パート5はすべての基本が詰まったパート
ここでは、TOEIC® L&Rのリーディングパートを扱っていきます。中でもパート5は、「すべての基本が詰まったパート」と言っても過言ではありません。このパートが満足に解けないようであれば、高スコアを取得することはできません。逆を言えば、パート5を得意分野にすることで英文の構造を把握でき、英語の基礎を抑えられるようになります。
ですから、英語初心者はパート5の対策をはじめに取り組み、且つ最も時間を割くべきパートでもあると思います。それでは、具体的にパート5の問題を見ていきましょう。パート5は全30問ありますが、問題のパターンは様々です。問題パターンを見分ける時のコツは、「選択肢を見比べる」です。では、実際の問題を見ていきましょう。
【タイプ1(品詞)】
問1:ABC electronics’ staff have ______ of current system.
(A)know
(B)known
(C)knowledge
(D)knowledgeable
選択肢を見ると「know」の品詞の変化形が並んでいます。このように単語の意味というよりは、文の構造に最適な品詞を選択する問題が出てきます。そのため、単語を覚える際には品詞にも気を配らなければなりません。次に文構造を見ると、空欄の直前は「have」という動詞、直後は「of」という前置詞です。すなわち「動詞( )前置詞」に何を入れるべきかが問われているのです。
ここでは「have」が他動詞なので目的語となる名詞が必要です。また、名詞をおけば直後の「of」とも「A of B(BのA)」という形で意味が通ります。このタイプの問題を解くのに必要なことは、文構造の把握と文中での各品詞の役割についての理解です。品詞問題は文法の中でも一番の基礎で、且つ頻出度も高いので、英文の構成要素の知識を身につけたら絶対に解けるようにして下さい。
【タイプ2(動詞)】
問2:ABC’s chief of staff meets regularly with staff to ensure that procedures ______ correctly.
(A)to be performed
(B)would have performed
(C)had been performed
(D)are being performed
この問題も問1と同じく選択肢の「perform」の形が違うだけではなく、時制や態もそれぞれ異なっています。この手の問題で特に必要となる知識は、時制や態や分詞です。動詞問題は、まず「態」を判別します。空欄に入るべき動詞は、直前の名詞「procedures」にかかるので受動態となるべきです。選択肢の中でこの条件に当てはまるのは(A)と(C)、(D)です。
次に判断材料して時制を見てみると、主節の動詞「meets」が現在形なので従属節の空欄も現在形のはずです。また、「ensure that」の「that」が接続詞の役割を果たすので、「that」以下にはSVと完全文の要素が揃っている必要があります。それらを考慮に入れるといずれの条件も満たすのは(D)です。
【タイプ3(関係詞)】
問3:ABC Properties has just signed a lease agreement with the law firm ______ offices are on the first floor.
(A)how
(B)what
(C)whose
(D)wherever
次のパターンは「文構造」と「接続詞・関係詞」の知識がないと解けない問題で、文法タイプの中では最難関レベルかと思います。600点を目指す上では、他の分野で得点できるなら無理に解く必要はないかもしれません。選択肢を見るといずれも接続詞や関係詞です。この手のタイプは、他動詞の目的語として機能する「名詞節」か、名詞を修飾する「形容詞節」なのかを判別します。
空欄の直前までで文は完結しているので、以降は直前の「the law firm」を説明するオマケみたいなものです。また、空欄の後を見ると、文の要素が全て揃っている完全文です。あとは文意を汲み取りながら選択肢を考えると、関係代名詞の目的格として機能する(C)が正解とわかります。
【タイプ4(語彙)】
問4:The XYZ corporation is committed to keeping costs ______ for its certification programs.
