世界トップティーチャーが教える 子どもの未来が変わる英語の教科書

 


 

これまでの常識からシフトチェンジ!

グローバル化により、これからの時代ますます英語が必要とされてくることでしょう。英語ができる人とできない人では、行動範囲や関われる人に大きな差が出てきてしまいます。このため、成功する人に欠かせないスキルが英語力です。本書は、英語学習法の他にこれからの時代で生き抜いていける子どもの育て方を紹介しています。

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PROLOGUE

AI時代、世界で 求められている教育とは

世界トップ10入りした授業

ヤシの木の形をした巨大な人工島に建つ、アラブ首長国連邦ドバイの超高級ホテル「アトランティス・ザ・パーム」。そのホテルのスイートルームに通された僕には、屈強なSPが二人寄り添っています。映画の世界に飛び込んだかのようですが、2019年3月、僕はイギリスの国際教育機関Varkey財団が設立した「Global Teacher Prize (グローバル・ティーチャー賞、以下GTP)」の表彰式に招待されていたのです。
GTPは日本での知名度はイマイチですが、「教育界のノーベル賞」とも称される権威のある賞。2019年には世界150ヵ国からおよそ3万人の教育者がエントリー。そのなかの栄えあるトップ10に、僕は日 本の小学校教師として初めてノミネートされたのです。
僕自身、ドバイに行ってGTPのスゴさと注目度にビックリしました。その夜に開かれた授賞式はアカデミー賞並み。プレゼンターは、俳優のヒュー・ジャックマンです。客席には着飾った1万人の人々が集まり、アラブ首長国連邦の王族も臨席していました。

自己紹介が遅れました。僕の名前は正頭英和。京都の立命館小学校の英語科教師であり、6年生の担任 をしながら、6年生120名全員に英語を教えています。
僕にはICT教育部長というもう1つの肩書があります。
ICT (Information and Communication Technology)とは、情報通信技術のこと。少し前まではIT (Information Technology)といいました。ICT教育とは、インターネットを介してつながったパソコンやタブレット端末を教師と子どもが活用する教育です。ICT教育は、エデュケーション (Education、教育)とテクノロジー(Technology 、技術)を組み合わせてEdTech (エドテック)とも呼ばれます。

ICT教育の一例としてお話しすると、僕の勤務する小学校では、2006年の開校時から、全教室に電子教卓と黒板代わりの電子ホワイトボードを備えており、小学校3年生以上は全員が一人1台のパソコン (パソコンにもタブレットにもなる2in1タイプ)を持って授業を行っています。

僕がこれからの小学校教育で大切だと思っているのは、「カリキュラム・マネジメント」「プログラミング教育」「英語教育」という3本柱。「カリキュラム・マネジメント」とは、英語、国語、算数、理科、社会といった教科の壁を取り払った、横断的な視点での授業の組み立てのことです。
グローバル化する未来を生き抜く子どもたちの力を育むためには、この3本柱をバラバラに行うのではなく、一体化させるのが理想です。その一環として僕は、マイクロソフト社の『マインクラフト』というゲームソフトを活用しています。

“マイクラ”の通称で知られるこのゲームは、レゴのようにブロックを積み上げて建物を建てたり、洞窟を探検してモンスターと戦ったりするなど、決められたゴールがない自由度の高いゲーム。小中学生を中心に 世界中で大きな人気を集めています。僕の勤務する小学校では、2017年からこのマイクラを教材に用い ています。
僕は、”英語を学ぶ”のではなく、英語で何を学ぶかが大事だと考えます。それは教科横断的なカリキュラム・マネジメントにもつながりますから、マイクラを使った授業は英語のみのオールイングリッシュで行っています(僕が話すのは基本的に英語のみですが、子どもたちは日本語で会話しています)。GTPでは、この取り組みが評価されました。

マイクラでの授業を始めるにあたり、子どもから「日本に来られない外国人のために、京都を案内するようなものが作りたい」という意見が出ました。そこから子どもたちとディスカッションを重ね、僕らはマイクラで京都の観光スポットを再現するという目標を定めました。

初年度の2017年は月に数回の授業を半年間行い、4~5名のグループごとに平等院鳳凰堂や清水寺をマイクラで作成。子どもから出た「ただ建物を作るだけでは面白くない。案内ロボットも作り、海外の人を案内しよう!」というアイデアを活かし、ゲーム内のプログラミング環境で建物を観光ガイドのように案内するキャラクターも創造しました。

翌18年も同様の取り組みを行い、アメリカ・シアトルにある小学校と交流。ビデオ通話でうちの子どもたちが英語で作品のプレゼンテーションを行い、現地の子どもたちから動画で感想を送ってもらったりしました。


上・マインクラフトでお互いアドバイスし合いながら観光スポットの再現に取り組む子どもたち。下左・作品ができあがると、海外の小学生にスカイプでプレゼンテーションを行い、フィードバックをもらう。下右・子どもたちがマインクラフトで作成した平等院鳳凰堂。

