英語は楽しく使うもの<2020 完全版>無料サイトを活用する最新英語習得法

 


 

無料英語サイトを最大限に活用!

本書は、世界中のサイトから英語の学習に役立つサイトを選び、解説をしながら、紹介しています。リスニング、リーディング、スピーキング、ライティングのそれぞれの能力を上げるためのポイントを解説し、具体的におすすめしているサイトを挙げています。楽しく英語を学ぶことに重点を置き、楽しむためのコツをまとめています。

目次

CONTENTS
ご利用ガイド
0. はじめに――英語は楽しく使うもの
a. なぜ英語が苦手だったのか
b. 激変した言語状況
c. 英語を楽しく使えない?

1. INPUT
1-1. Input の仕組み
1-2. Listening の力をつけよう
a. なぜ聞き取れないの?
b. どうすれば聞き取れるようになるの?
1-3. Listening が楽しめるサイト
a. 世界のニュースを聞こう
b. 日本のニュースを聞こう
c. 映像を楽しもう
d. 海外ドラマを楽しもう
e. 映画を楽しもう
f. 物語を楽しもう
g. 歌を楽しもう
h. ドキュメンタリーを楽しもう
i. 海外の大学の講義を楽しもう
j. 興味・関心のあるテーマについて英語を聞こう
k. スキマ時間に podcast を楽しもう
l. VR を楽しもう
1-4. Reading の力をつけよう
a. ウェブページはこうして読もう
b. 語句はこうして覚えよう
1-5. Reading が楽しめるサイト
a. 楽しく読めるサイトをさがそう
b. 世界のニュースを読もう
c. 日本のニュースを読もう
d. 本・雑誌を読もう
e.文学作品を読もう
f. 名言・格言を味わおう
g. 興味・感心のあるテーマについて読もう
h. ディスプレイ上で辞書を引こう
i. 自動翻訳して情報をやり取りしよう

2. INPUT から OUTPUT
2-1. 決め手は Output!
2-2. 心が動いたを表現を覚えてしまおう
2-3. 覚えた表現の記録を工夫しよう
a. キーワードで
b. イラストで
2-4. 覚えた表現をすぐに使ってみよう

3. OUTPUT
3-1. Output の仕組み
3-2. Speaking の力をつけよう
a. なぜしゃべれないの?
b. どうすればしゃべれるようになるの?
3-3. Speaking が楽しめるサイト
a. セキュリティーとネチケット
b. チャット特有の表現
c. チャットができるサイト
3-4. Writing の力をつけよう
英文を書くための能力とは?
3-5. Writing が楽しめるサイト
a. メール友達を見つけて、メールのやり取りを楽しもう
b. 英語でブログや SNS などを始めよう
c. グリーティングカードを送ろう

4. 英語「楽」習
4-1. 英語学習が楽しめるサイト
a. 定期的に楽しく学習しよう
b. 楽しく発音練習をしよう
c. 英語を聞いて楽しく学習しよう
d. 英文法を楽しく学ぼう
e. 楽しく語いを増やそう
f. 英語でいろいろなことをして楽しもう
g. 大人としての英語を楽しく身につけよう
4-2. 子どもにも英語を楽しく使わせよう
4-3. 英語の先生もネットを楽しく活用しよう
a. 英語で授業をしよう
b. 授業でICTを活用しよう
c. 社会問題に関心を持たせよう
d. Critical Thinking の能力を育てよう
e. 国際協働学習に参加させよう
f. 教師としての専門性を高めよう

5. 英語を楽しく使いこなそう

引用・参考文献
著者プロフィール

松本 青也 (著)
出版社: 朝日出版社 (2019/12/20)、出典:出版社HP

ご利用ガイド

・本書で紹介するサイトは、数点を除いて、すべて無料で利用できるものです。

・サイトは、原則として説明も内容も、すべて英語だけのものを選びました。その理由は、日本語を介在しないで、英語の音と意味を直結する脳のネットワークを、なるべく自然に、早く、たくさん作ることで効率的に英語をものにするためです。日本語で説明してあった方が分かりやすいかもしれませんが、それではいつまでたっても英語の難しさは解消しません。最初は説明の英語が難しくても、あれこれ考えて試しているうちに、だんだん英語に慣れてきて難しく感じなくなります。それが最も効率的な英語の習得方法なのです。

