aとtheの底力 — 冠詞で見えるネイティブスピーカーの世界

aとtheの底力 – モノ、カタチ、リンカクの本書の3つのキーワードで

本書はネイティブスピーカーが冠詞をどのように考え、使っているかというものを念頭に、3つのキーワード、すなわち『モノ、カタチ、リンカク』を意識して単なる暗記による試験問題のために覚えるだけ以上の理解を助けます。説明は長い箇所もありますが、一度頭に入れておくと後々も役に立つ冠詞のテキストとなります。

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はじめに

本書は、aとthe——すなわち英語の冠詞——の使い方を、基本 から応用まで説明し、これら「謎の記号」と自信をもってつき合えるようになるための本です。暗記のための本ではありません。読み進んでいけば、きっとaとthe の使い方や、そこに隠された、英語を使う人たちの考え方を納得できるようになるはずです。

この本を手にとられた方は、どのような関心をもっていらっしゃるのでしょうか。おそらくは、aとtheの使い方がわからなくて、何か参考書を探している、あるいは英語力のアップを目指して本を探していらっしゃるのでしょうか。いずれにせよ、英語に対する興味と意識の高い方でしょう。
なぜ、筆者がそのように考えるのかというと、私たちの使っている言葉——日本語には冠詞がないので、私たちはふだんaやtheに関心を払わないからです。日本語に冠詞がないので、英語の冠詞を見ても、私たちの目には、ただの「小さな記号」としてしか映りません。英語がもっとできるようになりたい、と願いながらも、冠詞に興味をもつ人は少なく、使い方もいいかげんです。

でも、冠詞の使い方は、「大人の」、「きちんとした」コミュニケーションには欠かすことができません。「なんとなく」ではない 文章を話す・書くとき、きちんと文章を読むときには、絶対に必要なのです。なぜなら、(本文でくわしく説明しますが)冠詞は単語 (名詞)の前に付ける矢印(→↑↓←)みたいなもので、正確なコミュニケーションには不可欠なもの、おおげさに言えば、冠詞の中には、相手の人が世界を、ものごとを、どのようにとらえているのかが、さりげなく隠れているからです。
私たちは、英語を読むとき、書くとき、話すときに、aを使うのかtheを使うのか、それとも何も付けないのか、不安で自信がないのです。でも、中学、高校と習ったことをうまく活かせば、冠詞はわかるようになります。もっと使えるようになり、コミュニケーションに活かせるようになります。けれども、英語、特に英文法の活かし方をきちんと教わっていないので、「学校で教わる内容が悪いから、冠詞が使えないのだ」と勘違いしてしまうのです。

「学校で冠詞の使い方なんて習ったっけ?自分は習っていない」とおっしゃる方もいるかもしれません。 aとtheについてきちんと習った、と自信をもって言える高校生、大学生、社会人は多くはありません。この本は、そのような方でも安心して読んでいただけるよう、Pat 1は一番の基礎から解説してあります。Part 2では、英語の正確な理解のために、冠詞の使い方について、もう一段深く検討しています。冠詞がよくわからない、という方には、まず、Part 1 をじっくり読むことをおススメします。各章の最後には、「まとめ」がついていますから、使い方の確認をしてみて ください。

冠詞の学習には、いまの学校英語の弱点がはっきりと現れているようです。そのような状況を踏まえ、この本では、基本的な使い方から応用までを確認しながら、どうすれば次の段階、つまり、冠詞をもっと使いこなせるような段階にいけるのかを考えていくことにしましょう。

本書の3つのキーワード

本書には3つのキーワードが出てきます。本文を読みながら、折にふれて、次の説明を参照してみてください。

津守 光太 (著)
出版社: プレイス(Jbooks) (2008/12/1)、出典:出版社HP

1. モノ(物):この本のテーマである冠詞 (a/anとthe) は名詞に付けるのが原則です。名詞は現実の世界に(あるいは私たちの想像の中に)存在している物(モノ)を指し示す言葉です。私たちは本 (book)、水(water)などさまざまなモノに囲まれて暮らしています。一方、愛(love) や幸せ (happiness) のような目に見えない(想像の中にある)モノもあり、共に私たちの周りにあって、私たちの生活を構成しています。
2. カタチ(形):名詞には、数えられる場合(可算名詞) と数えられない場合 (不可算名詞)がありますが、これはモノの「形 (カタチ)」と関係があります。
カタチあるモノは数えられますが、water や loveのようなカタチのないモノは数えることができません。
3. リンカク(輪郭):「カタチ」のある、1つの「モノ」は「輪郭(リンカク)」を描きだします。たとえば、自動車に後ろから光を当てると、全体は黒く見え、リンカクだけがくっきりと浮かび上がります。ひと筆書きで描かれるようなリンカクです。このリンカクがa/anを付けるときの基準になります。a carという表現からは自動車のリンカクが思い浮かびます。しかし、waterやloveにはカタチがないので、リンカクを思い浮かべることはできません。
一方、カタチあるモノでも、いくつかを同時に思い浮かべる場合(複数の場合)は、ひと筆書きでなぞれるような「リンカク」は現れてきません。

