IELTSスピーキング完全対策

① 30秒完全論破術② 鉄則テンプレと雑談力③ 評価基準から逆算攻略

リーディング、リスニング、ライティング、スピーキング、この中で日本人が最も苦手としているとされるのがスピーキングです。本書は、そのスピーキング分野に特化した参考書です。テンプレートを学び雑談力を鍛え、短文練習から長文練習へステップアップする方式が特徴の、スピーキング技術を伸ばすのにおすすめの一冊です。

スピーキングに特化したIELTSのための対策本ですので、短文から始まり、段階を踏んだトレーニングをすることができます。スピーキングが苦手な方でも、スコアアップにつながる実力を養うことができるでしょう。

はじめに

本書を手に取ってくださった読者の皆様は IELTSの存在を知り、 JELTSの受験を考え、またIELTSによるプレッシャーを抱えている英語学習者ではないでしょうか? 私も数年前にIELTSと出逢い、 IELTS を受験し、IELTSの緊張感と戦ってきた英語学習者の一人です。IELTSのことしか考えられない日々を送ったことを思い出します。

International English Language Testing System, FT IELTS IX FL と同い年の1989年生まれ、世界で年間300万人が受験する世界基準 のテストです。日本では 2010年の日本英語検定協会とブリティッ シュ・カウンシルとの共同運営開始以降、年々受験者数が増加し、過 去10年間で5倍以上に膨れ上がっています。これまで日本では 国産の英語試験が人気でしたが、グローバル化により世界と密接に繋がり言語のボーダーが薄くなってきた日本でもついに世界基準が認められてきたわけです。実は今までにIELTS が導入された140カ国以上の国々で受験者数が減少した国は存在しません。世界基準の英語試験として認められる理由は数多くありますが、何よりも良質で幅広いコンテンツを通して、受験者の能力(4技能)を正確に測る試験である ことが最大の理由です。IELTSは世に出るまで2年の試行期間を経て 私たち受験者の元へ届きます。そんな世界基準の英語試験で高得点を 取ることが世界で戦うための最強の武器となります。

私が初めて受験したのは 2011年。「IELTS」という言葉の読み方さ えもわからなかったこと、そして初めてIELTSを受験したときの衝撃 を今でも鮮明に覚えています。スピーキングテストで個室に連れてか れるところまでは想定内ではありましたが、極端に綺麗で上品なイギ リス英語と本場の雰囲気を醸し出した立ち振舞いから、試験官が本当 のプロフェッショナルであることを感じました。

How do people in your country feel about birds?

「あなたの国の人々は鳥についてどう感じますか?」
今その時の状況を思い返すと打つ手がなく立ち尽くす様子の1am totally screwed. という表現がピッタリです。試験官の目を見つめ、 しどろもどろしているうちに次の質問に移ってしまい、そこからさら に複雑で予想外の質問が飛び交い呆然としたまま14分が過ぎていき ました。こんなに自分を困らせたテストは初めてです。そこから私の TELISの旅が始まります。海外大学院の進学を目指し1年間の月日を TELTS対策に費やし様々な方法で自分の英語力向上を試みました。約 1年後の受験で尋ねられた質問はこちらです。

What do you think about music education in your country?

この質問に対して事前に準備していたテンプレートと音楽に関する 背景知識を駆使し回答しました。

In my humble opinion, music education plays a pivotal role in fostering students’ creativity and collaborative learning skills. In schools in Japan, children usually sing in choruses as a compulsory component of their early education. And music definitely provides the outlet for emotion. Emotional intelligence is not a subject typically stressed in our educational system, but this is an adequate stand-in for allowing children to express their inner selves. On a slightly different note, the word muse originates from the ancient Greek word musike, which refers to any art ruled by Zeus’s nine daughters who protected the arts. Music was something people enjoyed watching. You can easily imagine museum, musical or amusement have the common roots as the word music.