・サイト名をクリックすれば直接そのサイトにアクセスできます。ただし、スマホのアプリとポッドキャストについては、それぞれの検索ボックスにタイトル名を入力してください。

・サイトの内容は PC からアクセスした場合のブラウザ版を前提としており、もちろんスマホからもアクセスできます。ただ、画面サイズの違いから、多くのサイトは、スマホからアクセスすると、自動 的に画面や機能を簡略化したスマホ版専用のサイトに振り分けます。

・サイト名の右側の〈 〉内にある URL は、手で入力する場合のためのもので、最初の http://と、場合によっては www.なども省略してありますが、Internet Explorer (IE) や Google Chrome などのアドレス欄にそのまま入力すれば、自動的に追加されて表示されます。

・スマホ専用のアプリについては URL は付けず、(アプリ)と付記しておきました。

・ポッドキャストのタイトルについても、URL は付けず、(Podcast)と付記しておきました。

・ウェブサイトや教材の対象レベルは、次のような記号で示してあります。

■□□□ =小学生・中学生向き
□■□□ =高校生向き
□□■□ =大学生向き
□□□■=仕事で英語を使う社会人向き
なお、■印が複数個ある場合には、対象レベルが複数にまたがっていることを意味します。
例:■■□□=小学生・中学生・高校生向き
□■■□=高校生・大学生向き
□□■■=大学生・仕事で英語を使う社会人向き

・英語では、放送・映画・劇などの台本は script と言い、書き写したもの、つまり音声を後で文字化したものは transcript と言いますが、ここではどちらの場合も統一して短く「スクリプト」としました。

・ウェブサイトの内容は、別の年月が明記されていない限り、2019年8~11月現在のものです。

・紹介した会社名、製品名などは、各社の商標、登録商標です。

松本 青也 (著)
出版社: 朝日出版社 (2019/12/20)、出典:出版社HP

はじめに

0. はじめに――英語は楽しく使うもの
英語を使えるようになるのは、簡単なことです。毎日英語を使えばいいのです。使っていれば、必ず使えるようになります。では、毎日英語を使うにはどうすればいいのでしょうか。これも簡単なことです。楽しく英語が使える方法を見つければいいのです。楽しいことなら、毎日続けられるからです。でも、ついこの間までは、それは難しいことでした。留学でもしない限り、毎日楽しく英語を使うことなど無理な話でした。しかし今は違います。誰でも、どんなところに住んでいても、インターネットにさえ接続していれば、無料で毎日楽しく英語が使えるようになったのです。

たとえば、朝のコーヒーを飲みながら、スマホのアプリ the Japan Times で最新のニュースに目を通 します。通学や通勤の間には、スマホの podcast にダウンロードしてあるお好みの番組をイヤホンで楽しみます。家に帰ってから PC でメールをチェック、オーストラリアのメル友に返事を書いてから、英語サイトをあちこち楽しみます。CNNのOpinion and Analysis にある記事を読んでいて、なるほどと感心した意見を英語でなんとか言えるようにしてから、ディスプレイ上の表現集に加えていると、先ほどの友達が Skype で呼びかけてきて、早速その話題で話が弾みます。