この授業は、PBL (Problem Based Learning)と呼ばれる方法論に基づいています。PBLは「問題解決型学習」などと訳されており、AI時代に不可欠とされる、課題解決のための自主的で協働的なスキル がバランス良く磨かれるようにデザインされています。4~5人のグループ内ではそれぞれがデザイン、プログラミング、英語、スケジューリングなどのリーダー役となり自主的に活動するため、主体性、リーダー シップ、チームで協働する能力が磨かれます。ICT教育では、子どもが能力や知恵を集めて1つの課題を 解決するような授業がスムーズに行えるようになりますが、マイクラによる授業はその典型例なのです。

さらに子どもは同じグループ内で自分たちの知識や疑問を次から次に共有するようになり、課題解決に向けた話し合いや助け合い、合意形成の努力が生まれてきます。順序立てて物事を考えて、他のメンバーにわかりやすく説明する経験を繰り返すうちに、論理的な思考も磨かれていきます。
ゲームをすると子どもが没頭しすぎて、まわりの子どもと話さなくなるというマイナスイメージを持つ大人も多いと思いますが、マイクラを使った授業では逆に子ども同士のコミュニケーションが活発になり、教室全体が一気に明るく賑やかになります。

世界のスタンダード教育とは

2019年のGTPでは、ケニアのピーター・タビチ先生が優勝。賞金100万ドル(約1億1000万 円)を獲得しました。ちなみに優勝者以外は賞金ゼロです。
ピーター先生は、壁も天井もロクにないようなケニアの学校で数学と物理の先生をしています。そして自らの給料の8割を学校や地域に寄付し、その資金をベースに放課後のクラブ活動として理科を教えています。

クラブ活動の対象者は、地域の女の子たち。さまざまな理由で学校に来られない女の子がケニアには大勢いるそうです。そんな彼女たちに彼は無償で理科の授業をしているのです。女の子たちは国内外のサイエンスコンテストに出場して成果を発揮。そのうちの一人は、アメリカで行われる世界最大の学生科学コンテスト「インテル国際学生科学技術フェア」に出場したとか。GTPの優勝者に相応しい立派な先生だと僕も感銘を受けました。

優勝者を発表する前、ノミネートされた1名による3分間の模擬授業が行われました。それを体験した僕の率直な感想は「日本の教育はどこの国にも負けていない」というものでした。子どもたちの意見を引き出す発問力、クラスの統率力とマネジメント力などは、世界トップクラスと胸を張れる質の高さを誇っていま
そんな日本が残念ながら他の国から圧倒的に遅れを取っている分野があります。それがICT教育の分野です。

ケニアのピーター先生は、授業で普通にスマートフォンを活用しています。地域の子どもたちも、家はボ ロボロでもスマホは持っているのです。ピーター先生がトップ10ノミネートを果たした際、「おめでとう!」と我がことのように喜んで祝福してくれた子どもたちは、スマホでパシャパシャと先生の写真を撮りまくったそうです。
授賞式の最中にも他にノミネートされた先生たちから、「日本ではスマホをどのように教育に活用しているのですか?」という質問がありました。でも、僕は首を横に振って、口ごもるしかありませんでした。

世界ではICT教育がスタンダードであり、そのために個々のスマホやタブレット端末などを授業に活用 するBYOD (Bring Your Own Device)が当たり前になりつつあります。世界の人口は75億人ですが、流通しているスマホはおよそ50億台。今や家よりもスマホの方が多いそうです。しかし日本ではBYODと聞いてもピンと来ない人も多いのではないでしょうか。
僕がGTPのトップ10ノミネートが果たせたのは、ICT教育の後進国である日本で、ICT教育を推進している点が評価された結果だと考えています。
ICT教育先進国で同じような試みをしたとしても、果たしてトップ10にノミネートされたかどうかは正直わかりません。

コーラの味

僕の勤務校はマイクロソフト社の「Microsoft Showcase Schools」の認定校であり、僕はマイクロソフト認定教育イノベーターとしても活動しています(本書ではマイクロソフトの名前が再三出てきますが、僕は彼らの回し者ではありません。ただ便利だから利用させてもらっているだけです)。その活動を通して知り合った滋賀県の県立高校の堀尾美央教論に僕はGTPの存在を教えてもらい、応募をすすめられました。
堀尾先生は18年にGTPトップに選ばれています。
堀尾先生に応募をすすめられた当初、「僕なんて」と少し及び腰でした。けれど、すぐに思い直してチャレンジすると決めました。

僕が担任する6年生の教室の後ろには「コーラの味」と書かれた紙が貼ってあります。新しい6年生が入ってくる毎年4月になると、僕は子どもたちに「コーラの味、説明してみてごらん!」 と問いかけます。でも、子どもたちの必死の説明はかなりトンチンカン。大人でもコーラの味を的確に表現できる人はまずいないでしょう。
子どもたちは「じゃあ、先生は説明できるの?」と聞いてきます。そこで僕は答えます。「できるよ。みんなに飲んでもらうんだ」

