LIBOR(ロンドン銀行間取引)
2-6Yield curve(イールドカーブ)
2-7 Credit Spread(クレジットスプレッド)
2-8 Settlement
アナリストレポートの冒頭文を読んでみよう
Column リーマンの破たん
ITを利用したトレーディング
トレーダーが見る空売り戦略
金融危機を助長してしまった短期金融市場
リーマン破たんとイールドカーブ
ヘルシュタットリスク
Lesson3 投資戦略とヘッジを取り巻くキーワード
3-1 Risk(リスク)
3-2 Basic Hedging Methods (基本ヘッジ手法)
3-3 Market Risk(市場リスク)
3-4 Interest Rate Risk(金利リスク)
3-5 Currency Risk(為替リスク)
3-6 Credit Risk(信用リスク)
3-7 CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)
3-8 Liquiditity Risk(流動性リスク)
アナリストレポートの目頭文を読んでみよう
PART2 海外アナリストやエコノミストが重視する
経済データの世界
Pre – Lesson2 経済の全体像をつかもう!
Lesson4 GDPデータを取り巻くキーワード
4-1 GDP(国内総生産
4-2 Consumer Spending(個人消費)
4-3 Consumer Price Index(消費者物価指数)
4-4 GDP Deflator (GDPデフレーター)
4-5 PCE Price Index(個人消費支出物価指数)
4-6. Investment(投資支出)
4-7, Inventory(在庫)
4-8 Government Expenditure (EXIF )
4-9 Export and Import(輸出と輸入)
4-10 Foreign Exchange(外国為替
4-11 Current Account Balance ( 483)
4-12 Financial Account Balance (金融収支)
アナリストレポートの冒頭文を読んでみよう
Column 不公平を数字に直してみる
金への逃避
CPIやGDP deflator以外のインフレ指標とは
失われた20年
産業構造の変化
FFレートとLIBORの違いって?
円高と円安
政府の為替介入
なぜアメリカは借金大国なのに所得収支は黒字なのか?
Lesson5 経済政策を取り巻くキーワード
5-1 Monetary Policy(金融政策)
5-2 Flow of Funds Account(資金循環勘定)
5-3 Money Supply/Money Stock(マネーサプライ・マネーストック)
5-4 Macro-prudential Regulation(マクロプルーデンス規制)
5-5 Fiscal Policy(財政政策)
5-6 Primary Balance(プライマリーバランス)
アナリストレポートの冒頭文を読んでみよう
Column アベノミクスの成果
貸し渋り・貸し剥がし
大きすぎて潰せない!
Lesson6 雇用データを取り巻くキーワード
6-1 Population(人口
6-2 Unemployment Rate
6-3 Phillips Curve(フィリップス曲線
6-4 Labor productivity(労働生産性
アナリストレポートの冒頭文を読んでみよう
Column 日本が直面する子供を産める女性人口の減少
外資系金融パーソンに学ぶ英語力を向上させるヒント
欧米系の外資系金融には多くの英語が母国語でない人が働いています。むしろ, グローバル化が進んでいて英語が流暢であるか,英語がネイティブで あるかどうかなどはあまり気にされないくらいです。
正直なところ,伝わることが優先され,文法などの細部までこだわるような人はほとんどいません。ある程度の英語構造がわかっていれば,多少の間 違いはお互い気にしない、気にしていられないというのが普通です。発音についても同様で,伝わればよいという感覚です。
時間がない外資系金融パーソンにとって、文法を学んだり,発音を矯正するために英語学校に通ったり、というのはあまり効率的ではありません。 では、どのように勉強するのでしょうか? リーディング, リスニング, ライティング、スピーキングそれぞれの学習 法を紹介していきます。
リーディング
ビジネス英語に出てくる英語文章のパターンは限られています。本書では, 以下の3パターンで分類していきます。これに加えて書いた人の主張意見や推定など主観的なものもありますが、新聞のコラムなどにしか登場しないと 考えてよいでしょう。まずは客観的な事実を理解することが重要です。
状況説明
比較対照
原因結果
この3パターンに慣れることで,英語文章の要旨を早くつかむことができます。
リスニング
多くの日本人が苦労しているリスニングですが、日本語でも相手の言うことがわからないときもあるぐらいですから悩む必要はありません。ただ,相 手が今どういうことを話しているか,なんとなくでもわかるように、いくつかのキーワードを知っておくと便利でしょう。たとえば,以下のような表現が出てきた時には注意が必要です。
1 結論などを話そうとしているとき
As a result, Consequently, Therefore, Hence
2 何かを比較しているとき,もしくは例を挙げているとき
By contrast, Neverthelss, In such cases, In fact, As a matter of fact
3 言い換えをしているとき
In another word, In that sense
4 追加の話をしようとしているとき
In addition, furthermore, moreover
5 どのような順番で話されているかを知るとき
First of all, next, finally
これだけですべてが理解できるとまでは言えませんが,聞く際にすべての 「話に全力で耳を傾ける必要はありません。疲れてしまいますから。
ライティング
英語を頻繁に使うビジネスマンは「日常会話よりビジネス英語のほうが簡単」と口を揃えて言います。日常会話は自分の土俵以外の話が出てくるため, ついていけないことが多々あるからです。
しかし、ビジネス英語において話の内容が自分の土俵外,ということはあり得ません。相手を自分の土俵に引きずりこむくらいの覚悟が必要で,きっちりと自分の話をまとめていくことが大事です。
私は企業や学校でビジネス英語ライティングを教えています。ライティングの練習は自分の考えを自然にまとめてくれます。そしてそのライブの内容は自分の話す言葉になっていくと生徒に伝えています。手元に持たずに流暢にスピーチすることは日本語でも難しいのです。なおさらです。
単語や言い回しを調べながら、繰り返しライティングをすることで多くの成果物が残ります。人は不思議なことに他人の文章は忘れても、文章はよく覚えているものです。この人間の記憶特性を生かすことができるならば,ライティングの練習によって,ビジネスで評価されるスピーキングの能力が向上していくはずです。
つまり,外資系金融パーソンにとってライティングが最も重要な学習といっても過言ではないでしょう。
スピーキング
いざ,自分のメッセージを発信しようとして,日本人の多くが困るのが数字やグラフの表現です。金融機関でなくとも,ビジネスにおいては数字やグラフが頻繁に出てきますが,英語学習においてはおざなりにしがちだからです。たとえば以下のようなグラフを説明するときには決まって使われる表現 というものがあります。
では次の2つのポートフォリオの特徴はどのようなものでしょう か? ポートフォリオAは徐々に(堅調に)上がっていますが,時折跳ね上がったり下がったりしています。ポートフォリオBは,急上昇したり急降下したり激しく変動しています。
こんな表現が使われる
ポートフォリオA
・increase, rise, grow(上昇する)
・increasingly, slowly, gradually(徐々に)
・firmly, constantly, steadily, solidly(堅調に)
・sudden jump.spike(短期的に跳ね上がる)
・dip(短期的に下がって戻る) ポートフォリオB |
・soar, skyrocket, surge, hike, shoot up(急上昇している)
・high volative, wide-swing(変動が激しい)
・plummet, plunge(急に下落している)
続いて、別のタイプのポートフォリオについて表現してみましょう。ポートフォリオCは、顕著に下がっていて,下落トレンドです,反対に ポートフォリオDは安定しています。
ポートフォリオC
・ decrease, decline, fall, drop (TXT3)
・notably, remarkably, significantly(顕著に)
・ intensively, enormously, dramatically, tremendously
ポートフォリオD
・stabilize(安定している)
・move sideways, remain unchanged, level out, keep stable(横ばいに推移)