こんな風に、英語は今や楽しめるもの、使えるものになりました。こんな調子で毎日英語を楽しんで使っていれば、必ず使えるようになるのです。

この本は、英語が使えるようになりたいと思っているすべての人たちを対象に、ほとんど無料で英語を「楽しく使う」最新の画期的な方法を、詳しく具体的に紹介するために書かれました。

a. なぜ英語が苦手だったのか
日本人はどうしてこんなに英語が苦手なのでしょうか。TOEFL® TESTの点数がアジアの中でも最下位グループに入るとか、英文科を出ていても英語で電話を取り次ぐことすら満足にできないとか、今どきの若者なら英語を何年も学んだはずなのに、実際には簡単な道案内もできないとか、耳にするのは悪い話ばかりです。そこで、英語の先生たちは一体何をしていたのかと、非難の矛先が今までの英語教育に向けられがちなのですが、本当にそうでしょうか。

私はそうは思いません。英語が苦手な原因は、英語教育ではなく、主に次のような今までの日本の言語状況だったのです。

1 日常生活で英語を使う機会が全くなかった

習った英語を実際に使おうとしても、話す相手もいなければ、手紙を出す相手もいませんでした。昭和の時代には、英語を聞こうとしても、はっきり聞こえるのはラジオやテレビの英語教育番組とかテープやCDの教材だけでした。それ以外には、波の音のような雑音のために周期的に聞こえなくなる短波放送しかありませんでした。海外からの放送なので、海を渡るときに波の音が入るのだろうかと真顔で聞いてきた友達がいたくらいです。

先輩の中には、朝から懐中電灯とお弁当持参で映画館に出かけ、映画雑誌のセリフを懐中電灯で照らしながら一日中聞き取り練習をするマニアックな人もいました。私自身はといえば、大学に入ってすぐ、会話力をつけたくて ESS (English Speaking Society)が練習をしている教室に行ってみたのですが、迎えてくれたキャプテンが「松本君、僕たちはねえ、喫茶店に入ってもお互いに英語で話すんだよ」と言ったのです。その様子を想像して、気持ち悪くなって二度と顔を出しませんでした。その頃に会話力をつけた人は、よほど不自然な努力を重ねた人なのです。

2 英語などできなくても豊かな暮らしができた

英語を勉強したのは入試のためで、読む力や文法知識さえあれば十分でした。それ以上の会話能力などは全く不必要でした。立派に仕事をしているお父さんでも、社長さんでも、医者や弁護士でも、総理大臣でも、英語がペラペラ話せる人などほとんどいなかったので、誰も本気になって英語力をつけようなどとは思いませんでした。英語など別に必要ではない、という多くの実例に囲まれながら、それでも毎日英会話などを練習するのは、ほんの一握りの英語ファンの人たちだけでした。「大国と言われている国で外国語がうまい国などひとつもない。外国語ができないということは、日本が大国である証拠だ」などと言っていられたのです。

ちなみに最初に話題にした TOEFL というテストで、いつもアジアで最高点を競っているのは、シンガポールとかインドとかフィリピンなどですが、これらの国はすべて昔英国や米国の植民地で、英語が公用語として長い間使われてきたため、上流階級では英語をうまく使えることが常識で、英語が使えないといい仕事に就くことはできません。受験のためではなく、豊かな暮らしをするために、実際に英語 を使う必要があるのです。

3 日本人にとって、英語は最も習得が難しい言語のひとつである

言語を家族にたとえてみると、英語はゲルマン語一家の子どもで、兄弟にはドイツ語やオランダ語がいます。そのゲルマン語一家の兄弟分にあたるイタリック語一家には、ラテン語を親とするフランス語、スペイン語、イタリア語などの子どもがいて、これらの言語は英語のいとこに当たります。そしてこの両家の祖先は原インド・ヨーロッパ語一家なので、他の親戚にあたるロシア語、ペルシア語、ヒンディー語なども含めて、総称して「インド・ヨーロッパ語族」と呼びます。ところが日本語は、韓国・ 朝鮮語と似ているところはありますが、他の言語と親族であると考えられるような類似点はほとんどなく、祖先もまだはっきり分かっていません。

