中学英語までの文法は必須! 取り組むべき学習法とは?【TOEIC®L&R受験前の基礎英語 Part7】

英文法を身につけなければ、短い文章でも正確な意味をつかむことができない。最低でも中学英語までの文法知識は理解する必要がある。ここでは、TOEICを受験する前に必要な基礎英語を社会人から学び始めてTOEIC910点を記録した市川基寿氏に解説してもらった。

苦手分野を潰していくことを意識しよう

前回は文法の重要性を説明しました。今回は、どのように文法を身につければ良いのかを考えていきます。正しく英文を読むために文法を学ぶという意識を忘れてはいけません。文法を勉強すると言っても、闇雲に学習しても効果は低いでしょう。そのため、最初のうちは文法を単元別に勉強することをオススメします。使用する学習教材は、自分に合ったレベルを選択することもお忘れなく。

おそらく多くの初学者は、中学生の文法から学び始めると思います。1度は学んだ内容なので、覚えるというよりは思い出すという作業になると思いますが、進めていくうちにどこかで躓くでしょう。その躓いた単元が苦手とする分野であり、自分の弱点でもあります。そのときに他の参考書を参照したり、YouTubeの講義動画を見たり、インターネットで検索したり、と様々な手段を講じて理解を深めてください。

わからない部分を放置してしまうと、苦手なままになってしまい、いざ英文を読み進めていくときに正確に読み解くことができません。ここは妥協せず、苦手分野を地道に潰していくことを意識しましょう。また、フィーリングで読めるからといって文法を軽視してしまう人がいますが、正確に読解できなければTOEICのスコアが安定して出せません。以下の2つの例文を見てください。全て中学生で習う単語と文法で構成されていますが、両方の文を正確に読み解くことができますか?

【1】I found this book easy.
【2】I found this book easily.

どちらもほとんど同じような文章で、異なるのは末尾の「easy」と「easily」だけです。しかし、この1語の違いが、両方の文章の意味を大きく変えてしまいます。【1】の「easy」の品詞は形容詞で「簡単な」という意味があります。一方、【2】の「easily」の品詞は副詞で、「簡単に」という意味になります。知っているとは思いますが、形容詞と副詞では文中での役割が異なります。【1】の文章では、形容詞が補語(C)になり、「私はこの本が簡単だと分かった」とSVOCの第5文型を取ります。

一方の【2】では、副詞の「easily」が動詞を修飾して「私はこの本を簡単に見つけた」とSVOの第3文型を取ります。このように単語の品詞だけでも意味が大きく異なります。ですので、基礎文法を疎かにしていると、簡単な文でも誤読してしまう恐れがあるのです。そのため、最低でも中学英語で習う範囲の文法は理解しておく必要があります。

精読の重要性

中学までの文法を一通り理解できたら、英文を読んでいく段階に移ります。英文を読み進める中で意識して欲しいのが、精読をするということです。精読とは、一文一文を丁寧に読み進めていくことです。文型や文中で使われている文法などを解釈していく作業です。正直なところ、どれだけ真面目に精読に取り組んだかで、リーディングスキルの伸び方が左右されます。

ですが、精読には時間がかかるので、多くの学習者は取り組みません。運よく私は大学受験の勉強過程で精読をしました。下記の画像は精読したときに作ったノートです。画像からもわかるように、文法を分野別で色別けしながら、視覚的に工夫して読解を進めていきました。こういった地道な学習が、現在の英語力の礎となったのは言うまでもありません。もっとも、限られた時間しか確保できない社会人にとって、受験生のようにじっくりと精読に取り組むのは難しいかもしれません。

単元別に色分けをして精読していく

しかし、「しっかり読む」というスタンスは忘れないで欲しいです。TOEICの長文問題は文のボリュームが多く、ほとんどの受験者はリーディングパートを解き切れません。「それなら精読ではなく、速読をするべきでは?」と思う人もいるかもしれませんが、精読ができなければ速読することはできません。いきなり目標にアジャストさせた学習方法を選択するのではなく、精読を通して英文に向き合うべきでしょう。

そして、文単位で読解できるようになったら、音読に取り掛かってもらいたいです。文法力と読解力が身についているのであれば、音読をしていても文章を正確に読めると思います。このとき、参考書に付属している音源をマネしながら音読すると、リスニング対策にもなるので一石二鳥です。

加えて、練習段階では声を出して音読すれば、スピーキング力の向上にもつながります。TOEICの試験では声を出せませんが、「subvocalization(頭の中で音読すること)」ができれば、普段通りのリズムで読解ができます。ここまでくれば、英文を読んでいるという感覚も得られ、レベルアップも実感できるはずです。これから文法を勉強していく人も、「subvocalization」を最終目標にして学習して欲しいと思います。