津守 光太 (著)
出版社: プレイス(Jbooks) (2008/12/1)、出典:出版社HP

全目次 – aとtheの底力 — 冠詞で見えるネイティブスピーカーの世界

はしがき 3
本書の3つのキーワード5

Part 1 こうすれば、わかる・使える「学校で習うaとthe」……………… 012

第1章 ホントは知らない?! 冠詞の基本…………..014
(1) 冠詞の数はいくつ?…..014
(2) 学校で最初に習う冠詞のルール….016
(3) aとtheの使い分け 一番の基本…………….. 018
(4) the は「話し手同士の了解」…………… 019
(5)aの基本的イメージとは? ……………021
(6) ゼロ冠詞 (無冠詞)のメッセージとは? ……………023
(7) 固有名詞には、なぜaやthe を付けないのか………………024
(8) 複数形には、なぜaを付けないのか…………….025
(9) 不可算名詞には、なぜaを付けないのか……………..026

第2章 theを使う表現………………030
(1) the の使い方のまとめ…..031
(2)1つしかないものにはtheを付ける……………032
(3) 「左右」、「方角」や「朝・昼・晩」……………035
(4) take ~ by the armは、なぜtheを使うのか?…………..037
(5) 川の名前には theを付ける………………039
(6) the United States / the Alps…………….041
(7) 複数形の固有名詞に the を付ける……………042
(8)「過去・現在・未来」そして時代区分……………044
(9) 歴史上の出来事……..045
(10) 単位のthe——theの社会性……….046
(11) 総称表現<1>:the………..049
(12) bridge が名前に含まれるとthe が付く……..050

第3章 aを使う表現……….053
(1) 「狭義のa」から「広義のa」へ…053
(2) aの使い方のまとめ………..055
(3) 「1つだけのモノ」が「いくつもあるうちの1つ」になる…058
(4) 拡大する「1つ」のa………060
(5) 「数えられないモノ」にaを付ける………062
(6) ニワトリは数えられるか?……….064
(7) デモクラシーにaを付けると?!……..066
(8) andでつながれたモノとa………067
(9) fewとa few………..067
(10) 種類を表すときにはaを付ける…………068

第4章 ゼロ冠詞……..071
(1) ゼロ冠詞を使う場面は?——ゼロ冠詞の基本的な考え方….071
(2) aを付けたり付けなかったりする単語…..072
(3) moneyはなぜ数えられないか……073
(4) 形容詞や動詞にはaを付けない…..074
(5) 大学入試問題でチェック….076
(6) 動詞にはaもtheも付けない:school / bed / breakfast……076
(7) 食事名は無冠詞………..078
(8) by car は動詞の一部…..078
(9) captainが無冠詞になるとき….080
(10)総称表現 <2>:the、a、無冠詞複数形……..081

Part 2 アメリカ人は裸のbookの夢を見るか?……….084

第5章 名詞と決定詞…..086
(1)決定詞——名詞の方向性を示す単語…..086
(2) 決定詞って、どの単語?…..088
(3) all / every / each ……..091
(4) someは「ある(在る)もの」……..092
(5) anyは「空席」を示す….094
(6) 疑問文に使うsomeと肯定文で使うanyの理由……….097
(7) a my friend とa friend of mine………098
(8) ハイコンテクストな社会とローコンテクストな社会……….100
(9) 決定詞には3種類がある………..103

第6章 冠詞を決めるもの(その1): 名詞……..106
(1) 「冠詞」と「名詞」….106
(2) 「文法」と「言葉を使うこと」……..109
(3) familyのイメージと使い方……….110
(4)「職業」は人間か、モノか………..112
(5) スキーとsking ……….115
(6) luckについて可算か不可算か…..116
(7) 言葉の感覚を身につけるために………..119
(8) 「可算(数えられる)名詞」と「不可算(数えられない)名詞」…..120
(9) 「可算・不可算」のモノの見方…..127
(10) 「house = 家」なのか?! 言葉の「身体性」……..129
(11) 「身体性」(身近さ)と冠詞……….132
(12) 「文法」の視点と「地図」の視点…..134

第7章 冠詞がわかれば、もっと英語がわかる……..136
(1) next Sunday the next Sunday….136
(2) as a result 「その結果として」……136
(3) 形容詞を付けるとaを付けるのはなぜか………139
(4) beginning & end……140
(5) hair…..142
(6) possibility……..142
(7) knowledge & education ………..143
(8) in a hurry とin haste——aの有無………..144

第8章 冠詞を決めるもの(その2):コンテクスト………..147
(1) コンテクスト(文脈)とは?…………..147
(2)日本語の「空気」と英語の「コンテクスト」……147
(3) コンテクストとthe………..151
(4) 前に出てきたものを指すthe………152
(5) 後ろから限定される the….155
(6) 後ろから限定——「同格のof / that」…….156
(7) 状況によって限定される the……….158
(8) the = this / that….159
(9) 動詞と冠詞の関係………..160
(10) have a coldとcatch cold …….162
(11) ニワトリとコンテクスト性……..165
(12) I like a girl. = I like girls. …..167
(13)同格と冠詞………168

第9章 theの不思議 (区別する力)…………173
(1) aとtheの違い…………174
(2) 「リンカク」と「区別」——総称表現〈3〉…………176
(3) 「区別」とは何かtheはエッセンスを取り出す………..178
(4) 「発明品のthe」とは何か…………181
(5) 必要は発明の母 (the mother)………..184
(6) playと「楽器のthe」………..185

第10章 病気と冠詞…..189
(1) 病気と病名…………190
(2) 病気について考えてみよう………..191
(3) 症状とa….193
(4) 病気は基本的に無冠詞…………196
(5) 病名にhe を付ける場合………197

終 章 病気から希望へ………199

あとがき204
参考文献207
※各章の最後には「まとめ」のページがあります。

津守 光太 (著)
出版社: プレイス(Jbooks) (2008/12/1)、出典:出版社HP