親族関係が近ければ近いほど言語は似ていますので、英語を母語とする人にとっては、ドイツ語やフランス語を学ぶのはそれほど大変なことではありませんが、縁もゆかりもない日本語を学ぶのは大変なのです。ヨーロッパに行った人たちが、何カ国語も話せる人が多くて驚いたという話はよく聞きますが、系統が同じ言葉なら、習得はずいぶん楽にできるのです。日本人でも、韓国の人から語学の天才だと思われることがよくあるのは、アメリカ人などと比べて、ずいぶん早く韓国・朝鮮語をしゃべれるようになるからです。でもそれは天才だからではなく、ただ、日本語と韓国・朝鮮語は類似点が多いからにすぎないのです。つまり、日本語を母語とする私たちにとっては、韓国・朝鮮語や、漢字を共有する 中国語は比較的楽に習得できるのですが、英語は習得が最も難しい言語のひとつなのです。

以上のような条件がそろっていたのですから、英語がうまくなるはずがなかったのです。事実、この3条件がそろった国で、全国民を対象とした外国語教育に成功した例など、私の知る限り、世界広しといえども、どこにもありません。20世紀に日本人が英語をしゃべれなかったのは、英語教育が悪かったせいではなく、当然のことだったのです。

b. 激変した言語状況
ところが、20世紀が終わりに近づいた頃から、画期的な変化が起こって、20世紀とは全く違った新しい言語状況が生まれ始めました。つまり上に挙げた3つの条件がことごとく覆され始めたのです。

まず最初の条件を変えたのが、メディアの発達です。1989年に登場した NHK の衛星放送が英語圏のテレビ番組をそのまま日本で楽しめる時代の幕を開けました。数年後には CNN と BBC が英語による24 時間放送を開始し、自宅にいても情報入手や楽しみのために英語を Input として「使える」環境が整いました。英語圏の人たちが楽しんでいる放送をそのまま楽しめるというのは、英語学習者にとってはまさに長年の夢の実現そのものでした。そしてインターネット元年と言われる1995年あたりから、今度は Eメールやチャットで英語を Output でも「使える」ようになりました。つまり、普通の日本人でも、 実際に英語を生活の中で使おうとすれば、いくらでも使える状況が日本に初めて生まれたのです。Skype や FaceTime で外国にいる人と顔を見ながら話をするというのは、今では当たり前の風景になっています。

二番目の条件についても、主にインターネットなどの ICT(Information and Communication Technology)の発達と、経済活動のグローバル化によって、国際コミュニケーションの道具としての英語の運用能力が切実に求められるようになってきました。採用や昇進の条件として一定の英語運用能力を求める企業も増え、日本でも英語による所得格差(English Divide)が始まりました。2012年には楽天が社内での英語公用語化を始め、ユニクロ、サントリー、住友商事なども本格的に英語強化に取り組んでいます。英語ができれば活躍の場が広がり、所得も増えるような時代が始まろうとしています。
最後の条件については、言語の系統上の隔たりを埋めることはできませんが、習得の困難さは、ずいぶん軽減されました。21世紀になって急速に普及したインターネットのおかげで、英語を自然な形で毎日楽しく使えるようになり、小学校からの早期英語教育も始まって昔と比べれば英語の習得がずいぶん容易になったことは確かです。

つまり、英語について言えば、21世紀になって日本の言語状況は画期的に変化したのです。いくら意欲があっても習得はとても難しかった20世紀と違って、今は意欲さえあれば、留学などしなくても、身の回りにネイティブスピーカーがいなくても、いくらでも英語運用能力を身につけることができるようになったのです。

c. 英語を楽しく使えない?