世の中にはやってみないとわからないことがたくさんあります。やったらわかることを、やらないうちから頭のなかでああでもない、こうでもないとこねくり回して悩むのは時間の無駄。「悩む前にやってみよう」が僕のモットー。やってから、思う存分悩んだり、苦しんだりすればいいのです。

そうやって子どもにはいつも「新しいことにチャレンジしなさい」と言い続けてきたのに、僕自身がGTPへの応募という小さなチャレンジに躊躇していては彼らに示しがつかないと思い直しました。GTPへ の応募を子どもに事前に公言するつもりはありませんでしたが、思考は行動に現れます。僕自身がチャレン ジを恐れていては、感受性の鋭い子どもたちにはすぐにバレるでしょう。 応募すると決めてGTPを調べてみると、「教育界のノーベル賞」という表現がまさにピッタリな世界的なスケール感を持つ賞であり、そこにノミネートされるのは並大抵ではないとわかってきました。

そこで僕はロードマップを作りました。10年間かけてトップ10入りを果たすために、1年ごとの綿密な計画を立てたのです。ところがいざ応募してみると、思ってもみなかったことに、1年目でいきなりトップ10にノミネートされてしまいました。

そこからトップ10を絞り込むために、本国イギリスから3人のクルーがわざわざ京都まで飛んできました。僕の小学校での授業の様子や、一人ひとりの子どもたちとどう接しているか、心をちゃんと揃めているかなどを3日間密着して徹底調査していったのです。その結果、さらにトップ10にノミネートされたのは想定外であり、ラッキーだったとしか言いようがありません。これも僕をこれまで指導してくださったすべての先生方と、子どもたちのおかげだと深く感謝しています。
トップ10に一度ノミネートされると二度と応募できなくなります。これから1年間の目標を僕は、立命館小学校での取り組みが日本のICT教育導入のモデルケースとなり、日本という国全体のICT教育の質を高めること、と再設定しました。

GTPのドバイでの授賞式に出席してあらためて強く感じたのは、世界では教育者は尊敬される存在であり、優秀な教師はヒーロー、ヒロインとして憧れの対象であるという事実。そして世界中で求められている教師とは、教育の改革の担い手となるゲームチェンジャーであり、チェンジメーカーであるということです。
僕自身がチェンジメーカーとなり、身近な子どもたちに小さな気づきや変化を与えて、魂を揺さぶるよう な教師になりたいと思っています。さらに教え子たちがいつか世界を変えるようなチャレンジをしてくれると信じています。

本書はGTPを受賞したICT教育をベースとして、僕の専門である英語学習を核としながら、グローバ ル化社会、AI時代を生きる子どもたちに必要な教育と子育てについて、僕なりの考えと実践法をまとめたものです。子どもたちと日々向き合い、悩みを抱えている保護者に何らかのヒントが提供できたら、筆者として望外の喜びです。

2020年春
正頭英和

正頭 英和 (著)
出版社: 講談社 (2020/3/12)、出典:出版社HP

CONTENTS

PROLOGUE
AI時代、世界で求められている教育とは
世界トップ10入りした授業
世界のスタンダード教育とは
コーラの味

CHAPTER1
AI時代に英語力は必要か?
自動翻訳vs.英語学習
AI時代、必要となるのは「問題を解く力」から「問題を見つける力」へ
教育は、「知識」重視から「経験」重視へとシフト
経験を増やす行動力をブーストするのが英語です
「わかる」と「できる」は違う。必要なのは「失敗する勇気」
日本人は「英語ができる」のハードルが高すぎる
ハードルを下げると、英語を使う機会を増やせる
英語=学力ではありません
英語力が伸びるタイプ、伸びにくいタイプ
英語はゴールではなく、スタートライン

CHAPTER2
2「英語教育」のイメージをアップデートする
AI時代、学校教育は大きく変わる
2020年度から始まる小学生英語教科化
受験英語と「本物の英語力」は両立できる
「本物の英語力」とは何か?
ネイティブの先生に任せれば安心、ではない
「本物の英語力」に、英文法を学ぶことは必要か?
英文法は、”書くドリル”ではなく“話すドリル”で覚える
英語は体育と同じ。実技の一種です

CHAPTER3
家庭でできる新時代の英語学習法
学校にお任せ、では、英語力が身につかない理由
いきなりBBCやCNNを聞いても英語力は上がらない
「i+1 (アイ・プラス・ワン)」で英語力を伸ばしていく
最初に始めたいのは絵本の読み聞かせ
3つの黄金ルールで絵本の多読をより効果的に行う

正頭 英和 (著)
出版社: 講談社 (2020/3/12)、出典:出版社HP