会計パーソンに必須の英語網羅
会計に特化して英語を勉強すれば、上達がはやいことも何となくわかりますが、本書はそれを明確な目的をあげており、会計パーソンのために体系的な英語学習法 を提示すること、またそれぞれの会計に関わる人々にむけて、英語に対してさまざまな ニーズ・プライオリティを精査しています。
はじめに
すべての会計パーソンに英語力が必須の能力として求められる時 代が,すぐそこに来ています。
この理由は,第1に,日本企業の国際化が進むからです。国内市 場は人口減少を主因として縮小する一方、中国・インド・韓国等の 近隣アジア諸国の発展は目覚ましく、企業は生き残りをかけて国際 化を加速しています。国内にとどまろうとする企業も,技術や市場 にニッチがあれば、外国企業に買収されることによって国際化する 例も増えるでしょう。
第2の理由は,会計基準の国際化です。紆余曲折があるかもしれ ませんが,やがてわが国も IFRS(国際財務報告基準)を採用する ようになるでしょう。会計基準の原典が英語になるのですから,こ れは会計パーソンの労働環境にとって革命的な変化です。
企業の経理パーソンも,会計士も,外国人と英語で経理処理の問 題を議論し,英語の会計基準を参照して判断し,英語の財務諸表を 作成あるいは監査することが当然のように求められるようになりま す。これまでは一部の国際企業の経理パーソンや大手監査法人の外 国部の担当者のみに求められていた能力が,会計パーソン一般に要 求されるようになるのです。
簡単に言えば,これまでは会計という一芸だけで人並み以上の生 活ができたのに,これからは会計と英語という二芸がないと活躍の 場すら与えられなくなるということです。
ところで,会計パーソンには一般的に次の共通点があると思います。
1頭はいいほうである
2会計の学習で成功体験がある
3 どちらかといえばリッチで、学習のための支出ができる
4 論理的に納得できないことはしたくない
5何でもきっちりしないと気が済まない
6 いつも忙しい
こうして列挙すると,かなりユニークな人たちですね。
巷には英語学習の本が溢れていますが,著者の体験に基づいた特 殊な学習法を推奨する本がほとんどで、バランスの取れた体系的な 本はあまりありません。たまにそれに近い本があっても,一般人向 きなので、特殊な会計パーソンにはフィットしません。
本書の第1の目的は,会計パーソンのために体系的な英語学習法 を提示することです。
さて、上記の共通点のうち1~4は語学学習に有利に働きますが, 最後の2点は不利に働きます。6は自明としても,5が不利に働く のは,言葉というのはもともとファジーなものなので,「何でも きっちり」は学習方法としては間違いだからです。一部の帰国子女 や留学経験者を除くと会計パーソンに英語が苦手な人が多いのは、 「何でもきっちり」が邪魔をしているためだと思います。
本書は,理屈が好きな会計パーソンのために英語力の構造と学習 方法を論理的に説明し,また,隙間時間,ながら時間を活用した ファジーな学習法を提案します。
私はここ数年,ご縁があってIFRS諮問会議(IFRS-AC), 資本 市場諮問委員会(CMAC)の委員として定期的に国際会計基準審 議会(IASB)との会議に出席することになりました。若い頃 (30 年くらい前です)には生命保険会社の海外投資担当者として米国に 駐在し不動産投資をしていました。帰国後も,海外物を中心に株・ 債券,為替,デリバティブなどの売買を行っていました。自分で言 うのも変ですが,その頃は、かなり英語ができました。
その後,10年ほど公私ともにほとんど英語を使わないというブラ ンクを経て,急に国際会議に出席するようになりました。英語力は 落ちている,会計は専門外,日常業務ではほとんど英語を使わない, という三重苦の中で,日本を代表して出席している会議で恥をかか ないために英語学習を再開したのですが,
1インターネットや電子機器の進歩で学習素材,手段が多様化した
2 これを一因に英語の学習理論も進化した
ことを発見し,愕然としました。英語学習には革命的な変化が起き ています。学習素材・手段を活用し,正しい理論に則って努力しな いと、大変な差がついてしまいます。日本人の英語力は中国人や韓 国人に見劣りするといわれますが,素材・手段,理論の活用度合い の相違が見劣りの一因かもしれません。
本書の第2の目的は,英語学習に革命をもたらしている最新の素材・手段,理論の紹介です。
さて,本書の構成を説明しましょう。 まず「第1章 英語ができない理由」で,英語はできなくて当然であることを示し,英語力の構造とそれに基づく英語の学習方法も 説明します。第1章は本書の原理論編です。悲しいことですが 「できなくて当然」が出発点になるのです。
「第2章 基礎英語力習得のための練習とツール」では、発音習習の仕方や、語彙の増強法を含む英語の基礎的学習法,そのために 必要な電子機器の活用法を説明します。
「第3章 会計英語の習得」では,会計パーソンに必須な簿記会 計の英語から始め,会議での発言を含む会計英語の習得法を解説し ます。
「第4章 一般英語で基礎力養成」では、児童書やハードボイル ド小説等を紹介し,骨太で筋肉質な英語の基礎体力養成法を伝授し ます。
本書を手に取っている会計パーソンは、英語に対してさまざまな ニーズ・プライオリティを抱えていると思います。それによって, 本書の利用の仕方も異なります。
海外へ派遣されることになったので,日常生活に困らないように したいという方は、第2章の発音,ヒアリング練習に取り組むこと をお奨めします。
一方,話す・聴くはさておいて、ともかく英語で IFRSを読める ようになりたいという方は、第3章を学習してください。
そして、海外の会計パーソンと仕事で互角に渡り合うのが目標だ という方は、第4章の内容を継続して消化するのが一番の早道にな ります。
ただし,いずれの方も,第1章の原理論部分は熟読してください。 英語力の構造を理解しているか否かは学習成果に大きく影響します。
学習方法は現在の英語力によっても異なります。TOEICの得点 別お奨め学習法については,第2章の「12 TOEIC レベル別学習 法」で解説しました。
英語の学習は長い船旅に似ています。景色を愛で,気候の変化を楽しみ、毎日の食事と運動を欠かさなければ、心身ともに健康で必ず目的地に到着します。航海のご案内は、不肖,この私が誠心誠意つとめます。それでは,Bon voyage!