こんなに便利に英語が使える時代になったのに、しかも英語をぜひマスターしたいと思っているのに、まだ使えるようにならないとしたら、それは主に次の3つの理由のためです。

1 英語でやり取りしたい内容がない
たとえば、大学生に「英語をペラペラしゃべれるようになりたいですか?」と聞くと、ほぼ全員が 「はい!」と答えます。ところが、「それでは外国の人に具体的に何を伝えたいですか?」と聞くと、とたんに「えーと…」と口ごもります。「しゃべりたいこともないのに、どうしてしゃべれるようになりたいの?」と聞くと、「カッコいいから」という返事が返ってきます。

テレビで外国人のゲストと英語でペラペラしゃべっているキャスターに憧れるのです。学校で ALT(Assistant Language Teacher)と英語でカッコよくしゃべっている帰国子女がうらやましいのです。満員の地下鉄で隣の外国人と英語で何か冗談を言って笑っている人が、すごくカッコいいのです。つまり、英語でやり取りしたい内容があるわけではなく、自分もあの人たちのようにカッコよくなりたいのです。ブランド品を身につけるように、英語を身につけてカッコよく見せたいのです。でも、そんな風に考えている人は、絶対に英語は身につきません。考えてみれば当たり前のことです。特に何も話したいことがないのに、どうして話せるようになるのでしょうか。

〈解決策〉
もしあなたが、日本人の友達に対して無口な人なら、たぶん外国人に対しても同じことでしょう。でも、日本語でのおしゃべりを楽しんでいる人なら、きっと英語でのおしゃべりも楽しめるはずです。では、なぜ日本語のおしゃべりが楽しいのでしょうか。それは、おしゃべりの話題に多少なりとも興味を持っているからです。ふたりで話が弾むのは、お互いが面白いと思える話題を共有できるからです。

ですからまず、自分が最も面白いと思える話題について、英語で情報を集めるところから始めましょう。そしてその話題について、自分の意見や面白い話を英語で言えるようにするのです。そして、話せる話題をどんどん増やしていってください。そのためには、いつも知的好奇心を一杯にふくらませて、いろいろなことに興味や関心を持つことです。そうやって英語で話せる話題が多くなればなるほど、あなたはどんどん英語がしゃべれるようになるのです。

2 自分の英語に自信が持てないのでしゃべれない
英語の本を読んだり英語放送を聞いたりするのは、それなりに楽しめて苦手ではないけれど、しゃべるとなると、たちまちボロボロ間違えそうで、恥をかきたくないから、つい後回しにしてしまうという日本人がとても多いようです。今やネットを使えば外国にいる人と顔を見ながら無料でいくらでもおしゃべりができるというのに、まだ一度もその機能を使ってしゃべったことがないという人が大半です。「相手の言うことが聞き取れなかったらどうしよう」、「私の英語が分かってもらえなかったらどうしよう」、「私のしゃべる英語が、他の誰かに聞かれていたら恥ずかしい」、「何か聞かれても、ちゃんと答える自信がない」など、ビクビク、オドオドしているのです。なぜでしょうか。

それは、心の底に、英語母語話者に対して見当違いな憧れや劣等感を持っているからではないでしょうか。英語母語話者を前にすると、まるで憧れのスターの前に出たときのように、あるいは自分よりはるかに偉い人と面と向かったときのように、緊張とあせりで頭が真っ白になって、シドロモドロになってしまうのです。そこで、そんなことにならないように、そんな場面はいつも避けているのです。その結果、しゃべれるようになりたいのに、いつまでたってもしゃべれないのです。

<解決策>
英語母語話者に対する劣等感は、見当違いのものです。言語の価値に優劣はありません。どんな言語であれ、それを母語とする人は、その言語でこそ自分を一番完全に表現できるのです。母語を使っているからこそ、完全な自分でいられるのです。ですから、母語というのは誰にとっても同じように大切な、誇るべきものなのです。一方、慣れない外国語をしゃべるときは、誰でもまだ片言しかしゃべれない幼児のようになってしまいます。それを恥ずかしく思わないのは、自分の母語に誇りを持っているからです。

英語にビクビク、オドオドする人は、自分の母語に誇りが持てないのです。英語が完璧に使えるようになって初めて、その英語力にだけ誇りが持てるだろうと思っている人です。だから自分の不完全な英語が恥ずかしくてならないのです。そういう人は、劣等感のはけ口として、力のない国の言語を馬鹿に しがちです。英語にはペコペコして、弱小言語にはふんぞり返るのです。