そして結果はスピーキング8.5でした。対求は紛れもなく戦略的。 ありオフトピック(IELTSのトピックにない)のものには対応でき、英語力ではありませんでしたが、世界へ羽はたくための素地が完 成し、約1年で6.0から8.5までスコアを伸ばすことができました。またその3年後にイギリスで受験したIELTSでもスピーキング8.5、そしてリスニングは9.0満点を獲得しました。その後、ロンドン大学 院(University College London)にて応用言語学修士課程を修了し、現在はIELTSで苦しむ受験者を一人でも減らすべく情報発信や執筆を続けています。本書が皆さんのIELTS スコア向上の手助けとなり、皆さんが望む世界で好きなことを追求できることを切に願っています。

  嶋津幸樹

嶋津幸樹 (著)
出版社: ディーエイチシー (2020/3/16)、出典:出版社HP

Shimazu式スピーキング戦略法

ここまでスコアを飛躍させたIELTS スピーキング高得点獲得のための3つの鉄則をここで皆様に伝授できれば幸いです。

① 30秒完全論破術
② 鉄則テンプレと雑談力
③ 評価基準から逆算攻略

① 30秒完全論破術
IELTS スピーキングは英会話ではありません。与えられたテーマに対して瞬時に文章を組み立て、その中には一貫性や創造性を組み込む必要があります。そして相手が「確かに」と頷いてしまうようなロジックと表現で圧倒することが重要です。端的に的確に自分の言いたいことを伝え口説き落とす方法であるエレベーターピッチをイメージしていただくとわかりやすいかもしれません。大事な営業 先や、ましてや投資家や芸能人などにエレベーターで遭遇したときに自分の想いを即座に伝えることと、IELTSスピーキングで自分の意見を展開することは紙一重です。簡潔に早口で30秒で想いを伝えるためのストラテジーは15秒ブレインストーミング (ブレスト)、30秒論破破です。15秒で思考しブレスト、つまり嵐のように頭の中でアイデアを出す練習をしましょう。

② 鉄則テンプレと雑談力
テンプレとはテンプレートの省略形でIELTSのスピーキングとライティングでは欠かせない要素の一つです。それも絶対的に有効なテンプレをインプットして自分で処理をしてからアウトプットすることが 大切です。コーパス言語学の発達でビッグデータから頻度の高い表現 等を学べる時代になりました。鉄則テンプレを感覚で集めるのではなくデータに基づいて自分だけのテンプレデータベースを作ることができます。
次に雑談力ですが、ここでは雑学や背景知識を自分の経験を含めて展開させる能力のことを指します。話を展開させるための特定の知識 をIELTSの出題テーマに合わせて準備していきます。この質問をされたらこの雑談をしようと事前に決めておきます。その雑談の中には自分が得意とする英語表現や発音に自信がある低頻出語彙を多用します。

③ 評価基準から逆算攻略
IELTSスピーキングでは試験官が流暢さと一貫性(Fluency and Coherence)、語彙力(Lexical Resource)、文法の知識の幅と正確さ (Grammatical Range and Accuracy)、発音(Pronunciation)の4つの評価基準で受験者の英語力を評価します。

ヨーロッパ言語共通参照枠(Common European Framework of for Languages:CEFR)は学習者の言語連用能力を客観的に評価するための国際指標です。IELTSのスコアを他の英語試験と比較しときにもA1 から C2 までの6段階の指標が使われます。IELTS学習者の達成目標を「○○することができる」と指標化したCan-doリストを使い、受験者を客観的に評価します。4つの評価基準ごとに細かいCan-doリスト、通称IELTS Speaking Band Descriptors が作成され ています。それでは海外有名大学院への入学に必要とされる IELTS7.0 のBand Descriptors を見てみましょう。

4つの評価基準

ここでは4つの評価基準で気をつけることを確認していきましょう。

●流暢さと一貫性(Fluency and Coherence)
英語をどれほど流暢に、どれほどの分量を、どのように考えをまとめられるか、そして何よりも重要なことに、不自然な間を作ったり同じことを繰り返したり言い間違えてそれを直したりするかを試験官は注意深く観察しています。単語や文章の繋がりが自然であるか、伝えたい内容が首尾一貫しているかを意識しながらスムーズに話す練習をしましょう。

●語彙力(Lexical Resource)
語彙を適材適所で使用しているか、質問に関連した語彙を使用しているかなどが判断基準です。また程よくパラフレーズ(言い換え)を駆使して表現にバラエティーをもたせて、ネイティブスピーカーが実 際に使うような自然な表現を使用して高頻出語彙だけでなく低頻出語彙*も使用しているかを評価されます。7.0以上を狙う場 合には最低でも1文に1語は低頻出語彙を使うようにしましょう。
*低頻出語彙とは基本語彙2000以上の語彙