目次
はじめに
第1章 英語ができない理由
1 英語はできなくて当たり前…
2 英語力の構造 ….
(1) 英語の講演が聴けない理由・
(2) 英語力の構造・
(3) 英語山の構造・
3 英語の学習方法
(1) 完全なバイリンガルはいない・
(2) 聴けない、話せない・
(3) アハヤアガザアマサの恐怖・
(4) 1日3時間は英語のエクスポージャー・
(5) トータルのエクスポージャー・
(6) モティベーションの維持・
(7) 英語の学習法~まとめ・22
第2章 基礎英語力習得のための練習とツール
1 発音……
2 音読・シャドーイング……
3精読と多読,精聴と多聴の併用
4ヒアリング……
5 パーティ英語のヒアリング……
6 語彙の増強、
(1) 何を覚えるか・
(2) どうやって覚えるか・
1 電子辞書・
2単語帳,単語カード・
3似たような単語は専用単語帳に・
4 単語本・
5単語ソフトの活用・
6語源に注意を・
(3) 単語学習にどこまで時間を割くか
(4) 語彙のチェック・56
(5) Globish は救世主になるか・
7話す・書く……
(1) 英語で考える・
(2) 英語を話す・60
1 ともかく話す・
2 英会話スクール・
3 英会話サークル・
4 英会話自習書・
(3) 英語を書く・
1 日記を書こう・
2 趣味の記録・
3 Twitter と Facebook・
4 冠詞と定冠詞・
5 米国大学生向けの作文教科書・
6 添削を受ける・
8 電子機器の活用…..
(1) 電子辞書・
1 メリット・
2 選び方・
(2) スマートフォン・
(3) ICレコーダー・
(4) MP3プレイヤー(ウォークマン)・
(5) ケーブルテレビ・
9 インターネットの活用
10 英語映画の観方・聴き方・選び方
11 英語試験の利用
(1) TOEIC
1 試験の概要・
2 受験準備・
(2) TOEIC SW
1試験の概要・
2 受験準備・
(3) TOEFL
1 試験の概要・
2 受験準備・
(4) どのテストを受けるか,何点を目指すか・
(5) Writing テスト対策・
1 端的で定型パターンに則った解答を・
2書きやすい答えを選んで嘘をつく
3時間配分に留意し,330語以上書く・
(6) CASEC・
1 試験の概要・
2 受験準備・
12 TOEIC レベル別学習法
(1) ~500点・
(2) 500~700点・
(3) 700~850点・
(4) 850点~・
第3章 会計英語の習得・
1 会計入門書を読む……
2 会計専門書を読む…
3 IFRS 入門 ……….
4 ウェブサイトを利用して世界の会計トレンドをフォロー
5 公開草案の読み方・・
6 IFRS入門, ……
7 試験に挑戦……
(1) BATIC・
1試験の概要・
2受験準備・
3得点・合否・
(2) IFRS Certificate ·
1 試験の概要・
2受験準備・
3 得点・合否・
4 BATICかIFRS Certificate か・
(3) US CPA・
1 試験の概要・
2試験の性格と受験資格・
3受験準備・
4 得点・合否・
5 受験のすすめ・
8 ビデオで英語会計
9会議で発言する……
(1) 必ず発言する・
(2) 資料を読み込む・
(3) 発言ポイントを見つける・
(4) 発言内容を英語原稿にする・
(5) 原稿の音読練習をする・
(6) 実際の発言・
(7) ジャンプイン・
10 英語でプレゼン……
第4章
一般英語で基礎力養成・
1 グレイディッド・リーダーで肩慣らし……
2児童書で筋トレ・・・
3 ハードボイルド小説で学ぶ会話術…………
4経営書を読もう
5 趣味の雑誌を定期購読…
6 オーディオブックの活用
7 お風呂で詩集
あとがき
Column
日本人の持病・
TOEIC, TOEFL Listening 満点のヒアリング力・
ドンファンの「実況中継」.
英和辞書と英英辞書・
受験奮戦記・
盛田昭夫さんの英語・
比喩を用いた失敗譚・
電子書籍リーダーとベストセラー・
第1章
英語ができない理由
英語はできなくて当たり前/英語力の構造,
英語の学習方法