まずは、日本にいる英語母語話者に日本語で自己紹介をしてもらってください。おそらくたいていの人が、片言の「変な」日本語を話し始めることでしょう。それでいいのです。外国語など、完璧な発音で間違いなく話すこと自体がほとんど不可能なのです。それなのに、なぜ私たちだけが完璧な英語を話さなければいけないのでしょうか。比べるなら、私たちの英語と英語母語話者たちの日本語です。文法や発音が少々間違っていても、言いたいことが大体伝わればいいのです。母語がうまく使えないのなら、それは確かに恥です。しかし、外国語は下手なのが当たり前、少しも恥ずかしいことはありません。堂々と、気楽に間違えながら、どんどんしゃべることです。外国語習得は、子どもの気分になって遊ぶゲームなのです。勝っても負けても、しょせんゲームでのことにすぎません。

3 英語を使う時間がない
英語は楽しいし、使えるようになりたいと思ってはいるけれど、どうも時間がないという人がいます。たぶん本当のことでしょう。英語よりも大切なこと、面白いこと、気軽にできることがほかにもたくさんあるからです。家でも仕事をしたいし、友達とおしゃべりしたいし、LINEもやりたいし、ドラマも見たいし、歌も聞きたいし、借りてきた映画も見たいし、ブログも読みたいし、雑誌も読みたいし、ドライブもしたいし、デートもしたいし、しばらくボーッとしていたいし…、ついつい英語は後回しになってしまうのです。

〈解決策〉
これは英語だけの問題ではありません。やりたいこと、すべきことがなかなかできないという人に共通した問題です。まず英語を使えるようになることが自分にとって他のことと比べてどれくらい重要なことかをじっくり考えてみてください。もっと重要なことがほかにあるなら、英語に時間が取れないのは当然なことで、嘆く必要は全くないわけです。問題は、英語を使えるようになることがとても大切なことなのに、なかなか取り組めないでいる人です。そういう人はどうすればいいでしょう。解決策は簡単なことです。

大きな石と小石のたとえ話を知っていますか。1日の起きている時間をバケツ1杯の容量、することを大小さまざまな石としましょう。そこに毎日石を入れていくときに、たいていの人は、まず気軽につまめる小石の方を選んでしまいます。メールを送ったり、スマホで話をしたり、テレビを見たり、音楽を聞いたり、雑誌を読んだり、机を片付けたり…。別にやらないならやらないで済んでしまうようなことでも、簡単なことなので、それから始めてしまうのです。あるいはもっと開き直って、息抜きも必要だからと自分を説得したり、明日から生活を変えようと小さな決心をして、今日はまあのんびり、といった具合に、小石ばかりをつまみ上げて、どんどんバケツに入れてしまいます。そしてバケツが半分ほど埋まったところで、いよいよ大事な重い仕事を始めねばと、大きくて重い石を入れようとするのですが、今となっては手遅れで、大きな石はバケツからはみ出してしまうのです。そして結局本当に大事なことは何ひとつできないまま、今日が終わってしまいます。

バケツが空のうちに、まず最初に大きくて重い石をヨイショと持ち上げて、入れてしまうことです。下がまだ小石で埋まっていないので、バケツにすっぽり収まります。その後で、大きな石とバケツの隙間に、小石を入れていけば、小石も結構たくさん入るのです。ポイントは、順序です。毎日、まず一番大切なことを一番最初にするようにすれば、時間内に大きな成果を収めることができるのです。確かに、のんびりするひと時も貴重ですが、それは後に回して、まずは、自分にとってもっと大切なことにすぐに取り組む習慣をつけることです。それだけのことで、必ず素晴らしい成果を上げることができるのです。英語力をつけることが本当に大切なら、毎日、まず何よりも先に英語を楽しく使い、その後の暇な時間にいろいろなことをすればいいのです。Do first things first. 人生で何かを成し遂げる秘訣は、まさにこれです。ただ順序を変えればいいという、こんなに簡単なことなのです。だったら、明日からと言わず、今日からすぐに始めてください。You don’t have to be great to start, but you have to start to be great. (Zig Ziglar) まさにその通りです。