●文法の知識の幅と正確さ (Grammatical Range and Accuracy)
ライティングでは複雑な文章や構文を使うことで高得点を狙えますが、スピーキングは必ずしもそうとは限りません。複雑さよりも文章の正確さ、使用する文法の多様さ重視で対策することをおすすめします。そのためにWarming upで紹介するIELTS基本例文200を繰り返しましょう。

●発音(Pronunciation)
用代は英語を母語として話す人の数よりも外国語として英語を学ぶ 人の数のほうが多い時代であり、世界共通語としてのWorld Englishes やLingua Francaという言葉も生まれています。Nativelikeness(ネイティブらしさ)を目指すのではなくIntelligible English(明瞭で理解できる英語)を目指して口の筋トレに励みましょう。

内容に関する評価基準がないので、どんな内容でも上記4つの項目が満たされていればスコアに影響ないと言う指導者もいます。しかし複数の現役IELTS試験官へのインタビューを通して分かったのは、人間が試験官を務める以上100%の客観的アセスメントは不可能である ということです。英語力を測ることだけに特化した音声認識の機械が評価する場合はどのような内容であっても高得点を獲得できる可能性 はありますが、対人間でのスピーキングテストでは多少なりとも主観 的な評価が入ってしまうのです。私自身の受験経験からも8.5を獲得したときには内容も、それに付随する英語表現も、そして首尾一貫した構成も表現できたと自負しています。内容も英語力も同時進行で磨いていきましょう。

Fake it until you make it.
最後にこの戦略法を実践する上で皆さんにお伝えしたいのは、でっち上げる能力もある程度必要であるということです。そして事実関係における正確さよりも自然な英語でリスポンスすることのほうが大切です。また人格も日本のローカルでの立ち振舞いからグローバルセルフ (国際基準の自分)に切り替えます。私がイギリスで受験したときは生まれも育ちもイギリスであるかのような雰囲気を出して自信満々に自分 の意見を展開しました。当時の受験会場には多国籍・他宗教で母語での 会話が飛び交っていましたが、私は直前まで英国人になりきって行動していました。そしてこの時もイギリスでスピーキング8.5を獲得しています。Fake it till you make it.つまり、まずはなりたい自分を想像して、そこに少しでも近づくために自分自身で、でっち上げてみましょう。

3つの具体的な対策法

●英単語学習
IELTS スピーキングでは見て聞いてわかる受動語彙ではなく、 理解した上で適切なコンテクストで発話するための発表面 す。基本語彙を自然に使えるようになることはもちろんですが、低頻出語彙を用いることが高得点に繋がります。そのためにはたくさん聞いてたくさん話すだけではなく、明示的で意図的な学習が効果的です。実際の場面で使用されたコロケーションや表現を書き留め、自分の口から自然に出てくるようになるまで練習をしましょう。

●基本例文 200の暗唱
IELTSに特化した基本例文200はIELTS6.0以下の学習者におすすめします。
学びの主人公は皆さんです。そして英語は自己中心的な言語です。 まずは基本例文200で自分が主語となる文章を繰り返しましょう。基 本例文は IELTS 特化型のため、質問するときの表現や未来の話は極力 避けています。実際にIELTSでの使用を想定して厳選しましたので、瞬時に日本語から英語へ言い換えができるようになります。

●アウトプット
From morning to night というアクティビティは1分間で自分が朝起きてから寝るまでを表現するものです。英会話教室などでよく用いられるものですが、これは独り言でも実践でき、一日の振り返りとしても有効です。また金銭的に余裕があれば、強制的に発話をする環境が作れるスカイプ英会話もおすすめです。IELTSスピーキングでは英会話とは異なり、戦略的な疑似会話が求められます。毎日継続して話す環境を作ることが重要です。

ほか3技能の対策法はこの他にも数多く存在しますが、まずはこの3つを徹底することで着実に IELTS スピーキングのスコアを伸ばしていきましょう。

嶋津幸樹 (著)
出版社: ディーエイチシー (2020/3/16)、出典:出版社HP