リスニングの勉強の出発点は「発音」学習から!
ここでは、リスニングパート(パート1と2)の勉強法と解き方を紹介していくわけですが、リスニングの勉強だからといっても、いきなり問題を解くことはあまりオススメしません。というのも、私自身もそうでありますが、海外の居住・留学・就労経験がなく、中学校から読解を中心としたスタイルで英語を学び続けてきた人は「英語の音」を知らないからです。例えば、日本語の母音は「a・i・u・e・o」の5つの音素しかありませんが、英語は母音だけで24の音素があります(区別により数は変わる)。
つまり、母音だけみても日本語より5倍以上の音素が英語にはあるのです。ちなみに「a」は日本語では「ア」だけですが、英語では[æ] [ɑ] [ə] [ʌ] といった様々な種類があります。これらは意図的に学ばない限り、日本人には「ア」とした聞き取れないため、音の区別ができずリスニングに悪影響が出てしまいます。
私自身は社会人になり、英語を学び直す初期段階の頃、幸いにもこのことに気づいたためにその後のリスニングの学習が非常にスムーズなものになりました。もし、この記事を見ているあなたがリスニングを苦手としているならば、十中八九、英語の音を意識して学んだことはないはずです。そんな人ほど、まずは「発音」から学ぶことを強く推奨します。
それではパートごとの詳細な勉強法と解き方に移ります。パート1は、写真について4つの説明文が読み上げられる形式の「写真描写問題」が6問出題されます。最初の問題ですから出鼻をくじかれないために、5問以上の正解を目指したいところ。解き方としてはまず始めに写真を見ます。基本的に写真は人物描写か情景描写にわかれます。
次に、問題の写真がどのような状態・場面なのかを「日本語」で4つ考えます。「日本語で考える」というのがミソで、特に苦労することなく考えられると思います。そして、思い浮かべた日本語を英語に変換します。このとき、TOEIC向けの単語帳を手元に準備し、辞書代わりに使うことで同時に頻出単語も能動的に覚えましょう。この勉強を続けていくうちに、出題される問題の表現の類似性に気がつくはずです。
このように日本語で考えてから脳内で英語に変換することで問題のパターンが掴めるだけでなく、自分で積極的に表現を作ることにより、自然と「あ、この問題はこういう選択肢が読まれるかも!」と先手を打てることになります。先読みができれば心に余裕も生まれますし、なにより表現力アップにもつながりますから、仕事などで英語を使う機会のある人はまさに一石二鳥です。
では、具体的に私がパート1を解く際にどのような手順を取っているのか再現します。まず、写真を見て、自分なりの解答をイメージし、同時に。マークシートの設問のAの部分にシャーペンを当て設問が読まれるのを待ちます。「No.1」とナレーターが読み上げたら一気に集中力を高めます。選択肢を聞いて正解だと思ったら、この時点でマークシートの解答欄を塗りつぶします。違うと思ったら、シャーペンをBの欄にずらします。仮にBが解答だと思ったら、塗りつぶして集中力を緩めて次の問題を見据えます。答えが違うと思ったら、同様にこの作業を解答が出せるまで繰り返します。
リスニングパートでハイスコアを取る人は、45分間(リスニングパートの総時間)集中力を研ぎ澄まし続けているのでしょうか? もしかしたら、そういう受験者もいるかもしれませんが、一瞬も気を抜くことなく解答し続けるのは至難の業です。
ですから、敢えて集中と脱力する時間を作り、オン・オフのスイッチを入れる必要があります。これができるのも、「選択肢を先に考える」といった自分主導のリスニングをしているからです。ただただ音を聞くことだけに追われ、解答もままならないようだと目標とするスコアを取るのは難しいでしょう。そうならない為にも、勉強の段階から創意工夫をし、試験本番では出題される問題はコントロールできずとも、自分自身のマインドはコントロールするのです。
パート2は問題を集めることから始める
続いてパート2の解き方を紹介しましょう。パート2は「応答問題」が25問で問題冊子に選択肢が書かれていないため、質問文を聞き逃したら勘に頼らなければならない地味に難易度の高いパートです。加えて、ひとつ聞き取れないと立て続けに数問聞き逃してしまうこともあるので、メンタルの切り替えが重要なパートだと思います。リスニングの初学者ならば、過半数の13問以上の正解を目指したいところ。それではパート2を得点源にするための勉強法を紹介します。
パート2を勉強する上でのキーワードは、より多くの「パターン」を知ることです。ここで、始めに取り組んで欲しいのが、パート2と同じ形式の問題をたくさん“解く”のではなく“集める”ことです。なぜ、問題を集めるのかというと、解答を読み込んでトリッキーな問題にも対処できるようになるためです。
トリッキーな問題とは、例えば、「次の会議はいつですか」という問題であれば、「サトウさんが知っています」などが解答になる問題です。こういうパターンは、場当たり的な問題演習を重ねても英語を聞くことで精一杯になってしまい、解答することがなかなか難しいと思います。それならば、パート1と同様に先に相手の手の内を見てから、あと付けで英語表現を覚えていくことで得点を効率的に上げていけます。ですので、パート2と同じ形式の問題を100問ほど準備(模試にすると4セット分)し、質問文に対して遠回りに答えているトリッキーな問題に注意しながら、日本語を読み込むのです。
なお、パート2の解答方法も基本的にはパート1と同じです。問題が読まれる際に集中力を高めて、聞き取った英文を瞬時にイメージします。そのイメージと最も合う選択肢をAから順番に照らし合わせていけばいいのです。
このようにリスニングのパート1と2は、一般的に簡単だと思われがちですが、しっかりと対策をしないとスコアを稼げません。そして、パート1と2の短文のリスニングができるからこそ、後のパート3と4にもつながってくるのです。そういった意味で、リスニングが苦手な方や英語の音に触れてこなかった人は「発音」から学ぶ必要があり、このパートの問題を使ってリスニングの基礎を築いていくと良いでしょう。
1987年生まれ、愛知県出身。留学はおろか旅行ですら海外渡航歴のない英語学習者。大学で英米文学を専攻したが、学生時代は特に英語が得意というわけではなかった。一時は英語が嫌いになるが、社会人になってから本腰を入れて英語学習を始め、6年間でTOEIC®910点や英検1級を取得。紆余曲折を経て蓄積した自身の経験に基づいた勉強法をブログやSNSにて公開中。