外国語の習得には、大量の時間が必要です。巷にあふれている「たった〜するだけで…」とか「わず か○カ月で〜」とかのうたい文句は、本や教材を買わせるための誇大広告にすぎません。そんなものに振り回されずに、いかにしてその長時間かかる英語学習を楽しいものにするか、そして少しでも効率的にするかに専念してください。それが結局は外国語習得への唯一の、そして一番の近道なのです。

それでは、どうすれば、効率的に習得できるのでしょうか。その方法を見つけるためには、まず外国語を聞いたり読んだり、話したり書いたりするときに、頭の中で何が起こっているかを知る必要があります。それを正しく理解すれば、正しい方法は自分で考え出すことができるからです。

さあ、それでは、まず Input、つまり Listening や Reading の仕組みから考えてみましょう。

松本 青也 (著)
出版社: 朝日出版社 (2019/12/20)、出典:出版社HP

1. INPUT
1-1. Input の仕組み
Input という言葉は、コンピュータに情報を入れること、あるいはその情報そのものを指してよく使われますが、人間の頭をコンピュータに見立てれば、目や耳から情報を入れること、つまり Reading や Listening も Input と考えることができます。

それでは、Input が行われるときに、頭の中ではどんなことが行われているのでしょうか。図1を見ながら、Listening を中心に、それを考えてみましょう。

誰かと話しているときには、2種類の信号が入ってきます。ひとつは音の信号(sound signal)で、もうひとつは、相手の表情やジェスチャーなどの、音ではない信号(nonverbal signal)です。音の信号の方は、話している人が作り出す空気の振動として聞き手の耳に入って、鼓膜を振動させます。それを神経が感知して脳に伝え、そこから理解(COMPREHENSION)という作業が始まります。

最初は音を確認する作業(identification)です。相手の言うことを聞こうと思っているときは、聞くのと同時に自分でも同じことを心の中で言って確認しています(これを「内言語(internal speech)」と呼ぶことがあります)。声を出さずに本を読んでいるときも同じですが、心の中で音声化して確認しているのです。これをしないのが、たとえば他のことを考えているときです。相手が何か言っていることは感じているのですが、心の中では「…今日のお昼はコンビニで買おうかな、それともあの店のラーメンを…」などと言っているので、相手の言っていることが確認できていません。そこで「ちょっと、聞いてるの?」と、たしなめられてしまったりするのです。この状態は英語で hear に当たります。何か 「聞こえる」のですが、聞こうとはしていないのです。それに対して、何を言っているのかを「聞こうとする」のが英語の listen です。

音を確認する作業は決して受け身ではありません。実は、ただ繰り返しているだけではなく、頭のコンピュータは、今までに言語そのものや世界について蓄えた知識(KNOWLEDGE of the language and the world)を総動員して、この確認作業がうまく行くように積極的に働きかけているのです。書いてあってはっきり読める活字の文字と違って、耳から入ってくる音声信号は完全なものとは限りません。それなのに母語での会話が円滑に行われるのは、不完全な信号を補うことができるからです。

そのひとつが予測 (anticipation)という働きです。頭のコンピュータは膨大な記憶をもとに、相手が 次に何を言うかの見当をつけることができます。周りの状況、今までの話の内容、相手の表情などから、言いそうなことを予測できます。たとえば、相手の言い分を聞き終えた人が、少し苦笑して「う~ん、ま、確かにそうとも」と言い始めた場合、次に続くのはおそらく「言え…」だろうということは、 日本語母語話者なら分かるはずです。予測できるので、実際にははっきり聞こえていなくても分かるのです。

