第二言語習得から本当に正しい英語学習を考えてみる

「外国語を身につける」とはどういうこと?

多くの日本人は、中学、高校、大学としかもその間かなりの時間と労力を費やして英語を学びますが、まともに使えるようになるケースはまれです。その一方で、英語圏に留学することもなしに、ペラペラになる人もいます。

多くの日本人は小学校、中学校、高校、大学と10年程度に渡って英語教育を受けてきたと思います。ですが、ほとんどの日本人は英語を話せません。一方、海外留学などを経験している人は、流暢に話すことができます。

そもそも「外国語を身につける」ということは、どういうことなのでしょうか? 多くの人が意味がわからないうちに学校の先生に言われるがまま学習してきたでしょう。英語学習の意欲が高い人は、英会話教室やオンライン英会話などを利用することもあります。

しかし、このような学習法は、偶然的と言って良いと思います。正しい学習なのか、それとも間違っているのか、もっと良い方法はあるのか、ということについて確信を持って学習に取り組んでいる人は少ないでしょう。それでは、絶対的に効果のある学習方法というものは存在するのでしょうか? ここでは、「第二言語習得」という言葉をキーワードに、2冊の書籍を紹介します。

「外国語学習の科学ー第二言語習得論とは何か」(岩波書店)

第二言語習得の研究者たちは、外国語学習ということに自体を研究対象としてきました。心理学や言語学とは少し異なることもあり、第二言語習得は「Second Language Acquisition(SLA)」という新たな研究分野にまで発展しました。ここでは、第二言語習得のメカニズムの解明という目的を持っていますが、同時にどのような方法が効果的なのかということも中心的な課題となっています。

その第二言語習得研究について詳しく解説している書籍が、岩波書店が発行する「外国語学習の科学ー第二言語習得論とは何か」です。十人十色の学習法から統一的な法則を導き出すことも研究範囲となります。本書では、母語と第二言語の役割や関係性、年齢的な習得の限界、どのような学習者が成功しやすいのかなどが記載されています。第二言語習得の基本から応用した学習方法まで包括的に提案しているので読み応えがあります。

世の中には、毎日10分間のリスニングトレーニングだけで喋れるようになるというような売り文句があふれているため、何を信じるべきかわからなくなってしまいます。ですが、本書を読み終えるころには、外国語を学ぶということに対して基本的な考え方が身についているので、宣伝文句に惑わされることなく、必要なことを必要なだけ自分の勉強に組み込むことができます。

白井 恭弘(著)
出版社:岩波書店(2008/9/19)、出典:amazon.co.jp

「英語学習のメカニズム:第二言語習得研究にもとづく効果的な勉強法」(大修館書店)

「自分にあった学習方法があるけど、これが効果的なのか?」というところから本書は始まっています。筆者は一般化された原理と原則だけでは説明できない、多様な学習者が存在することを示唆しています。

本書の前半部分では、第二言語習得における認知プロセスと認知プロセスを活性化するインプットとアウトプットについて説明しています。後半の第5章では、第二言語習得に影響を与える学習要因の中でも、動機づけに焦点をあてています。また、時間の経過とともに低下するモチベーションを高める方法について、学習者の多様性に留意しながら検討しています。そして、第6章では学習方法(学習方略)を取り上げています。

本書では、実際のデータを示しながら効果の高い学習方法を紹介しています。モチベーションが高くても学習方法が間違っていれば、思ったような結果を出すことができないということ、状況に応じた柔軟な学習方法を使い分けることなどが重要だと述べています。最後に、主体的な方略使用を支える自律学習やメタ認知について取り上げています。効果的な英語学習を実現するためには、学習者が自らの学習プロセスに積極的・継続的に関与することが必要になりますが、プロセスにおいてメタ認知や自律学習が中心的な役割を果たすことを指摘しています。

廣森 友人(著)
出版社:大修館書店(2015/12/20)、出典:amazon.co.jp

日本語が母語というのは変えられない事実なので、第二言語をどのように学んでいくのかを考える必要があります。そう言ったときに研究により裏付けされた学習方法を取ることが望ましいと思います。普段の学習で思ったような成果を得られていない場合は、いったん第二言語習得に寄り道してみると良いかもしれません。