いよいよ勉強スタート! その前に一番大事なのは?
今回からTOEIC®で600点を取るためには、具体的に「どのように勉強すればいいのか」を中心に紹介します。まず、TOEIC® L&Rテストに求められる技能は、「リーディング(読む)」と「リスニング(聞く)」なわけですが、いきなり問題集を買い込んで解き始めるのがいいと思いますか? 私の答えは「ノー」です。たしかに問題演習は大事ですが、まずは自分自身が問題演習をするのに適したレベルに達しているかをチェックしなければなりません。
では、何をチェックすべきなのかというと、基本的な「語彙力」と「文法力」があるかを見極めます。考えてみれば当たり前ですが、基本的な単語や文法は算数でいう九九のようなもの。九九を知らずして掛け算・割り算を行うのは極めて困難なように、最低限の単語や文法を知らずして勉強を進めていくのは非効率なのです。図1が示すとおり、まずは4技能全ての基盤とも言える「単語」と「文法」を抑えましょう。
まずは任意の単語帳を準備しますが、私がオススメするのはスコアのレベル別に分かれている朝日新聞出版社の『TOEIC L&R TEST 出る単特急 金のフレーズ』です。単語を覚える上で最初にやることは単語帳の索引をコピーすることです。そして、600点を目指しているのであれば、600点レベルまでの単語をひたすらマークします。このとき、迷うことなく瞬時に日本語の意味が分かる単語のみをマークします。一通りチェックを終えたら、「知っている語彙数÷600点レベルの総単語数×100=認識率」の計算式に数字を代入します。
認識率が80%以上ならば、残りの20%の単語を覚えつつ次のステップに進めても良いと思います。逆に、TOEICを受ける上でベースとなるレベルの単語が2割以上分からないとなると、恐らく文章を読んでいても1文につき2~3語は分からないのではないでしょうか。そうすると、「あ、この単語分からないな。調べないと!」といちいち学習がストップしてしまいます。これでは効率が悪いので、まずは必要最低限の単語を先手必勝で覚えてしまう必要があるのです。
単語の覚える方法は反復すること
それでは、単語の覚え方に入りましょう。といっても、「なかなか単語が覚えられない」というのは英語学習者ならば誰もが通る道です。そこで個々人がいろいろ工夫するわけですが、あなたはどのように単語を覚えていますか? よくありがちなのが紙とペンを用意して、1単語・10回ずつ紙に書きながら覚えるというような覚え方です。私はこの方法はおすすめしません。
なぜなら、TOEIC® L&Rテストにおいて自分で単語を書くことはありませんし、私自身中学生の頃に書いて覚えるという方法で単語を覚えようと試みましたが、いつしか「書く事」が目的になってしまい、肝心の意味がほとんど覚えられなかったという実体験があるからです。では、どう覚えるか、そのキーワードは「反復」と「大量」と「刷り込み」の3点です。
もし、400語の単語を1週間で覚える必要があるという状況で、あなたは次のどちらの方法をとりますか? ひとつは毎日400語を覚える方法(以下、方法A)。もうひとつは新出単語を60語ずつ覚え、2日目以降は前日の60語を復習もする方法です(以下、方法B)。この2択の場合、私なら断然のAの方法を勧めます。Aの方法であれば、毎日400語を覚えることにより7日間で7回同じ単語を目にすることになります。
一方、Bの方法は、翌日こそ前日の単語を振り返りますが、次にその単語を目にするのは6日後になってしまうため、せっかく覚えた単語を忘れてしまうと考えられます。英単語は“毎日”目にするからこそ、脳内に単語が刷り込まれていくわけです。ですから、新しい単語を覚える際には、一定期間、毎日同じ単語を目にするという反復が大事になります。また経験上、1日に数語ずつチマチマ覚えるよりも、一度に100語単位でリズミカルに覚えた方が定着する気がします。
こんな事を言うと、1日に100語も覚えられませんという声が聞こえてきそうですが、1回で全て完璧に覚えるわけではなく、何周も繰り返すことによって定着させるので、最初はできなくて当然です。また、最終的に一瞬で意味が思い浮かぶレベルを目指すため、1単語あたり2〜3秒で覚えようとするのがコツです。そのため100語取り組んだとしても、せいぜい5分程度と短時間なので、スキマ時間で終わらせられます。
単語を覚えるとき、私はアプリのリスニングの機能使って、視覚と聴覚で単語の発音を認識する方法や歩き回りながらブツブツと単語を唱えるという方法など五感を駆使しつつ、ボキャビルを一時期インテンシブに行いました。その結果、英検1級レベルのハイレベルな語彙2,100語を2週間という短時間で認識語彙へとインプットできました。
単語を覚える上で重要なのは記憶力のよさではありません。地味で単調な作業ですが、地道に単語を覚る努力をするかしないかです。もし、あなたがTOEIC® L&Rテストで600点を取りたいのならば、単語を覚えるという作業は避けては通れません。最初は辛いですが、毎日コツコツ覚えることで力となってくれるでしょう。
まずは速読よりも正確に読めるか
単語と並んで英語の基礎知識として必須である文法の覚え方を話しましょう。単語がわかっても基本的な文法がわからなければ、正確に読解できる保証はありません。試しに次の2文を正確に解釈できるか試してみてください。
【1】I found this book easy.
【2】I found this book easily.
単語は中学2年生なら知っている単語です。つまり、この文が正確に解釈できないならば、語彙力の問題ではないということ。よく、フィーリングで単語の意味を繋ぎ合わせて読めればいいという人もいますが、それでは正確な読解ができずスコアは伸び悩むこと必至です。上述の文を以下のように訳すことができましたか。
【1】私はこの本が簡単だと分かった(SVOCの第5文型)。
【2】私はこの本を簡単に見つけた(SVOの第3文型)。
単語としては「easy」か「easily」の違いだけですが、それぞれの単語の品詞が異なるので、文中での役割も変わり、全体の文意が大きく変わってしまうのです。しかし、何も文法といっても、大学入試のような重箱の隅を突くレベルの文法を勉強する必要はありません。あくまでも、英語を構造的に捉えた必要最低限のルールを学べばよいのです。この種の参考書はTOEIC®向けの参考書よりも、高校生向けの参考書の方がリーズナブル且つ質が高いので、書籍を購入する際は参考にしてください。例えば、『英文読解入門基本はここだ!』(代々木ライブラリー)のような英文解釈のベーシックな参考書を1週間で2~3周して、徹底的に読解のルールを身につけましょう。
最後に、「TOEIC®のリーディングは最後まで解き終わらない」という読解スピードの問題が挙げられますが、600点を目指す人にとって読解スピードまで気にしている余裕はありませんし、そもそも最後まで解き切れなくても達することができます。
そのため、むやみに速く読むことを意識することで返り読みをしてしまうのではなく、正確に文意を解釈することこそ、初心者が取り組むべき課題です。まずは、地に足をつけて自分の英文読解の力を見直してみましょう。
1987年生まれ、愛知県出身。留学はおろか旅行ですら海外渡航歴のない英語学習者。大学で英米文学を専攻したが、学生時代は特に英語が得意というわけではなかった。一時は英語が嫌いになるが、社会人になってから本腰を入れて英語学習を始め、6年間でTOEIC®910点や英検1級を取得。紆余曲折を経て蓄積した自身の経験に基づいた勉強法をブログやSNSにて公開中。