あるいは、音声情報が一部分欠けていても、母語の場合は簡単に補充(supplementation)できます。「アイスクリーム」と言ったときに、雑音が入って「アイ・クリーム」と聞こえても、「アイスクリーム」だと認識できます。

ところが、慣れない外国語ですと、頭のコンピュータに蓄えられた記憶がほとんどないので、予測や補充はできません。つまり、実際に伝わった信号しか認識できません。外国語の聞き取りが難しいのは、これがひとつの原因なのです。

音は認識されると同時に、頭のコンピュータにある作業記憶(working memory)がそのまま正確に 短期間記憶しながら意味を理解しようとします。意味が分からないときは、今までの膨大な知識をもとに意味を推測(inference)します。そうやって分かった範囲で意味が解釈 (interpretation)されると、それに声の調子や音量などのパラ言語(paralanguage)が伝えるものが加わって、伝達された内容 (message)として抜き出され、それと同時に、音そのものの正確な記憶は、次の音を入れるために削 除(deletion)されます。抜き出された内容は、聞き取った語句そのままではなく、重要な部分を中心とする概要のようなもので、長期記憶(long-term memory)として記憶に蓄えられるのです。

さて、聞き取りが難しいもうひとつの原因が、内容を引き出すときの「速さ」です。認識した音から意味を推測して解釈するという一連の作業は、いわば、確認したばかりの音声情報が作業記憶という観覧車に乗っている間にしなければなりません。図2を見てください。

観覧車には短期記憶用に座席があります。そのままの形で記憶にとどめやすい要素(チャンク)の数 は、7+2だという説(Miller, 1956)がありますので、座席の数は7つにしておきました。たったそれだけかと驚く人がいるかもしれませんが、一字一句覚えていられる分量はそれほど多くはないのです。たとえば誰かと話していて、別れてから、その人が言った言葉を最初から一字一句思い出せますか。そんなことができる人は誰もいません。覚えているのは、つまり長期記憶されるのは、その人が言った大体の内容です。そのまま覚えていられるのは、なるほど7±2程度が限度です。確かに数字でも7桁の電話番号くらいなら、頭の中で繰り返しながら、そのままいつまでも覚えていることができます。

言葉の場合は、どれくらいその言葉に慣れているかで、何をひとつの要素(チャンク)と数えるかが決まります。たとえば英語の初心者にとっては、“a lot of money”は、a, lot, of, money の4つになってしまいますが、上級者なら、“a lot of money”をまとめて1つとして扱うことができるかもしれません。つまり、慣れれば慣れるほど、長い文をそのまま覚えておくことができるのです。

さて、耳から入ってくる音を、観覧車に乗せるお客さんだとしましょう。お客さんは一定の速さで、次々に進んできます。そこであなたは順番に観覧車に乗せて、ぐるりと一周してもらう間に、そのお客さんたちから、意味を引き出して解釈しなければなりません。うまく引き出せればいいのですが、お客さんの流れが速すぎると、次の2つの現象のどちらかが起こります。

ひとつは、お客さんの速さに合わせて観覧車を速く回してしまうので、まだ内容を抜き出せないままお客さんに降りてもらわなければならない場合です。「英語が速すぎて何を言っているのかさっぱり分からない」ということになります。もうひとつの現象は、内容を抜き出すのに時間がかかって観覧車のスピードを遅らせてしまうので、一定の速さで移動してくるお客さんの一部が観覧車に乗れないまま素 通りしてしまう場合です。「ところどころの語句は分かるが、速すぎて全体の意味がつかめない」ということになります。

同じ Input でも、Reading なら自分で読む速さ、つまり観覧車の速度を調整できるので問題はないのですが、

Listening では、しゃべる人の速さに合わせなければならないので難しいのです。

さあそれでは、Input の仕組みが分かったところで、次になぜ聞き取れないのか、どうすれば効率的に Listening の力をつけられるのかを考えてみましょう。

松本 青也 (著)
出版社: 朝日出版社 (2019/12/20)、出典:出版社HP