(A)affordable
(B)permitted
(C)cutting
(D)necessary
語彙を問うタイプは、文脈に最適な選択肢を選ぶ問題であり、選択肢の品詞が全て同じになります。ここでは(A)affordable(手頃な価格の)が文意に最も合い正解となります。日頃からただ単語の意味だけを身につけるのではなく、「単語がどのように使われるか」、「どの単語とよく使われるか(コロケーション)」をたくさん覚えることで正解に近づきます。
これまで見てきたように、形式としては短文の空所補充ですが、さまざまな知識が求められるのがパート5の特徴です。解説を読んでもわからない文法用語があるのであれば、必要に応じて高校英語や中学生語まで遡り、理解することが英語の基礎を作ることに繋がります。パート5の正答率が安定せずしてリーディングのスコアは望めませんので、基礎に不安の方はぜひ一度、基礎知識を固めることをオススメします。
パート5の基本を押さえ、何回か問題演習をして正答率が8割くらいに安定したら、今度は数をとにかくこなします。オススメの問題集は、『TOEIC L&Rテスト 文法問題 でる1000問』です。この問題集を数週することにより、TOEIC®で頻出する文法問題をあらかた抑えることができます。ここまでくれば、パート5に関しては半分攻略したと言っても同然です。残りの半分はスピードです。30問をいかに早く解くかによって、パート6と7に充てられる時間が変わってきます。ですので、初心者の方は、1問あたり30秒以内を目安に解けるようチャレンジしてください。正答率とスピードが伴えばパート5が大きな得点源になるでしょう。
パート6は「パート5の知識+α」
続いてパート6です。長文の1題中に空所が4箇所あり、それぞれの空所を埋める問題です。小問の4題中3題は、パート5のような文法や文脈を問われる問題で、もう1題は文脈に合致する1文を補う問題です。
つまり、パート6はパート5の延長線でありパート7の前哨戦です。その上で文脈を辿りながら、問題が解けるかを試されています。パート5との決定的な違いは、正解のヒントが空欄を含む文のみに収まらないということ。そして、選択肢に「Therefore」や「However」、「Moreover」など前後の文脈の論理展開を読み解く必要があることの力を要求されます。
ですから、決して空欄の前後や文だけを読んで解かず、1文目から読み進めていくことが必要となります。このとき、1文ずつ訳していくのではなく、次の文との流れを意識して読むようにしてください。そうすれば、次第に自然と文を追いながら読めるようになるので、最初のうちは妥協しないようにしましょう。
ここまででパート5と6の対策を伝えましたが、リスニングパートと違ってリーディングパートは75分間内にどの順番で問題を解こうが受験者の自由です。言い換えれば、このパートでハイスコアを取りたいのならば、自らの実力に見合った戦略が必要となります。このパートで多くの受験者の悩みのタネとなるのは、「最後まで解き切れないこと」だと思います。
しかし、私は「最後まで解ききれなくても良い」と考えています。それは経験上、最後までリーディングパートを解き切れるのは、900点を安定して取れるレベルになってからだと思います。では、初心者はどのような戦略を立てるべきかというと、捨てる問題は捨て、解ける問題は確実に解くという「正答率重視」の戦略を勧めます。100問解答して、50問しか合っていなかったよりも、100問あるのであれば20問を捨て、残りの80問の内60問正解する方がスコアは高いのです。
このように、初心者のうちは敢えて全問勝負に挑むのではなく、拾うべき問題は確実に正解するスタンスを取り、余裕が出てきたら全問解答を目指すのです。リーディングの学習をする上で、まずはパート5で絶対に落とせない問題を確実に正解する力を付けてください。ここでどれだけ基礎を身に付けられるかが、今後のスコアの伸びが左右されます。
1987年生まれ、愛知県出身。留学はおろか旅行ですら海外渡航歴のない英語学習者。大学で英米文学を専攻したが、学生時代は特に英語が得意というわけではなかった。一時は英語が嫌いになるが、社会人になってから本腰を入れて英語学習を始め、6年間でTOEIC®910点や英検1級を取得。紆余曲折を経て蓄積した自身の経験に基づいた勉強法をブログやSNSにて公開中。